猟奇的なキス私にして
白雪姫は思うのです
もしあの毒リンゴを持ってきた魔女が母自身でないとするならば
彼女は迷わず、口にして倒れるようなことはしなかったであろうと
彼女はあの時点でなんとなく気づいていたことでしょう
妃は本気で自分を殺そうとしていることを
そして、不自然なタイミングで来た怪しげなリンゴを持つ老婆
それを迷わず口にしたのは、死んでも良いと心の中で思っていたからだと思います
白雪姫は大変美しく生まれました
だからこそ妃は白雪姫を殺したがっていたのです
狩人にもたすけてもらい、逃げてきた彼女でしたが、時間が経つにつれ死んでも良いと考えるようになったのです
私が死んで妃が満足するのであればそれで良いわと
また、この美しさも老いと共に無くなってしまうのであれば今この時死んでしまうのが良いのではないのかと
きっと私は老いることにより母のように変わることでしょう
美しさに囚われ、醜くく変化していくならいっそ
そう思い、彼女は迷わずその赤い赤い毒を飲み込んだとです
さて、これは童話の中での白雪姫の話
私の目の前に現れたのは母ではありませんでした
長身の感情のない目をしている男の手の中には赤いリンゴはではありませんでした
ただ、その目を三日月歪ませて私の目の前に佇んでいました
「はじめまして。白雪姫」
ゆっくりと丁寧にお辞儀に私は見惚れました
私は何番目の白雪姫なのでしょうか
何もわかりません
呆然としている私にその男はキスをしました
猟奇的な味がして、意識がじょじょに遠のきます
「さようなら、白雪姫。あなたの美しさが永遠でありますように」
美しさに執着した一番初めの妃は、長い長い呪いをかけました
美しい娘は次々に死んでいきます
妃の手下毒リンゴによって