86、次の街へと
{シトラ?}
{うん、ツァオヘラー王国の貿易の中心街、そして水の王が御座すところ}
馬車に揺られるカコに次の街について尋ねるとそんな答えが返ってきた。
ちなみに俺は今影の中に入っている。
人状態で行こうかとも思っていたんだが、思いのほか馬車代が嵩みそうだったんで止めた。
少し馬車の旅を楽しみにしてたんだけどな。
{貿易の中心街っていう事はかなり大きいのか?}
{国の中でも1、2位を争うぐらいかな? それにシトラには色んな国の物が置いてあるの}
{そうなのか}
まあ、聞いたところによると水の王はわりと人を助けてくれるみたいだしな。
……フランメ? 知らないな。
{あとスタラトのギルドで聞いたんだけど、シトラでは今お祭りをやっているんだって}
{祭り?}
{そう、シトラでは五十年に一度、水の王を讃えるお祭りをするの}
{どんなことをするんだ?}
{貿易が盛んなシトラにはたくさんの船大工が居て、五十年に一度選ばれた船大工が水の王のための船を作ってそれを献上するんだって}
{船を献上するのか、豪華だな}
{うん、それに今年はいつもよりも豪華なんだって}
{そうなのか? 一体なんで?}
{さっき船大工が選ばれるって言ったよね?}
{ああ}
{それで今回は3人の船大工が選ばれたらしいの}
{3人か……普通そういうのは1人だけなんじゃないのか?}
{いつもならね、けどその3人は同じくらいの腕前、そして3人は兄弟だからそれならばと今回は特別になったらしいの}
{なるほどな、けど水の王はそれを許したのか?}
{ちゃんと本人に許可を貰いに行ったらしいよ? そしたら}
『良いんじゃない? 楽しそーだし!』
{だって}
おっと、雲行きが怪しくなってきたぞ。
フランメに続いて水の王もイメージぶっ壊してきそうだな。
{そ、そうか}
{だから今度のお祭りは今までにない規模なんだって}
{まあ、そうだろうな}
けどそれだと少し問題がある。
俺はシトラに着いたら水の王に会いに行く予定だった。
だがそんなものが開かれているのならおそらく水の王の所にはかなりの人が訪れているだろう。
そうなっていると、俺としては出来るだけばれないようにしたいがそれは難しくなる。
真夜中にでも訪れればいいのだろうが、流石にマナー違反だ。
{楽しみだな}
{そうだね}
まあ、今ここでそんなことを考えても仕方がない。水の王に会えることを祈るぐらいしか今は出来ないしな。
それにフランメの時みたいにもしかしたら向こうからコンタクトを取ってくるかもしれない。
だから俺は今やれることを。
俺は手を止めていた光魔法の制御の練習を再開する。
今度はもうブリフィアのようなことを起こさないように。
短くなってしまった……。
けれどプロローグだから仕方ないですよね!