6、女の子の部屋に入るのって緊張するよね
予定より長くなってしまった・・・。
やあ、俺の名前は伊東アラタ改めリヒトだ。
現在俺はさっき助けた子(カコと言うらしい)のタンスに隠れているなぜそうなったかはこれから話していこう。
「誰に向けて言ってんの?」
「画面の向こうの皆さまだ」
「君もメタいね」
そう、あれは俺が共歩者になってくれと頼んだ後の事だ・・・。
「さあ! いったいこれからどんな童貞君の秘密が明かされるのか! 詳しくはCMの後で!」
CMなんてねえよ。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
~一日前~
「きょ、共歩者?」
おい、これ引かれてねーか。ふざけんなよてめえ。
「そりゃあ、初対面の相手にいきなり共歩者になってくれなんて普通言わないよね~。なんせ共歩者っていうのはずっとパートナーとして寄り添うものだからね。」
やっちまったぁぁぁぁ! くそっ、深読みしすぎたか! これならおとなしく自分に素直になっとくべきだった。おい、どうすんだよこの空気! てめえが責任取れよ!
「当店はそのような要件を受け付けておりません☆(ゝω・)v」
ふざけんなよ!
「あ、あの……」
俺がゴミと話していると女の子が声をかけてきた。
「あ、ああ、すまない。さっきのは忘れてくれ」
「良いですよ」
「へ?」
「共歩者になっても良いですよ」
…………。
「………」
お、おい。俺の聞き間違いか? 共歩者になっても良いって聞こえたんだが。
「ほ、ほらぼくの言った通りにすれば良かったでしょ……ちっ」
露骨に残念がるんじゃねえよ。
「あ、あの」
「ああ、すまん。少し考え事をしていた」
……というかお前の声って周りの奴には聞こえないのか。
「うん、そうだよ。ぼくの声はあなただけのものだよ、きゃっ恥ずかしい!」
きゃっじゃねえよきもいんだよ。っと、それより。
「良いのか? 普通は初対面の相手には共歩者になってくれなんて言わないんだろ?」
「それよりもリヒトは光の王なんでしょ? その辺の事はそっちが詳しいんじゃないの?」
おっとまずい、えーっと確か光の王は引きこもり設定だったな。
「い、いや俺はあんまり人と関わらないからあんまり詳しくないんだ」
「あっ、そうだったね。ごめんなさい」
なんか痛い、心が痛い。
「でもほんとに良いのか?」
「うん。そもそも王から共歩者に選ばれるのはとても名誉の事なの。だから基本的にはこちら側から王に共歩者にしてくれって頼むものなの」
「へぇー、そんなものなのか」
「それよりも契約の方法わかるの?あんまり詳しくないんでしょ」
おいくそ神出番だぞ、どうすんだよ。
「かみさまの、たのしい」
それはもう良い。
「…………」
ああもう、俺が悪かったよ! 早く教えてくれ。
「契約するって念じるだけで良いよ」
へぇ、そんなに簡単なものなのか。
「童貞君にわかりやすくしたんだよ」
そんなわけで俺はこの子と契約した。
「あ、あの、これからよろしくお願いします」
「お、おうよろしくえーっと……」
「自己紹介が忘れてたね。わたしはカコって言うの」
「カコか、これからよろしくな。そういえばなんでカコ達はこんな所にいたんだ?」
「……あ、いけない!先生に薬草の採取を頼まれてたんだ」
「薬草ってこれか?」
俺は奇跡的に無事だった草の入った籠を差し出した。
「ありがとう」
「というか先生ってことは二人は学生かなんかなのか? それだったら門限とかあるんじゃないか」
「あ、いけない! 門限まで時間が無い! それにカミラの服が……」
言うとおりにカミラの服には大きな穴が開いていた。
「魔物に襲われたって事を言えば良いんじゃないか?」
その時遠くから人の集団の声がしてきた。
「なんだ?」
「さっきのゴーレムは本来こんな所に出るような魔物じゃないの。だからゴーレムの魔力を関知した冒険者ギルドから派遣された緊急討伐隊だと思う」
あれってそんなに強い奴だったのか。
