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森の小径

作者: CLONE

その森へ昔よく行ったものだ。

その森に続く道はいつも霧が出ていて途中で道に迷っていると思ったことが何度もあった。

そんな時に必ず、その森は忽然と目の前に現れる。

そして、森の奥へと続く細い小径が見える。

森に入ると明るい日差しの中に新緑の木々が小径に茂っている。

明るい光の中で新鮮な空気を吸い込む。

その景色はしばらく続いているのだが、朽ちた木のベンチがあるので立ち留まると一本の樹に目をやる。その幹は寂しそうでその木は立っている。その木を数分は見ていた。立ち去ろうと背負向けた時に、その木の幹や小枝などの詳細な記憶を思い起こしてみた。それから、振り返って目の前の木が記憶の中の木になったことを確認してから、その場を後にした。

緑の木々をしばらく行くとやがて日差しを失い倒木が目立ち始める。

空気は淀み、蒼い苔が倒木や樹木を蝕んでいる。

そこでは希望は失われ、絶望へと導かれ誘われているように暗い気持ちへと次第に沈んでいく。

ところが、小径が大木の連なりに差しかかると、突然に天にまでとどくかのような大木を通して高い青空がみえて来る。こんなに高く広がる空は最近見たことがない。空が高く見えるのは大木のせいだろう。

それでも、俯きかけていた気分が憧れの気持ちに変わり、栄光への歓喜、歓喜、歓喜を呼び起こす。

栄光と歓喜は人に人生の生きている意味、より大きな無限の価値へと自分がつながっているという満足感と自信を持たせるものである。

こうして、森の小径を進んで行くのだが、

そんな時に、足もとで何か柔らかいものを踏んでいることに気が付く。

足もとには無数の小さな蛇が小径にいっぱい広がっている。思わず、蛇のいないところへ行く。

小さい蛇と言ってもその目は悪意を放っていて、小さな二枚舌を出したり入れたりしている。

蛇を踏まないように足早に歩んでいるとこの森のグロテスクな雰囲気が気味悪く思えてくる。

すっかり気分を害してしまった頃には蛇もいなくなり、夕闇が森に迫って来ている。

色を無くしていく景色の中でせせらぎが聞こえて来る。近くに小さな小川が流れているようだ。そして、小さく光るものが飛んでいるのを見る。一つ、二つと蛍だろう。

蛍の数を数えているといつも10まではいかない。

蛍の数を数えているといつも森の出口に来ている。


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