4、出会いは何時も突然に
遅れてすいませんでした。
「あったよー」
カミラが最後の薬草を見つけてきた。
「カコ~、とりあえずこれで全部?」
「うん、先生に頼まれたのはそれで最後だね」
「ああ~、疲れた」
そう言ってカミラは近くにあった岩に腰かけた。
「……帰る前に手を洗って行こうか。泥だらけだし」
「そうだね。確かこの近くに河があったはずだからそこで手を洗って帰ろうか」
そして私達河に向かって歩き出した。
「……冒険者になったらきっとこんな事ばっかするんだろうな」
手を洗っているとカミラがポツリと呟いた。
「どうしたの急に?」
「いや、卒業して冒険者になったらこんな事ばっかりするんだろうなって思って」
「最初はみんなそうでしょ?」
「でもやっぱり物語に出てくるような人たちと比べると地味じゃない?」
「まぁ、そうだけど」
私は手を魔法で乾かしながら苦笑した。
「私は物語に出てくる英雄や学園を創ったハイラントのようになりたい。そしてこの国に残る獣人差別をなくしたい」
「カミラ?」
「そしてこの国の獣人差別を無くしてみせる」
カミラが何時になく真剣な表情で言った。
だが、私はその事に対してとっさに肯定の言葉が出てこなかった。
獣人差別。
それはこの国、いや、人族の心の中に根深く残っているものだ。
人間は自分とは違い、自分よりも優れているものに対して恐れを抱く。
それは人が人であるかぎり決して無くならないだろう。
「……カミラならきっとできるよ」
結局私の口からでたのはそんなありふれて薄っぺらい言葉だった。
「ありがとう」
そう言ってカミラは笑った。
私の言葉が根拠の無い励ましのような言葉だと分かっているだろうに。
「……よし、じゃあ戻ろうか」
「うん」
そうして私たちは採った薬草を入れた籠を抱え歩き出した。
その時突然地面が揺れだす。
「な、なに?」
すると地面がまるで生きているかのように盛り上がっていき、次第に人の形になっていった。
あれは、まさか!
「なんでゴーレムがこんな所に!」
カミラが悲鳴に近い声を上げる。わたしだって叫びたい、何でゴーレムが?ゴーレムは本来はBクラスのダンジョンの深層に出てくるような魔物だ。こんなクラスも付かないような所に出るなんて聞いた事がない。
「とにかく逃げよう!!」
カミラがわたしの手を取って走り出した瞬間地面がせり上がった。
……これは第三位土魔法「ラントヴァント」?
「……どうやら逃がしてはくれないようね」
「どうするカコ! ゴーレムなんて私達だけじゃ絶対に倒せないような相手だよ!」
「落ち着いてカミラ、逃げるだけなら別に倒さなくて良い。少しでもダメージを与えて怯ませて走って逃げれば良い。幸い、ゴーレムの後ろには壁が無い」
「……そんなにうまくいくものなの?」
「何もせずにやられるよりはいいでしょ? とにかく「グォォォォーーーーー!」っ!?」
ゴーレムが叫び声をあげると同時に凄まじい量の礫をこちらに向かって撃ってきた。
「ラントヴァント!」
カミラがとっさに目の前に魔法を発動し壁を作りそこに礫がぶつかりが砕け散った。
「……カコ! 私は何をすれば良い?」
「わたしが魔法式を創る! だからそこに魔力を注ぎ込んで!」
わたしは意識を集中して魔法を構築する。そして数秒ほどで魔法式を完成させた。
「これは……第五位火魔法「ブレンネン」? すごい、こんなに早く構築するなんて」
「カミラお願い!」
「まかせて!」
カミラが魔力を注入したとたん魔法式は赤くひかり、次の瞬間凄まじい炎がゴーレムを包み込んだ。
「はぁ、はぁ、やった?」
カミラは魔法を使ったことによる魔力切れで肩で息をしている。
……無事に帰れたら何かお礼をしよう。
「……カミラ今のうちに逃げよう!」
次の瞬間、炎の中から凄まじい勢いで飛んできた無数の礫の一つががカミラの腹部を貫いた。
「あっ」
「カミラ!!!」
わたしは倒れたカミラに駆け寄り腹部に回復魔法使った。しかし第一位魔法程度ではせいぜい応急処置が精いっぱいだ。そして、炎が消えるとそこにはほぼ無傷のゴーレムがいた。……どうすればいい?カミラの出血量は決して少なくない。だけどわたしだけじゃ第一位魔しか使えないから傷を塞ぐ事も出来ない。……それにゴーレムはどうする?第五位火魔法で効かなかったんじゃ他の魔法じゃ絶対に無理だ。
「グォォォォォ―――――!」
再びゴーレムがさっきの魔法を撃とうとしている。……ダメだ。わたしじゃあれさえ防ぐのは無理だ。
「カミラ!」
意味がないとわかっていてもわたしはカミラを抱きしめた。
「だれか……助けて!」
次の瞬間、凄まじい光が通り、ゴーレムと周りを囲んでいた壁が砕け散った。
「……え?」
「おい、大丈夫か?」
私があっけにとられているといつの間にか現れた、私と同じくらいの男の子が声をかけてきた。
「あ、あの……あなたは?」
「ん? あぁ、俺の名前はリヒトだ。」
リヒト?………リヒト様!? 光の王がなんでこんな所に!? それに光の王は人には姿見せないんじゃ?
「おーい? 大丈夫か?」
混乱しているわたしにまたリヒト様が声をかけてきた。大丈夫かどうかなんて……っ! いけない!
「カミラ! カミラしっかりして!」
カミラは気を失っていた。そして傷からはおびただしい量の血が流れ出ていた。
「そんな……このままじゃカミラが」
「………」
リヒト様が無言でカミラの傷に手をかざした。すると手から出た光がカミラの傷を包み込み、みるみるうちに傷が塞がっていった。
「……すごい」
「……これで大丈夫なはずだ」
傷が塞がったカミラは安定した寝息を立てていた。
「カミラ……良かった」
カミラが助かったという事を改めて認識して自然と涙が出てきた。
「ありがとうございます、リヒト様」
「リヒト様は止してくれ、リヒトで良いよ。あと敬語も使わなくて良いから」
リヒト………は照れ臭そうに笑った。
「ありがとうリヒト、カミラを助けてくれて。何かできる限りのお礼をしたいんだけれど」
「……じゃあ……いや、やっぱいい。」
「どうしたの?わたしにできる事なら何でもするから。」
リヒトはしばらく迷っていたようだが決心がついたのか口を開いた。
「……できればで良いんだが……俺の……「共歩者」になってくれないか?」
「………え?」