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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕とみんなの思い出

作者: 墨

 僕の友達は良いやつだ。

 僕と友達は趣味が合うし、一緒にいると楽しい。

 みんなは言うことを聞いてくれるし、みんなとお喋りするのも僕は大好きだ。


 でも、みんな大人のひとにはイジワルをされる。

 僕はみんなと楽しく過ごしたいのに、大人のひとたちはいけないって言う。


 そんなみんなとの思い出。


 アマンダはお父さんが嫌いだ。

 彼女のお父さんは本当のお父さんじゃなくて、いつも学校から帰ったアマンダに酷いことをする。

 お母さんはいつもは知らん顔だけど、アマンダのパンツがしばらく汚れなくなると病院に連れて行かれるらしい。

 アマンダは病院も嫌いだから、お母さんも嫌いだ。

 お母さんはいつも泣いていて、お父さんはお母さんとアマンダをよく殴る。

 アマンダはふたりとも大嫌いだ。

 僕は学校のねずみ取りが仕掛けてある場所を教えてあげた。

 しばらくして、アマンダは叔父さんの家に行くことになったんだって。

 叔父さんが酷い人じゃないといいね。またねずみ取りの薬が必要になっちゃうから。


 ロビーは自分が男の子に生まれたことが嫌だった。

 女の子に生まれなかったせいで、お母さんは自分を出来損ないと呼ぶから。

 でも、家で女の子の服装をさせられるのも嫌だと言っていた。

 ロビーのお母さんはずっと彼を女の子として育ててきた。

 誕生日にクラスメートが開いてくれたサプライズパーティーで、スカートの中を見られたと話したら、お母さんは焼けた包丁を持ち出して、彼の男の子の部分を切り落とそうとしたらしい。

