ブリフィアのその後
「……くそっ」
椅子に深々と座ったゲルルフは、スタラトのギルドマスターはその顔に刻まれたシワをさらに深くして悪態をつく。
「クソジジィ、戻ったぞ」
突如としてその部屋の閉じられていた部屋の扉が開き、二人の男女が入ってくる。
本来なら咎められてもおかしくはないがゲルルフはその事を全く気にした様子は無いままその二人へと目を向ける。
「……念のため聞いておくが嘘ついてふざけてるわけじゃないよな?」
「当たり前だ、なんなら自分の目で調べてこいよ」
「……いや、ほとんど願望で聞いた、お前らなら嘘は付かないだろう」
「本当に、どうなっているのでしょうね」
ブリフィアに向かう以前に二人に指示したことは二つ。
一つは謎の存在であるカコの監視、及び正体を探ることだ。
まあ、これに関してはアラタと言う更なる爆弾を発掘した結果に終わったが。
そして二つ目は二人がカコに同伴する建前であり本任務である魔物の凶暴化の調査だ。
「調査して元凶は完全に消滅したことは分かったんだよな?」
「見た限りはな」
「ならば何故魔物の凶暴化は収まらない?」
この二人から洞窟に出た化け物の容姿は聞いていた、そして最深部の槍で貫かれた少女の事も、だからゲルルフはそれが人などを触媒とする悪霊系の新種、若しくは変異体だと判断した。
魔物が悪霊に取り付かれて凶暴化する事は別に珍しくはない。
これを倒せばこの騒動は収まると。
「それどころかどんどん広がっているな」
だが、現実は収まるどころかむしろ凶暴化が広がっている、今やスタラトの近郊でも報告が上がるほどだ。
「……私の勘だけどこれは王の遊びじゃないかしら?」
「……闇の王か」
確かに、ここまで騒動を大きく出来るのはそれこそ王位だろう。
現に闇の王は通称『王の遊び』と呼ばれる騒動を度々起こすことがある。
それが本人にとってはイタズラなのか、何かしら怒りに触れたのかは分からないが。
「……いや、それは無いだろう、闇の王は気まぐれに町ひとつを滅ぼしたりはするがこんな回りくどい事はしない」
「だよな」
だかこの騒動の説明が付かない、他の王、特に光と氷の王は人間に不干渉どころか遭遇したと言う報告が一つもない、ならばまた闇の王の気まぐれか?
いや、それよりも怪しい存在は居る。
「……おそらく、アラタはこの騒動の鍵とまでは言わないが、何かしらの関係があるだろう」
「監視は?」
「隠密に優れたものを常に付けて監視している、何かあれば報告があるはずだ」
「じゃあ俺達はどうすれば良い?」
「お前らは引き続き魔物の凶暴化の調査と対処をしてくれ、通信珠を渡したままにする」
「休みを寄越せ」
「無理だな」
「……はぁ」