2、はじめてのいせかい
これでとりあえずチュートリアル回は終わるつもりです。
俺は今改めて異世界に来たんだな、と実感している。
見渡す限りに広がる明らかにほとんど人の手の入っていない草原、そこではヌーのような動物が群れをなしている。遠くを見ると地球では考えられないほど巨大な木、その周りを見たこともないような巨大な鳥が飛んでいる。そしてとても澄んだ空気が俺の体の周りを流れていく…………
「いいかげんに現実逃避をやめたら?」
あのクソ野郎の声が聞こえてきた。そうだな、俺もそろそろ現実と向き合わなきゃな。
「誰のせいだと思ってんだクソがあああぁぁぁぁ!」
現在俺は草原……のはるか上空から落ちている。
「おい! どうすんだよこの状況! 異世界に来て数分で死んじまうじゃねーか!」
「大丈夫大丈夫。君の体は既に人間辞めているから、この程度じゃ死なないよ。だから安心して地面にめり込んでね♪」
「・・・参考までに聞いておきたいんだが、死にはしないが痛いんじゃないか?」
「ビンゴ!」
「次会ったら絶対ぶっ殺す!」
「そういえば一つ説明し忘れてたことがあるんだけど。」
「今それを言う!?」
「いやーごめんごめん、うっかりしてたよ。説明し忘れたことそれは……」
「それは……?」
あのクソはたっぷりためて言った。
「それは……あ」
「ああ? 次は何だよ!」
「あと5秒で地面にぶつか、もう遅いか」
「ぐほぁぁぁ!」
そうして俺は辺りに大量の土をまき散らしながら地面にめり込んだ。
「ひ、ひどい目にあった」
俺は落ちた時にできたクレーターから這い上がった。
「ほらね、大丈夫だったでしょ♪」
あのゴミ屑の声が聞こえてきやがった。
「……なんであんな所から始めたんだよ」
「面白いじゃん」
「あと、明らかに時間稼ぎしてたよな?」
「面白(ry 」
やっぱりかちくしょう。
「さっきの話の続きなんだけどまだ説明してないことがあったんだ」
「なんだよ」
「王にもそれぞれ名前があるから君は光の王の名前である「リヒト」を名乗って欲しいんだ」
「……それだけか?」
「うん。ああ、あと戦闘の仕方を教えるチュートリアルを作ったんだ。今から開始するよ♪」
「っておい!いきなりかよ!」
すると目の前にぶよぶよした緑色の何かと狼が現れた。
「こういうのの定番なスライムと狼みたいな魔物だよ。じゃあ今から君のスペックから説明するね」
「こいつらはその途中に襲いかかって来ないのか?」
「大丈夫安心して♪」
飛びかかられてもすぐに対応できるようにしておこう。
「まずは君の身体能力から、まあ、さっきの通り生半可な攻撃じゃ傷すら負わない防御力とチートな攻撃力ってだけだね。試しにそこの狼を殴ってみて」
「動かないやつを一方的に殴るのは気が引けるんだが……」
「あ、もう動きだしてるよ」
すると狼はこちらに向かって唸っていただけだったのが突然こちらに飛びかかってきた。
「うおぁ!」
俺は反射的に地面に転がってよけ、って速っ! 予想よりもはるかに速いスピードで俺は地面を転がり、狼から大体20メートルほどの距離を一瞬で離していた。
「ビビりだなー。次は君のターンだよ。ほら、殴りかかってみて」
うるさい、ほっとけ。とりあえずさっきみたいなことにならないように慎重に走ってぎりぎり通りすぎずに狼の目の前に止まる事の出来た。突然目の前に現れた俺に戸惑っている狼に向かって俺は本気の拳をぶつけた。
「うわぁ」
拳が当たった瞬間狼はそこからはじけ飛び、おまけに衝撃波で地面が少しめくれ上がった。
「じゃ、じゃあそのスピードと力でちゃんと動けるように練習しておくことをおすすめするよ」
引いてんじゃねえよクソ神。俺だってここまでなるとは思わなかったんだよ。
「気を取り直して次は魔法だね。まあ光の王だから最初は光魔法しかないけど」
「それしか使えないのか?」
「練習すれば他の魔法も使えるようになるよ」
「光魔法ってどんなことができるんだ?」
「普通に光を当てて焼き殺す、あとアンデッドの浄化かな。まあ、本人の応用次第だよ。試しにそのスライムに向かって撃ってみて」
「どうやって撃つんだ?」
「どんな感じにするかイメージしながらやってみて、そうすれば何か出るはずだよ」
「何かって……」
言われたとおりに俺はスライムに向かって手からレーザーを出すのをイメージした。すると、手から凄まじい光が出てスライムを焼き尽くした。
「…………」
俺が溶けて赤くなっている地面とスライムだった黒い物体を見て絶句しているとクソ神の声が聞こえてきた。
「じゃあ最後にボスを用意したからそいつと戦ってみて」
「……そんなのいないじゃないか」
「ちょっと座標軸ミスって別の所に出しちゃった。あ、あとなんかそいつに人が襲われてるね」
そうするとどこからか悲鳴が聞こえてきた。
「助けに行ったほうが良いんじゃないの?」
「いや、お前マジふざけんなよ!」
そうして俺は悲鳴の聞こえた方へ走りだした。