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「くたばれ、クソ神様」  作者: 無脊椎動物
はじまり、はじまり
9/117

8、ロリ+狂気=テンプレ

「ん?」


 漫画を読み始めてふと俺は違和感を感じた。何というか自分の中に何か異なるものが入ったような。


「おいクソ神」


「どうしたんだい?」


「おまえ何か変な事したか?」


「んー? 特に何もしてないよ、どうして?」


「いや、何か違和感があってな」


「ぼくは知らないよ。気のせいじゃない」


「わたしもなにもしらないよ」


 そうか。気のせ……ってちょっと待て。


「お前誰だよ」


 俺はいつの間にかいた少女(幼女?)に向かって言った。年は10歳前後だろうか黒髪黒目のセミロングで黒いワンピースの上に白いエプロンの様なものを着ていた。


「わたし? わたしはトト。トト・フィンスターニスだよ」


「いや、そういう意味じゃなくて」


 そう聞くと少女は不思議そうな顔をした。


「なんでここにいるんだ? ここは影の中だから入ってこれないはずだろ」


「なーんだ、そんなこと。わたしはねー、闇の王だよ」


 ……は? ちょっと待て。この子が闇の王? まだ子供じゃないか。でも、現にこの空間にいるんだから本当なのか?


「おにいちゃんの名前は?」


「あ、あぁ、俺の名前はリヒトだ」


「へー! やっぱりおにいちゃんが光の王なんだ! ねえねえ! リヒトおにいちゃんってよんでいい?」


「別にかまわないが……」


「ほんとう? ありがとう! リヒトおにいちゃん!」


 そう言ってトトは俺に抱きついてきた……嬉しそうに笑う彼女を見て本当に闇の王なのか信じられなくなった。


「ねぇ、リヒトおにいちゃん。ひとつおねがいがあるんだけどいーい?」


「何だ? ある程度の事なら聞いてやるが」


「ありがとう! じゃあねー……わたしところしあってよ!」


 俺は本能的に横に転がっていた。次の瞬間、さっきまで俺がいた場所に巨大な黒い斧が振り下ろされた。


「むー、よけないでよリヒトおにいちゃん」


「まて、トト! 何で俺とお前が殺しあわなけりゃならない!」


「なんで? なんでってへんなこときくねリヒトおにいちゃん。たのしいからでしょ?」


 そう言うと音もなく壁が広がっていき、部屋は何十倍もの広さになった。


「アラタ君、ここは戦うしかないよ」


 おい、クソ神! トトと戦う以外に選択肢は無いのか!


「無理だよ、トトちゃんは戦うのが大好きだから話し合いたいなら戦闘の後じゃないと」


 くそっ! どうにかして戦うのを避けれないのか!


「ほらアラタ君、そんな事を考えている暇は無いよ」


「いっくよ~、リヒトおにいちゃん」


 トトの背後に大量の黒い槍の様なものが現れ、それが一斉に飛んできた……魔法に詳しくない俺でもわかる、あの槍一つ一つが俺がスライムを倒した時に放ったレーザーよりも強力だと。


「くっ!」


 今度も俺は横に転がり槍の雨から逃れた。槍は音も立てずに次々と床に穴を空けていく。


「あはははは! じゃあ、これをよけてみて!」


 そう言うと今度は俺に向かって床から大量のとげが突き出てきた……まずい! 全方位の地面からなら逃げ場が無い!


「アラタ君! 魔法を使って!」


 ……そうか!


「うおおおおぉぉぉ!」


 俺はとっさに光を出し上に飛んだ、着地の時おもいっきり顔面からいったが無事に避ける事が出来た。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「すごいすごい! リヒトおにいちゃん! こんなにたのしいのはひさしぶり!」


「くそっ! やるしかないか!」


「あ! おにいちゃんやっとやるきになってくれたんだ! それじゃあはやくころしあおう!」


 とはいってもどうする、同じ王と言っても明らかに俺より格上だ。正面から行ってもまず勝てない! どうする? このまま避け続けてもじり貧だ。


「アラタ君、ここでぼくからのアドバイス」


 なんだ、今忙しい。


「トトちゃんは殺し合いが大好きなだけだよ」


 そんなの見ればわか……いや、待てよ? ……なぁトトは殺し合いが好きなんだよな?


「そうだよ」


 楽しいからか?


「ザッツライト!」


 ……だが、この方法では万が一失敗したら100パーセントやられる。しかし他に特に良い案が思いつくわけでもない。


「おにいちゃんもういい? じゃあつぎのいっくよー!」


 そう言うとトトは手に巨大な影の剣を創りだした。


「そーれー!」


 かわいらしい掛け声とは裏腹に凄まじい速度で剣が振られた、俺の首に向かう軌道で。しかしこれくらいでビビってたら今からやる事は到底無理だ……くそっ、体が震えてやがる。だけど今から避けようとしても絶対に間に合わない。ならもうやるしかない!

 俺は意を決して……何もしなかった。


「!?」


 驚いたトトが俺の首の皮を少し切った所で剣を止めた。


「……なんのつもりなのリヒトおにいちゃん」


 さっきまでの楽しそうなニコニコ顔とは程遠いムスッとした顔でトトが訪ねてきた……おっし! 狙い通り!


「待てトト、俺は今お前と殺しあうつもりはない」


 俺は決め顔で言っているが内心はバックバクだ。

 やはりトトは決して殺す事そのものが大好きってわけではない。あくまで命をかけた殺し合いが好きなんだ。ならば殺し合いに発展させなければ良い……とは言っても仮にトトが殺す事も大好きってなら今頃俺の首と胴体はサヨナラしていた。自分から見ても凄まじく危ない賭けだったな。


「えーなんでー?」


 トトは口を尖らせながら文句を言ってきた……少しかわいいと思ってしまった。


「何ででもだ」


「やだ」


 トトは明らかに納得していなかった。何か良い理由は無いか……そうだ。


「いや、俺は表に出てきてまだ少ししかたっていないから弱いからな。だからもうちょっと戦い方や魔法についても知りたいんだ」


「んー、あ、そうか! そうだったね!」


 意外と役に立つ引きこもり設定。


「じゃあやくそくして? リヒトおにいちゃんがつよくなったらまたころしあってくれるって」


 ……やっぱりこんな風な流れになるか。まあ、しょうがないか。


「ああ、わかった」


「ほんと! じゃあゆびだして!」


 指切りげんまんか、こっちにもあるんだな。トトは俺の小指に自信の小指を絡めて歌いだした。


「ゆーびきーりげーんまーーんうっそつーいたらあしのさきからすこしずつすりつぶしてく! ゆーびきった!」


 こっわ! なにその指切りげんまん! 超怖いんだけど。


「それじゃあばいばーいリヒトおにいちゃん!」


 次の瞬間にはトトはいなくなっていた……疲れたな。


「アラタ君おつかれー」


 ……はぁ。


「何でため息つくの!? 今回はちゃんと助けたじゃん!」


 それを毎回やって欲しいな。


「え? それじゃおもしろくな」


 で、何の用だ?


「ああ、そうそうカコちゃんが呼んだ時わかりやすいようにアラームセットしておいたから」


 ……それだけか?


「それだけだよ、じゃあねー」


 また何か仕掛けやがったな、まあ良い。とりあえず今は寝よう。とにかく疲れた……はぁ~、次トトに会う時にはもっと強くならないとな。とりあえず俺はベッドに潜り込んだ。

 数時間後ばかみたいにでかいアラームの音と部屋にいつの間にか現れた大量のウグイスの群れに驚かされた……やっぱりか、覚えとけよ。

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