「おーいDT君聞こえる?」
なんだGOMI。
「ミッション、しばらくは人に見つからない事」
な、なんだよ急に。
「いいから。絶対だよ」
お、おう。あいつは何時になく真剣な声で言ってきた。なんだ? また何かの罠か? まあ、あんまり目立つのは避けたいから言われなくてもできるだけ気づかれないようにするつもりだったが。
「なぁ、カコ。俺の事はできるだけ周りに知られないようにしてくれないか」
「なんで? ……あ、うん。わかった」
そう言うとカコはとてもやさしい目でこちらを見てきた。なんか不本意な勘違いをされてるなこれ。
「いやそうじゃな「おーい!」っ!」
俺はとっさに姿を見えなくした(なぜか自然とできた)。声がした方向を見ると武装した男女が入り混じった集団がいた。おそらく討伐隊だろう。
「おい!嬢ちゃん大丈夫か?この辺でゴーレムが出たと聞いたんだが……って、そっちの嬢ちゃんはけがしているのか?」
「いえ……私達がゴーレムに襲われたときに突然人がやってきて助けてくれたんです。その後にカミラの治療もしていただきました」
「おい、どうなんだクーア?」
クーアと呼ばれた女性がカミラに近寄りけがのあった個所を押さえた。
「……ええ、本当よ。すごい、こんなに高度な回復魔法を使える人なんて数えるほどしかいないわ」
「……なぁ、嬢ちゃん達を助けてくれた奴って言うのは一体どんな奴だったんだ?」
「えっと……顔を隠していて良く分からなかったんです。カミラを治療してくれたとたん直ぐにどこかに行ってしまったので」
「……何者なんだそいつは。ゴーレムを一人で討伐できるならB以上は確定。……いや、回復魔法の事をふまえるとAか」
一人何かブツブツ呟いているおっさんにクーアさんが声をかけた。
「ねぇ、それよりも良いの? この子達どう見ても学生でしょ。できるだけ早く返した方が良いんじゃないの?」
「おっと、そうだな。今は見知らぬヒーローの詮索よりも嬢ちゃん達を無事に送り届けないとな……嬢ちゃんもそれで良いな?」
「はい。よろしくお願いします」
カコがそう言うとおっさんは満足そうに頷いた。
「おう! 安心しろよ。嬢ちゃん達はきっちり俺達が送ってやるからな」
「はい!」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「カコさん大丈夫ですか!」
カミラを背負ったカコが学園に着くなり白衣を着ていかにも「科学者です。」っという人が走り寄ってきた。
「イーダ先生、落ち着いてください。大丈夫ですから」
「でもカミラさんがけがをしたと!」
「通りかかった人がけがを治してくれたので命に別条は無いそうです」
「そうですか………すいません。わたしが薬草採取を頼んだばっかりに」
「いえ、気にしないでください。誰もあんな所にゴーレムが出現するなんて誰も予想できませんって」
「そう言っていただけると気が楽です……しかし一体なぜゴーレムが、この辺りにゴーレムが出るなんて聞いたことも無いですし、ゴーレムが出現する条件を満たしている場所も心当たりがありません」
……ゴーレムが出た事にものすごく心当たりがある。
「とりあえずカコさんは今日はもう寮に帰って休んでください。」
「わかりました。だけどカミラは?」
「けがが治ったとはいえ油断はできません。今日は保健室で休んでもらいます」
「はい……カミラをお願いします」
「いえ、せめてものわたしができるお詫びですよ」
そう言ってカミラを背負い、イーダ先生は去って行った。
「なぁ、一つ聞いて良いか?」
「どうしたの?」
「いや、俺一応男だけど部屋に入っていいのか?」
「う~ん、できるだけ漁ったりしないでね」
「いや、さすがにそんなことはしないって」
「なら良いよ」
そう言ってカコが歩き出したからそれに大人しく付いて行った……なんか女の子の部屋に入るのってドキドキするな。
「童貞だからじゃない?」
今回ばかりは何も言い返せなかった。