92、アルフの頼み事
{カコ、こっちがガルトから依頼を受けていることは?}
{言ってないよ}
{よし}
「何か話してたのか?」
「先ほどのことを、カコさんとはここで偶然知り合って」
「さっきは災難だったな」
「いやはや、本当ですよ」
「……あー、個人的な興味で聞くんだがあの男は知り合いだったのか?」
「ああ、彼の名はガルトと言いジャックさんの弟子の一人なんですよ」
「ジャック、と言うとあの?」
「ええ」
「何であんなことをしてきたんだ?」
「それは……私が原因なのです」
お、意外とスムーズに聞けそうだな。
「そうなのか?」
「……いえ、あなたたちに聞いてもらうことではないですね」
「話の流れからして向こうを馬鹿にでもしたのか?」
「……そういえば、ギルドには何をしに?」
「ああ、今日は俺のギルドカードの更新に」
「と言うことはあなたたちは冒険者、なのですか?」
「一応、両方Bだ」
「その年でBなのですか!? 凄いですね!」
「ところで、あんたは一体何のために?」
「……ここであなた達にお会いしたのも何かのご縁なのかもしれませんね、私はここに依頼をするために来ました」
「依頼を?」
「はい……そこでお願いがあるのですが、私の依頼を受けては下さいませんか?」
おっと、まさかのこっちからも依頼か。
だがアルフに近づくためにはここは依頼を受けるべきか。
{カコ、クエストは一度に複数受けることが出来るのか?}
{うん、大丈夫だよ}
よし。
「わかった、まずは話を聞こう」
「本当ですか! ありがとうございます!」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
さすがに立ったまま話すのは、ということでギルドの近くにあるカフェのようなところで話を聞くことになった。
……さすがに食べられなくなってきたな。
「さて、それじゃあ何でガルトを怒らせたんだ?」
「……ガルトがジャックさんの弟子の一人だとはもう言いましたよね? 私はジャックさんの兄であるジャクソンの弟子なのです」
うんそれはもう知ってる。
「そうなのか」
「はい、だから私が依頼したいのは一つ、ガルトさんを助けてほしいんです!」
……ん?
{え?}
「……どういう意味だ? 話が全く見えないんだが」
「あ、すいません! 順序を追って説明しますね」
「頼む」
何が何だがさっぱりなんだが……
アルフはガルトたちを陥れようとしてるんじゃないのか?
それが助けてほしい?
「私は、その、見てしまったんです」
「何を?」
「ジャックさんが禁忌を犯すところを」
ここまでの話は一緒だな。
「だから友人であるガルトにそのことを言って、ジャックさんを止めてくれ、と頼んだんです、ですが彼はジャックさんがそんなことをするはずないと激怒し、私を嘘つき呼ばわりしてしまいには」
「ああなった、と」
……あれ?
「はい、本来ならあの時もっと頑張って説得するべきだったのでしょうが、まともに信じてもらえずつい頭にきてあんな別れになってしまったんです」
「それで依頼に来たのは?」
「……やはり彼のことが心配で、ですがこれ以上私の言うことは聞いてくれないでしょうし、なので第三者に調査してもらい証拠を見せれば彼も納得すると思ったのです」
……アルフ普通に良いやつみたいなんだが、演技か?
いや、そうは見えないな、友人のことを本気で心配しているかのようにしか見えない。
「なのであなた達にはジャックさんの禁忌を犯している証拠の確保を依頼したいのですが」
{これどう思うカコ?}
{……ちょっとこんがらがってきたよ}
{俺もだ}
{とりあえず依頼は受けよう}
{そうだな}
「わかった、あんたの依頼を受けよう」
「本当ですか! ありがとうございます!」
嬉しそうに顔を綻ばせるアルフ。
だがあえて言おう。
まるで意味が分からんぞ!
クエスト名:アルフの頼み事
依頼主:アルフ
目標:証拠を確保する
報酬:未定