 それっきり、お母さんは男の人たちに連れて行かれて、ロビーは病院に入ることになった。

 どうしたらお母さんが戻ってくるかなと訊かれて、僕はロビーがお母さんの言いつけどおり女の子になれたら、帰ってくるんじゃないかなと答えた。

 しばらくしてロビーが女の子になってスクールバスに乗ったら、そのまま大人のひとたちに取り囲まれて連れて行かれてしまった。

 病院で調べたら、彼の胸には女性の乳房が縫い付けてあったんだって。

 誰から抉り取ったかは知らないけど、自分で縫ったものだから彼の着ていたワンピースは真っ赤に染まっていた。

 あの格好じゃスクールバスのシートを汚しちゃうもんね。


 ヤンはいつも体の具合が悪い。

 よく病院に行っているし、お医者さんも彼がどうして床を磨く洗剤を飲んだかなんて見当もつかない。

 でも、お父さんがいつも最初に見つけてくれて、彼を抱きかかえて大急ぎで病院に連れて行ってくれる。

 このまえ学校でお弁当を食べ終わった途端に泡を吹いた時だって、お父さんがすぐさま学校に駆けつけてくれていた。

 感電したときも、階段から落ちたときも、異物を呑み込んだときも、いつもお父さんが真っ先に見つけて助けてくれる。

 先生たちも感心してた。ヤンのお父さんはヒーローなんだって。

 だけどヤンはお父さんが自分を嫌っていると思っている。いつもいつもヤンを助けてくれるお父さんが、ヤンを嫌っているなんて信じられない。

 だから僕は試してみるべきだと言った。どんなときだって、きっとお父さんはヤンを助けてくれるはずなんだ。

 でもヤン、学校の屋上から飛び降りるのは失敗だったかもね。

 君のお父さんはマントをつけてない。ヒーローだからって、みんな空を飛べるとは限らないからね。

 だけどヤン、君のお父さんはやっぱりヒーローだっただろう。

 飛び降りた君のクッションになってくれてたじゃないか。


 バーバラには恋人がいた。

 彼はバーバラの家の庭に一軒家をもってる毛深いヤツで、デートのときは首輪と鎖が必須だ。

 彼女が彼の家で愛し合っていると、突然怒り狂ったお父さんがふたりを引きずり出して、彼の頭を猟銃で粉々にしたんだって。

 お母さんは狂ったように泣いていて、お父さんはバーバラを狂ったように何度も殴りつけた。

 恋人の仇をうちたいのって訊いたらバーバラが頷いていたので、僕は彼女にすべてを包み隠さずに学校新聞の記事にすることを進めた。

 きっとお父さんもお母さんも、バーバラの悲しみが少しはわかったと思う。

 でもバーバラは大人のひとたちに連れて行かれて、彼女の両親も行方をくらませてしまったから、そのあとどうなったかは聞けなかった。


 ケンはお母さんが大好きだ。

 子どものころからいつも一緒で、彼がハイスクールに入学しても毎晩同じベッドで寝るくらい仲が良かった。

 ケンが小さいときにお父さんが亡くなって、お母さんもケンを頼りにしていたんだ。

 でも、お母さんにボーイフレンドが出来て、結婚の約束もしたから、ケンはお母さんと一緒にいられなくなると泣いていた。

 僕はお母さんがケンだけのお母さんでいられる方法を考えた。

 ケンはお母さんの手料理が大好きだったから、料理を習っていつでもお母さんの味を思い出せるようにすれば、少しは寂しくないんじゃないかって思った。

 この前、お袋の味はどうだいって聞いたら、まだ食べきれないって言ってた。

 あんまり長いこと冷蔵庫に入れておくと臭くなるよ、ケン。


 リカはクラスメートと同じバッグが欲しかった。

 でも、いくらアルバイトしてもぜんぶお父さんがお酒にしちゃうから、リカはその日のご飯を食べるので精一杯だ。

 そのことを相談されたから、僕はお父さんに内緒で別の仕事をして、こっそりへそくりを作ったらどうだと言ってみた。

 リカはアルバイトしている職場の人たち相手に別の仕事を始めた。

 でも、しばらくして病院に通わなくちゃいけなくなった。

 お父さんは酷く悲しんで、お酒をやめてくれたらしい。

 僕が何があったのと聞くと、リカはポジティブになったと言っていた。

 だけど、リカは今とってもネガティブな気持ちで暮らしている。


 ジェイコブはお風呂が嫌いだ。

 傷や痣にしみるから。お父さんの入れてくれるお風呂は、入ると皮膚が剥けるから。

 仕方がないから、彼はいつも学校のプールで体を洗っているんだ。

 だから僕が、少しでもお風呂が楽しくなるように古いドライヤーを譲ってあげたら、彼は喜んでそれを使ってくれた。

 でもしばらくして困ったことになったらしい。

 バスタブの中で、お父さんがスポンジになっちゃって外に出せないという。

 仕方がないから大人のひとたちに頼むことになった。

 ジェイコブとはそれいらい話していない。


 マイクは学校が嫌いだ。

 クラスメートがいじわるだから。大人のひとも敵だから。

 でも、家にばかりいるのは体に悪いし、僕は何か楽しいことはないかと考えて、マイクにたくさんCDをプレゼントした。

 とっても気持ちがハイになる音楽で、楽しい気持ちになれば彼も学校に行けるんじゃないかな。

 マイクのプレイヤーからは、いっつも僕がプレゼントした音楽が流れるようになった。

 そしてついにマイクは勇気を出して、学校に行くことができたんだ。

 だけどマイクはその日の放課後を待たずに、大人のひとに連れて行かれた。

 マイク、きみが使うならライフルよりショットガンのほうが効果があったと思うよ。



 みんなを眺めているのは楽しい。

 みんなは面白いように僕と友達の言うことを聞いてくれる。

 だけど大人のひとたちが、みんなをどこかにやってしまった。

 みんなは僕に相談してくれて、僕は友達と話し合ってそれに答えた。ただそれだけなのに。

 みんな元気にしてるかな。

 大人のひとたちが、いつかみんなに優しくなってくれるといいね。


 僕? 僕はずっとここにいるよ。

 相談があればいつでものるから、みんな遠慮しないで言ってきて。

 僕と友達はこっち側で、いつも楽しくみんなを見ているから。

学生のころ色彩の授業で、この内容で絵本を描きました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 短い中にいろいろなアイデアが詰まっていて、こわいし、面白かったです!!! ちょっと大人向けの絵本って感じもしますね! 味のある作品だと思います!!!
[一言]  なかなかに独特の雰囲気が出ている作品だと思います。わたしの読解不足か、全てを理解できたわけではないですが、その未消化な感じが、かえってホラーとして際立った気がいたします。絵本ですか。憂欝絵…
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