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92話 ドレスアップ

書籍版、発売中です。

こちらともども、よろしくお願いします。

 ドーム空間とメインのダンジョンとを結ぶ通路を細く長く、迷路とトラップを多めにしたため、常若の国(ティル・ナ・ノーグ)の湖への移動がちょっと面倒になってしまった。

 眷属たちの移動はダンジョンレベルが上がることでダンジョンに設置可能となった転送魔法陣(ポータル)を使うことでスムーズに行えるようになっているので問題はないのだが。

 第1層も拡張が進んでいる。第1層最奥の泉は橋に擬態したゴーレムを配置しているので、ゴーレムや飛べない妖精たちも渡れるように対応済みだ。

 橋ゴーレムは橋脚が途中で曲がるようになっているので、侵入者が来た時は通路である橋面が泉に沈むようにして使用できなくする予定だ。


 出口までが遠くなったので狩りや採集等、ダンジョンの外に出る用事がある妖精たちはダンプゴーレム二式によって移動していることが多い。

 ダンプゴーレム二式はサスペンションを追加したので乗り心地がかなり改善されている。

 バスゴーレムも造るかという考えもあったが獲物を運ぶ都合上、今の荷台の方がいいらしい。


 ……それだけじゃなくて、前世のとあるゲームをやらせたのが悪かったのか、コルノが過剰に装飾(ドレスアップ)するようになってしまいデコトラ状態となった個体も多い。なぜか妖精たちにも受けがよくて、いつのまにか荷台に絵が追加されてたりする。


「電飾は無理だと思ってたけど光るキノコで再現するとは」


「ウィルオウィスプにくっついてもらうことも試したんだけど、上手くいかなくて。スケさんが協力してくれてよかったよ」


 ウィルオウィスプは最近入ってきた妖精だ。ヒトダマっぽい姿だけどこの世界ではアンデッドではなく妖精枠らしい。


「これだと目立って発見されやすくなる気もするけど、このダンジョンにくるやつらって元々夜目が利くんだよなあ」


 小動物だけじゃなくて妖精たちも夜目が利く者が多い。日光に弱いノームだけじゃなくて夜行性みたいな連中も多く、夜通し騒いでいたりする。ウィルオウィスプもその類だ。

 完全にうちのダンジョンに移住して避難民ではなく住民となった妖精の数も多くなり、村どころか町が作れそうな数になってきている。

 それが毎晩のように歌って踊って騒ぐのだ。バブル期のディスコを思い出すぜ。おっさんは行ったことはないけどさ。



 ◇



 ドーム空間の避難民キャンプに移動すると見知った顔が待っていた。


「リヴァイアサン様、フーマ様、ごきげんようですわ」


「モルガン、あなた最近毎日来ているわね」


「当然ですわ! 敬愛するリヴァイアサン様がいるのですもの」


 待ち構えていたのはピンクブロンド縦ロールの少女だ。

 彼女はモルガン。初めて会った時はストレートへアだったのに、次にこのダンジョンに現れた時はもうこの髪型になっていた。

 どうやらレヴィアをリスペクトしているようで一度、「レヴィアと同じツインドリルにはしないのか?」と聞いたことがあるのだが、返ってきた答えは「そんな畏れ多い」だった。

 縦ロール(くるくる)の大きさではなく、その数でレヴィアへの敬愛を示しているそうだ。俺にはよくわからないが日に日に巻きの数が増えているらしい。

 その内、ドレッドヘアを通り越して大仏の螺髪(らほつ)にならないか心配である。


 モルガンが縦ロールの貴族令嬢っぽい髪型にイメチェンしてやってきたのは一度目の一週間後だったがその後どんどんと間隔が短くなり、今では毎日のように顔を出すようになっている。


「あなた、妖精神であるフーマの信者になったのよね?」


「はい。妖精教の主神はもうフーマ様になっていますわ。ワタクシももちろんフーマ様の信者でございますわ。けれど、それとは別にリヴァイアサン様を尊敬し、憧れるこの気持ちもあるのですわ。主神の奥様の信者であることになんの問題もありませんわ」


