?、Ohne Titel
何もない空間。
そこには一人の少年が居た。
「アっラータくっんはっどーこいるかなー?」
少年はなにもない空間で奇妙な歌を歌いながら手をかざす。
するとまるでテレビの画面のようにここではない風景が少年の目の前に映し出された。
「ほっほーう、今は洞窟に居るんだね! さっすがアラタ君! そんなばれやすい所に自分から行くなんて!」
映し出された一人の青年を見ながら、何がおかしいのかゲラゲラと笑う。
だがその笑い声は青年と一緒に映し出された怪物によって不意に止まった。
いや、笑い声だけではない、少年の顔からは一切の表情が消え、さっきまで大声を上げて笑っていたのが嘘の様だ。
「・・・・・・」
そうしている間にも青年は次々とその怪物を切り伏せていく。
怪物が全滅するのは時間の問題だろう。
「・・・・・・何であれがここにいるんだぼくの完全な世界には不必要だじゃまなんだよああコロしたいあいつらをこの手でバラバラにしたいそのみるにたえないからだをぐちゃぐちゃにしてやりたいああいらないいらないいらないふひつようだふひつようだふひつようだふひつようだぼくはかんぺきかいああかんぺきさなぜここにいるふざけるなぼくがこわしたはずだこわしてないだろいやこわしたさぼくがこのてでくびをもぎからだをかきまぜてぼくのてのなかできみがまざりあってにせものがきみがにせものがまざりあって」
全ての怪物が倒されると同時に少年はまるで壊れたレコードのように絶え間なくその口から言葉を紡ぎ続ける。
その顔は先程までの年相応な笑顔ではなく、嘲笑、悲しみ、怒り、狂気、それらが混ざり合ったような歪な笑みを浮かべていた。
「ラウム!」
「お呼びでしょうか」
最早意味もなさない音を紡いでいた口から突然人の名前のような言葉が飛び出す。
それに応じたのは一人の青年だった。
その青年は黒い髪に左右で色の違う瞳、そしてまるで完成された彫刻のような整った顔をしていた。
服装は世間一般で言う執事服に身を包み、雰囲気、見た目、佇まい、それらどれをとっても「完璧な従者」と言う言葉しか思い浮かばなかった。
「ゴミが居る、掃除してきて」
「かしこまりました」
次の瞬間にはラウムと呼ばれた執事は一瞬で居なくなっていた。
まるで幻覚でも見ていたかのよう、そう錯覚させられるほどに。
「えーごほん」
少年は咳払いをして青年へと視線を戻す。
その顔にはあの歪な、狂った笑みはもう無く、元の年相応の無邪気な笑みが張り付けられていた。
「さぁ! 不純物が混ざってしまいましたが気を取り直してやっていきましょう!」
さながらミュージカルの主役のような大仰な手ぶりでその場で一回転する。
「果たしてアラタ君は無事、囚われのお姫様を助けることができるのか!」
少年の手ぶりに合わせて何処からともなくスポットライトが当てられる。
「はたまた悪が勝ち、この美しき世界は闇の手に落ちてしまうのか!」
少年のダンスに合わせて何処からともなく狂った太鼓の音と掻き毟るかのようなヴァイオリンの音色が響き渡る。
「大穴でアラタ君が悪の帝王になってしまうなんてことも、だがそれも一興!」
不意にすべての音が消える。
そこに広がるのは先程までの狂音がまるで嘘の様な静寂。
「全ては神のみぞ知る! まあ、神様は僕なんだけどね!」
少年は何がおかしいのか狂ったように笑い続ける。
その笑い声は人によっては楽しくて仕方ないというようにも、また別のものにはこの世界すべてをあざ笑っているかのような嘲笑にも聞こえた。
ただすべての者が共通して思う事が有るだろう。
少年が「狂っている」という事だ。




