73、ボロは出るもの
やはり最善策は閃光で足や腕を狙い動けなくすることだろうか。
もしかしたら腕や足が吹っ飛ぶかもしれないがその時は治療すればいいだろう。
「作戦は纏まりましたか?」
「まあな、けどよかったのか? こっちの考えが纏まるまでゆっくり待って」
「ええ、私は負けません。それにもし私が敗れても主があなたを食らいつくすでしょう」
主? もしかしてあの黒い触手の事だろうか?
それが本当だとしたのならまたあれが出てくる前に早く決着をつけたほうが良いな。
「それと一つ助言をしておきましょう、あなたは私を殺さずに無力化したいようですが、おすすめはしません」
「……」
「相手との力量の差も測れないよう者がそんなことを考えれのは愚かな事です、全力で殺しに来てください」
「……言ってくれるな。まるで俺があんたには勝てない、みたいな言い方じゃないか」
「いえ、そうではなくあなたでは私に手も足も出せない、と言う意味です」
「じゃあ、そうかどうか試してみろ!」
俺はシスターに向かって全速力で駆けだす。
だが、シスターはそんな俺に対して変わらず笑みを向けてくる。
「あなたは確かに速い」
俺の剣による切り上げを余裕を持って躱す。
「けどただそれだけです」
返しに振り下ろした剣は持ち手に放たれた掌底により反らされ、床にぶつかり火花を上げる。
「殺気が駄々洩れなうえ、攻撃の際に狙っているところををまっすぐ見てフェイントすらしない」
床に当たった際の衝撃は剣を伝い、その振動による痺れにより俺は剣を手放してしまう。
「それどころか構えはおざなり、まるで子供の冒険者ごっこの様です」
続く二撃目の掌底はもろに俺の胸へと吸い込まれた。
「がっ!?」
その細い腕からは信じられないような威力で放たれたそれは、俺の体をミシミシと鳴らし胸を抉っているかのようだ。
「今まではおおかたその異常な膂力に頼ったものだったのでしょう」
その威力に耐えられなかった俺は口から血の帯を描きながらまるで漫画のように吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
「げほっ」
……なんつー威力だよ。
なんとか意識は保ったが、今ので肋骨の何本かと肺の一つが潰れたぞ。
こんなの人間が出していいようなもんじゃねぇぞ。
「ぐっ」
俺は肺と肋骨を再生させながら軋む体を無理やり立ち上がらせる。
地味に手の骨にひびが入ってるな。
「あ、良い所をもう一つ見つけました」
「……何だ」
「今のをまともに食らって立ち上れるほど体が丈夫な事です」
「そいつはどーも」
何とか笑顔を返しながら返答をするが正直立っているだけでもやっとの状態だ。
とりあえず今は再生するまでの時間を稼がなくては。
「それよりもお前は何者だ?」
「ただの敬遠な信徒ですよ、昔はそこそこの冒険者だったのですが」
「あれは人間の出せる威力じゃないだろ」
「ふふふ、秘密です」
まあ、はぐらかされるだろうな。
だが今のやり取りで体の再生は終わった。
「休憩は終わりましたか?」
……全部お見通しと言うわけか、完全に舐められているな。
だがこちらに対し油断している今がチャンスだ。
おそらく向こうが本気を出せばあっという間にこの体は殺され、本体が出てきてしまうだろう。
「そうだ、一つチャンスをあげましょう」
「チャンス?」
「はい、私の部下になりませんか?」
「……何が狙いだ?」
「私から見てもあなたは才能が有る、いずれ冒険者として有名になれるでしょう」
「……」
「私としても手駒は優秀で数が多い方が好ましいですし。どうですか? 悪い話ではないでしょう?」
「……カコはどうする?」
「彼女には死んでもらいます、惜しいですがあなたと違って頭が切れるようですし生きていると邪魔になりそうなので」
「なら交渉は決裂だ」
「そうですか、お互いに無駄な時間を過ごしましたね」
いや? そうとも言えないぞ?
あんたが長々と話してくれたおかげでこっちも一つ策を考えた。
もしこれが通用しなかったら本格的に本体での戦闘を考慮しないとな。




