青年の出会い
「ん? これは何だろう■■■?」
お店に並ぶ商品を眺めているとふと目に留まるものがあった。
一見すると卵のよう、だけどそれは今まで見たこともないような大きな、それこそ一度見たことのあるガチョウの卵よりも……ガチョウ? これも無くした記憶のかけらだろうか?
「卵、でしょうか? 不思議な模様ですね」
「おっ! お客さん! それに目を付けるとはお目が高い!」
「あ、すいません、これは一体?」
「これはかの有名なアイジス火山に生息しているアイジス鳥の卵です! ここまで状態の良いものも滅多にありませんよ!」
アイジス火山? 聞いたことがないな。
「そのアイジス鳥とはどのような鳥なのですか?」
「アイジス鳥は別名『不死鳥』とも言われるほど生命力の強い、赤い美しい鳥です」
「不死鳥?」
不死鳥? 生命力が強いって首が取れても動くとか?
いや、さすがにそれはないか。
「はい! だからこそアイジス鳥は他の生物には耐えられないような過酷な環境のアイジス火山で生きることのできるのです!」
まあ、ないよな。
それよりも赤い美しい鳥か、少し見てみたいな。
「へぇ、どう? ■■■? これこの卵を買って育ててみない?」
「別に私は構いませんが……」
「よし! それじゃあ……すいません! その卵をください!」
「ありがとうございます! 金貨一枚です」
ぶっ!? き、金貨一枚!?
め、めちゃくちゃ高いな、何とか笑顔は保ったままに出来たが内心は冷や汗がだらだらだ。
金貨を渡して卵を受け取る、これが金貨一枚の重みか。
……ほんのりと温かい、卵とはこんなものなのだろうか?
■■■にも渡してみよう。
「■■■、これ持ってみて」
「? どうしたのですか……温かいですね」
卵を抱えてほほ笑む■■■、どうやらこの卵が特別のようだ。
「流石火山の鳥だね……ところで■■■、一旦馬車に戻らない?」
「一体何をしに?」
「ほら、その卵結構重いでしょ、だから馬車にその卵を置いてきて改めて見て回った方が良いかなって」
あの卵は見た目通りそれなりの重さがあった、卵を持ったまま歩き回るのは大変だろう。
「確かに、そうですね」
「確か毛布が有ったよね、それか新しく買っていく?」
「いえ、金貨一枚は思いのほか大きい出費でしたし、辛抱しましょう」
「ははは、そうだね……」
はは、は……本当に痛かったな。
「そういえば■■■」
「は、はい! 何でしょう?」
そうそう、大事なことを忘れていた。
「名前はどうしようか?」
「な、名前ですか?」
さすがに『鳥』や『不死鳥』とかではダメだろう。
「ニーナ達と相談しましょう」
なるほど、それも良いな。
……だけど、まあ、なんだろう、せっかく二人っきりの時に買ったんだ、わがままを言うと
「うーん、僕としては■■■と二人で決めたいんだけど、ダメかな?」
ダメもととで聞いてみる、難しい顔をされたらみんなで決めよう。
「私は別に構いませんが……」
……よかった、てっきり断れるかと思っていたが。
「よし、なら馬車に戻って考えよう!」
「はい」
さて、毛布はどこにしまっていたかな?
この辺は暑いから確か奥のほうにしまったはずだったけれど……
……今ふと思ったんだけれど二人っきりで名前を付けるなんてなんか子供に名前を付けるみたいだな。
いやいやいや! 僕はそんなつもりはなかったから!
……ああ、■■■に『そんなこと考えてたんですね、気持ち悪い』なんて思われていないだろうか。
どうか■■■がそのことに思い至らないように、ただのペットを飼うのと同じ感じで思ってていますように。