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「くたばれ、クソ神様」  作者: 無脊椎動物
はじまり、はじまり
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3、ハイラント学園より

「さーて、アラタ君はどう動くかな~♪」


 少年は何も無い空間でそう呟いた。


「ぼくがこれだけお膳立てするんだから楽しませてね♪」


 そして少年は笑った。とても楽しそうに。


 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


 ハイラント学園はツァオヘラー王国にある、かつて英雄と崇められこの学園を設立した冒険者の名前にちなんで名づけられた学園である。

 この学園は人種、身分、国、に関係なく多くの者が学び、数多くの偉人を輩出した名門校である。

そして、英雄に憧れてこの学園に入る者も多い。

 しかし、そのほとんどが冒険者の過酷さや収入の低さを目の当たりにして断念するのである。



「カコさん。あなたは冒険者は向いていませんよ。せっかく頭の良いんですからどこかの国の官僚になるのをおすすめしますよ」


 何度めともわからない教師とのやり取りにカコはうんざりしていた。


「サンドラ先生、何度も言うとおり私は冒険者になるためにこの学園に来たのです。いまさら変えるつもりはありません」


「しかし、あなたは別段剣の腕前が良いというわけでもないうえ、魔法に至っては含有魔力が人一倍少ないため初級魔法がやっとではないですか」


 そう言われるとカコは言葉を詰まらせた。


「とにかく、あなたが冒険者になったって直ぐに死ぬに決まっているではないですか。それよ「サンドラ先生お客様がお見えになっています。」……とにかく今のままでは冒険者は諦めた方が身のためですよ。それでは」


 そう言ってサンドラ先生は去って行った。


「そんなこと言われなくてもわかってる……」


 カコは一人そう呟いた。



「また先生から何か言われてたの?」


「うん……まあね」


 先生の長ったらしい話から解放されると友人のカミラが心配して話しかけてきた。

 心配してくれているが正直今その事について話したくなかった。


「ちょっと進路の事でね……そういえばカミラは卒業したらどうするの?」


「私は……やっぱり冒険者になろうと思う。だって、まだツァオヘラー地域では獣人の差別が残っているからおそらく普通の職に就くのは無理だと思うから」


 そう言ってカミラは腕についた羽を撫でた。


「……ごめんなさい」


「いいよいいよ! 気にしないで!」


 二人の間に気まずい沈黙ができる。


「……ごめんね。変な空気にしちゃって。……じゃ、じゃあ約束通り図書館で一緒に勉強しようよ。ほら、試験もあるし」


「……ああ、そっか。もう卒業試験まで4ヶ月しかないもんね」


「うん、私今のままだと筆記試験が少し厳しいんだ。カコは……心配いらないか。なんせ座学で今学年主席なんだから」


「座学はね。でも、魔法がいまだに初級しか使えないんだ」


「カコなら座学で合格点取れるって」


「おーい! お前たちもう下校時間だぞ! それとも実技訓練をするのか?」


「……じゃあ図書館に行こうか」


「そうだね。でも座学は心配ないか。なんせ学年主席様が直々に見てくれるんだから」


「もう……カミラったら」


 私達は笑いあった。よかった、さっきの気まずい空気が無くなって。



 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 



「カコ頑張って!」


 カミラが応援を聞きながら私は位置に着き、手を前に出して魔法式を構築する。

 そして魔法式を完成させ的に向かって火の初級魔法を撃つ。まっすぐ飛んで行った火の玉は狂いなく的の中央に当たった。


「ふぅ………」


 そして魔力を消費した時特有の虚脱感に襲われる。


「おやおや~? 学年主席様は初級魔法を撃っただけでお疲れと見受けられる」


「……なんの御用ですか? ユーベルさん?」


 振り返るとそこにはいつも何かと絡んでくるユーベルがいた。

 彼はこの国の貴族の息子であり、親にも甘やかされている、と聞いている。


「いや~、なにやら疲れておられるようだから心配して声をかけているだけですよ」


 そう言いながらユーベルは嘲笑を浮かべていた。


「なんの話をしているんですか。ユーベルさん?」


 カミラが心配して話かけてきた。


「うるさいですね、今私はカコさんと話ているのです」


「……またカコが座学で主席で気に食わないから絡んでいるんですか。」


「なんだとこの獣人風情が!」


「ユーベルさんお静かに。やめないなら減点しますよ」


 ユーベルがカミラの胸倉をつかもうとした時、イーダ先生から注意の言葉が飛んできた。


「……ちっ」


 それを聞いてユーベルは舌打ちをし足早に去って行った。


「イーダ先生、ありがとうございました」


「いえいえ。まったく、貴族の方たちには困ったものですね」


 私がお礼を言うと、先生はため息をつきながら言った。


「さて、ではこれで実技練習を終わります。残って練習したいものは申請を出して下さい。ではおつかれさまでした」


「「「おつかれさまでしたー」」」


 挨拶が終わると数人の生徒がイーダ先生に申請を出しに行った。


「カコはどうするの?」


「私も残ろうと思うよ」


「そっか、じゃあ頑張ってね」


「あっ、カコさんカミラさんすこし良いですか?」


 カミラが帰ろうとするとイーダ先生が声をかけてきた。


「何でしょう?」


「今切らしている薬草があるのですが用事があり採りに行けないのです。なので申し訳ありませんが二人で少し採ってきて下さいませんか」


「わかりました。」


「すいませんできれば大事な時期にこんな事を頼みたくはないんですが」


「いえ、さっき助けてもらったお礼だと思って下さい。それで何を採ってくれば良いんですか」


「ありがとうございます。それではこの紙に書いてある薬草を採ってきて下さい」


 そう言って渡された紙には比較的近い場所で採れる薬草が数種類書いてあり、どれくらい採れば良いのかも書いてあった。


「では、よろしくお願いしますね」


「はい。行こうカミラ」


「うん」


 そうして私たちは薬草を採りに向かった。


前回でチュートリアル回は終わるつもりです(終わるとは言っていない)。

・・・はい遅くなってすいませんでした。

さて、今回はとうとうこの物語のヒロインの登場です。次はいつになるかもわかりませんが気長に待っていただければ幸いです。

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