 モルガンはレヴィアの大信者(ファン)だもんなあ。ダンジョンへの出入りを禁止したらストーカーになりそうなぐらいの。

 彼女がダンジョン(うち)にくることに別に文句はない。第2層より先に入れたこともないので、防衛上の問題もないだろう。

 それにモルガンがくるだけでかなりのDPが入ったりする。SSR種族の高レベルだもんなあ。時々、俺たちにお目通しをと他のシスターを連れてくるのでさらにDPがプラスされてオイシイし。

 家畜もいくらか運んでくれた。おかげで第2層では牧場も建設中だったりする。


「いい加減、私をリヴァイアサンと呼ぶのはよしなさい」


「で、では……お姉様」


「……は?」


「ワタクシ、いつも他のシスターたちからそう呼ばれておりまして……時にはワタクシも呼ばれるのではなく、呼ぶ方になってみたいと憧れておりましたのですわ」


 ……えーと、見た目的にはモルガンの方がお姉様っぽいのだが。口に出したらレヴィアが気にするだろうから言えない。


「モルガンにはディアナ様が自分をお姉様と呼んでくれといつも言ってたのに……」


 呆れた顔のリニア。

 ディアナってそんなこと言ってたのか。アルテミスは処女神だし、もしかして()()()だったりするなんてことがあるのだろうか?


 リニアはノームによって作られた黒い鎧を装備している。もちろん素材はアリだ。見た目は完全に黒騎士である。戦闘時にはこれにクマさんフードが追加されるのでクマ騎士になるけどね。

 彼女には常若の国(ティル・ナ・ノーグ)の泉の監視のついでに、眷属となったフェアリーたち三人を鍛えてもらっていた。

 避難民たちを脅すわけではないが、馬鹿なことは考えるなよというアピールではあったりする。

 ま、大量のゴーレムたちも見回っているのでそんな気も起きないだろうけどさ。


「調子はどうだ?」


「指導なんて初めてだから上手くはないと思うけど、なんとか使いものになるようにしてみせるよ」


 そう言うリニアの背後には疲れ果てて倒れているショタフェアリーたち。彼ら用にも鎧を作ってもらってある。「カッコイイ!」と喜んでいたのだが、重くて飛べないとわかり、装着を諦めた。

 筋力なら鍛え方はわかるんだけど、フェアリーの飛行能力の鍛錬方法はわからない。わかれば戦闘中にそれをさせるんだけどなあ。

 今度戦闘になったら腕立てと背筋させるかな?


「情けないやつらなのだ」


 同じくリニアの訓練を受けていたテリー。彼は過酷な環境に生きていたせいか鎧の重さも問題なかった。もっとも、飛べないので関係ないと言えばそれまでなのだが。


「テリー、すごいの」


「こんなの余裕なのだ」


 ハルコちゃんに褒められてドヤ顔のテリー。だが頬は真っ赤だ。どうやらテリーはハルコちゃんに気があるようで彼女の前だとやたらに張り切る。そしてそれはテリーだけではないようだ。

 美少女が多い妖精の中でも上位にくるハルコちゃん。性格もいいのでノーム以外の妖精たちにも人気が高い。


「ぼ、僕たちだって」


「これぐらい余裕さ」


「次の指示をお願いします!」


 ふらふらしながらも起き上がってスマイルを見せるショタフェアリーたち。三人とも顔はいいからジュニアアイドルの訓練風景に見えないこともない。

 こいつらって戦わせるよりプロモーションビデオかなんか作って売った方がダンジョンのためになるんじゃなかろうか?


「ったく。次はランニングだ。湖の周りを走るぞ! ごめんフーマ、ちょっと行ってくる」


「うん。がんばって」


「おう! 行くぞ、ガキども!」


 騎士というか鬼教官モードとなったリニアとともに少年たちは走り出した。この湖の外周ってけっこう大きいんだけど……。


「ハルコ、ダンプゴーレムでついて行って応援してあげなさい」


「わかっただ」


 微笑ながらダンプゴーレムを見送るレヴィア。いやあの、そんなことされたショタたち無理するしかないんですけど。


「青春ね」


 おっさんも嫁の前でがんばる姿を見せないといけなさそうだ。



11時11分に投稿し損ねました

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