5、事故は意図せず起こるもの
神が、神が降臨なさったぞ!小説の神が!すばらしい、ネタが次々と溢れ出てくる!
俺は今悲鳴の聞こえた方へ全力で走っていた。さすがチートだ。軽く百キロは出てるんじゃないか?
「おい! まだ着かないのか!」
「そりゃそうだよ。だって声だけを君に転送してたから実際にははるか遠くだから」
「どれくらいあるんだよ?」
「そうだねー……あと30キロぐらいかな?」
「絶対間に合わないだろそれ!」
「というか何で魔法を使わずに走ってるの? 使えば速いのに」
「それを早く教えろよ!」
「んー、あんまりおすすめしないけど教えてあげるよ。ちょっと止まって」
俺は言われたとおりに立ち止まった。
「じゃあ始めるよ。えーゴホン、かみさまの、たのしいまほうきょうしつ~」
なんか始まった。
「はい! というわけで始まりました第3521回かみさまのたのしいまほうきょうしつ!」
無駄に続いてるなおい。
「この番組はこの天才でモテモテでかっこいいプァーフェクトゥッなこのぼくこと神様が童貞君にわかりやすく魔法を教えるというコーナーだよ!」
俺が童貞なのは関係ない、それにお前は天才じゃなくて天災だ。あとパーフェクトの発音を無駄にかっこつけんなよ地味に腹立つんだよ。というか、
「お前さっきから誰に向かって言ってんの?」
「もちろん画面の向こうのみんなだよ」
メタいんだよ。
「はい! では童貞君にはまず行きたい方向に体を向けてもらいます」
俺は童貞なのは……もう良いや。とりあえず言われた方に体を向ける。
「違う違うもうちょい右……ああ~行きすぎ行きすぎ、ほんのちょっと左……そうそう、そう! そこ!」
「で、次はどうするんだ?」
「はい! じゃあまずは説明を聞いててね。まず、自分の背中から光の翼が生えていてそれが光を出すと凄まじい速さで進むのをイメージします。するとあ~ら不思議、凄まじい勢いで体がすっ飛んで行きます。以上でかみさまのたのし「ちょっと待ておい」どうしたの?」
「それ絶対やばい奴だろ。絶対また痛いだろ」
「当たり前だろーが! 何言ってんだ!」
「お前が何言ってんだ! 嫌だぞ、俺は絶対にやんねーぞ」
「そんなこと言ってる場合かな~・・・あ、今片方がやられて死にかけてる」
「何っ!?……くそ、やるしかないか」
俺は言われたとおりにイメージした。すると凄まじい勢いで体が前に飛んで行った。
「あああああぁぁぁぁぁ!」
そしてすぐにでっかいゴーレムの様なものが見えてきた。
「おい! これどうやって止まんだよ!」
「当店はそのような質問にはお答えできません。なので安心して突っ込んでください。またのご利用をお待ちしております・ω<」
「ふざけんなてめぇぇぇ!」
俺は盛大にゴーレムに突っ込んだ。そしてゴーレムと壁を粉々にしながらなんとか止まる事の出来た。
「あ」
突っ込んだ時結構痛かったんだが、というか襲われていた人たちは大丈夫なのか? 俺が来たときの衝撃波でけがしてんじゃないか?
「だ、大丈夫ぼくが守っといたから」
こういう時は何故か働くのな。
「ぼくは君以外の味方だよ」
俺の味方もしろ、というか。
「おいどうした?」
「いや~、あれ一応用意したボスだったんだけどな~」
「……え?あれが?」
「うん。あれが」
…………。
「お、おい、大丈夫か?」
俺はこの空気に耐えられず近くにうずくまっていた女の子に声を掛けた。
「あ、あの……あなたは?」
「ん?」
あぁそうか、そりゃあいきなりすごいスピードで突っ込んできたあげくモンスターを引き殺した奴なんて誰だって怪しむよな。
「あぁ俺の名前はリヒトだ」
俺が名前を言うとひどく混乱しているようだ。まぁ、そりゃあ誰だって混乱するな。なんせ突然飛んできたやつが王だって言うんだからな。俺だって混乱する自信がある……っとそれより。
「おーい? だいじょうぶか?」
俺が再び声をかけると我に返ったようだ。
「カミラ! カミラしっかりして!」
女の子が抱えている子はひどいけがをしていて素人の俺が見てもやばいとわかるような状態だ。
「そんな……このままじゃカミラが」
「………」
……なぁ、この子を助けられないのか。
「できるよ、回復魔法は光魔法の仲間だから」
ほんとか! じゃあその方法を教えてくれ。
「普通に傷に手をかざして念じるだけで良いよ」
言われた通りに俺は傷に手をかざして必死に治れと念じた。すると手から光が出てみるみるうちに傷が塞がっていき、やがて完全に傷は塞がった。
「……これで大丈夫なはずだ」
「カミラ……良かった」
女の子はカミラを抱きしめながら涙を流していた。そして不意に畏まった態度になる。
「ありがとうございます、リヒト様」
リ、リヒト様か、なんかくすぐったいな。
「リヒト様は止してくれ、リヒトで良いよ。あと敬語も使わなくて良いから。」
女の子は迷っていたようだがやがて決心したのか
「ありがとうリヒト、カミラを助けてくれて。何かできる限りのお礼をしたいのだけれど」
ん? 今なんでもって……もとい、お礼か、別にそんなつもりで助けたんじゃないんだが。
「なんなら共歩者にでも誘ってみたら?」
クソの声が聞こえてきた。……そうだなできれば俺もこの世界の事を早く知りたいし、
「じゃあ」
ん?待てよ、ゴミの言い方的にに共歩者って結構大事なんじゃないか?もしかして普通初対面の相手に共歩者になってくれなんて言わないんじゃないか?
「ちっ……大丈夫、普通の事だから」
あっぶね、異世界に来て初っ端から恥をかく所だった。
「いや、やっぱいい」
「どうしたの? 私にできる事なら何でもするから」
「ほら彼女もこう言ってるんだし、とりあえず言うだけでもしてみたら?」
しかし、……いや待てよ。あのクソは何でわざわざ聞こえるように舌打ちした?もしかしてわざと聞こえるようにして俺に共歩者を作らせないようにして困らせるための罠か?
「大丈夫安心してって。それに、共歩者は早めに作っておいた方が良いよ」
むぅ……確かにそれに関してはゴミの言うとおりだ。ここは多少のリスクも目を瞑るべきか……決めた。
「……できれば良いんだが……俺の……「共歩者」になってくれないか?」
「……え?」
俺が言うと彼女があっけにとられたような反応をした。
「まぁ、常識的に考えて初対面の相手に共歩者になってくれなんて言わないんだけどね」
今回もまた新たにゴミをぶっ殺す理由が増えた。