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「くたばれ、クソ神様」  作者: 無脊椎動物
いざ、ブリフィアへ
103/117

85.5、舞台裏

「ふぅ」


 青年は、フランメは玉座に座り頬杖を突く。

 宮殿の中にはフランメ以外の気配は無く、いつも響き渡るフランメのだらしなさを叱咤する声も今日ばかりは聞こえなかった。


「あー終わった、めんどくさかったなぁ」


 足を投げ出して何処からか取り出した抱き枕に顔をうずめる。

 その動きに合わせて玉座は背もたれが傾き、もはや玉座と言うよりはマッサージチェアだ。


「今日はローザも居ないし、あとは寝て過ごすかなぁ」


 大きなあくびをしながら、誰に対してと言うわけでもなく一人呟く。

 本人も別に誰かに返事をして欲しいわけでもなくそもそも返事が返ってくるとは考えてなかった。


「今日は今まさに始まったばかりだよ?」


 言った本人ですら予想していなかった呟きに対する応答。

 それを聞き、フランメはまるで時間でも止まったかのように動きを止める。


「……久しぶりだね、ラウム」


「そうだね、フランメ!」


 いつの間にか玉座の後ろには『ラウム』と呼ばれた青年が立っていた。

 執事服に身を包んだラウムは大仰な仕草で、まるで役者のように劇的に、大仰に口を開く。


「ああ、これぞまさに感動の再開と言うものだね! 僕は今喜びで胸がいっぱいさ!」


「……僕は睡眠を妨害されて憂鬱だよ」


「何故だい! この完全なる世界はこんなにも美しい! 憂鬱になる要素なんてなに一つ無いじゃないか!」


「……はぁ」


 フランメのうんざりした顔を見ながらも、いや、むしろ嬉しそうにラウムはこの世界への賛美を続ける。


「それで? 今日は一体どうしたんだい?」


 早く要件を言うようにフランメがそれとなく促す。

 普段の彼を知っている者が見ればあのめんどくさがりフランメが自分から会話を進めようとしたことに驚くであろう。


「はっはっは、それは君がよく分かっているだろう?」


「……あれのことかい?」


「そう! お見事!」


「わーうれしいなー……それで何が聞きたいんだい?」


「君はあれに心当たりはあるのかい?」


「……いや、無いよ」


「本当にかい?」


「……ああ」


「いやー疑ってしまい申し訳ない! 俺はてっきり君が関わっているものだと思っていたよ!」


「別に構わないさ」


「ああ! 私は今まさに後悔で胸がいっぱいさ! まさか唯一無二のマイフレンドである君を疑うなんて!」


「そうかい、そう思うなら今すぐにでも帰ってくれるとありがたいよ」


「何てことだ! 君を一方的に疑ったこの我を何のお咎めもなく帰してくれるというのか! 君はなんて慈悲深いんだ!」


「ああ、うん、僕は君を赦す、だからとっとと帰っても良いよ」


「わかった! 君がそう言うのなら拙者はその通りにしよう!」


 そう言ってラウムはその場でくるくると廻りながらまるで踊っているかのよう。

 それを見ながらフランメは心底うんざりとしているかのよう。


「では! 吾輩はここで失礼するよ!」


「うん、じゃあね、はいはい早くじゃあね」


「あ、そうそう、お節介かもしれないけど小生から一つ小言を言わせてもらうよ!」


「はぁ……なんだい?」


「何かをするつもりならばれないようにしてね、じゃないとMeが出ないといけなくなるから」


「……」


「では! バーイ!」


 そう言い残してラウムは消えた、後に残るのは先程よりも静かに聞こえる静寂。


「はいはい、分かっているさ」


 フランメがまた呟く、今度は誰かに呟くように。

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