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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
東大陸・マジックギャザリング編
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魔法の宴会

 東大陸中央都市マジッギャザリングの夜空には数々の花火の花が散っていた。

 魔術都市の面々による花火魔法により、天は民衆の心を癒すようにその輪っかを広げる。

 サグオ運営のスタッフが大勢いる会場のメインステージに純白の法衣を着た白い髪の美少女が現れ、会場の人間達は一斉に見入る。


「……サイバーグランゾーンオンライン運営代表・ユリカです。私は、本日よりこの運営の方針を大きく変更しようと思います。開発者・鳴海修也に囚われない方向へと……」


 その演説にサグオの運営スタッフは聞き入る。

 ユリカは東大陸中央都市の研究をサグオ全体に広め、非人道的な魔法研究をするのは辞める事にしたのである。天才開発者であるシュウヤを超えるには、単純に運営として継続してサグオをプレイしてもらえるよう安定したサービスを提供する事で解決しようとしたのであった。

 発起人は奇抜な事をしなかればならないが、それを維持・発展させるには発起人とは違う才能が必要になってくる。それがユリカのサグオに対する新しい堅実な目的だった。

 シュウヤに対抗する事に今度のライトとの戦いで疑問を感じ出していた運営は開かれた研究をする事に大いに共感し、その白い法衣を纏う白髪の運営代表に拍手で答えた。

 そして宴会は再度の花火の打ち上げで仕切り直しのように再開され、ユリカは大勢の人の隙間を抜い会場の奥の方で運営スタッフに呆れられるほどの骨付き肉を食らいポーションを浴びるように飲むライトの元へたどり着く――が、


「うきゃ!?」


 バタリ! と先程までサイバーグランゾーンオンライン運営代表として凛々しくこれからの運営の方向性を語っていたユリカは倒れた。無論、足下には何も無くドジっ子属性がなす事である。骨付き肉の骨をユリカに突き出しライトは言う。


「おいおい、さっきまでカッコつけて演説してた奴が熊ちゃんパンツ丸出しで倒れてたらみんな引くぜ?」


「コラ! どこを見てるの!」


 ユリカは怒りながらキキョウとサクヤに助けられた。何故かライトは三人がかりでパンツを見た事を怒られる。

 何やかんやありつつ、四人は仲良く同じテーブルで中華を堪能する。熱々の酢豚やチャーハンを食べるライトは、やっとピリピリしなくなった女子三人に対し食事の力は偉大だなとしみじみ感じる。


「これで運営も良くなれば問題無いですわね。私も安心して勉強出来そうですわ」


「別に貴女がログインしなくてももう問題無いわよ。だから高校受験に専念しなさい。永遠にね」


「永遠になんてしませんわよ」


「むしろ二人共休んでいていいわよ。次の旅は私が魔法で援護するからね。運営パワーで」


『!』


 とキキョウとサクヤは運営の白き美少女に殺気を飛ばす。

 そして、ユリカは運営の答えはどうかをライトに聞いた。


「まぁ、それでいいんじゃね? 俺はあんま非人道的な事をしなければいいと思うだけだ。いくら仮想現実でもそれをプレイするのは人間だ。あんま酷い事をしてたら人から見放されサグオから少しづつ人が消えるからな」


 現実とゲームの本質は人間がプレイする以上、大きくは違わないというライトの考えがユリカの心の奥で染み渡る。そして、ペロリと赤い唇を舐めライトに内緒話をするから耳を貸してとのジェスチャーをする。


「おう……」


「……実は……」


「!?」


 すると、ユリカはライトの頬にキスをした。

 驚くライトは言葉を発しようとすると、目の前に赤い宝石が付いたネックレスが示された。

 キキョウとサクヤの殺気がマジでヤバイ……と感じるライトだが、目の前の赤い宝石のネックレスから不思議と意識が離れない。フフフと微笑むユリカは言う。


「これは理想の人物が具現化するというシュウヤが残したローズバッド。首に下げていれば本当に理想の人物が具現化して現れるかもよ」


 理想の人物が具現化するアクセサリー。

 イマジンフリーダム。

 それをライトは首から下げ呟く。


「シュウヤの置き土産か……俺の理想の人物……ねぇ」


 そしてユリカはメインステージの方へ戻って行き、キキョウとサクヤにある物を渡す為にメニュー画面を開きアイテム欄をいじる。

 出されたアイテムは金色に輝く刀の鍔と、同じく金色のイヤリング。それを渡された二人の少女は互いに言葉に詰まる。


『……』


 キキョウに光の鍔。

 サクヤに光のイヤリングが渡される。

 この二つのアイテムにより光の属性を使えるようになり、ライトが近くにいるとパワーが増す相乗効果あるものだった。


『ありがとう……』


 感謝の言葉を口にするが、お互いにその顔は冴えるものではなかった。

 先にキキョウが言う。


「同じタイミングで渡すなんて最低ですわ。よりによってあの女と一緒になんて!」


「はぁ!? それはこっちのセリフよドスケベ侍!」


「おいおい、ケンカは……」


『この原因を作ったのは貴方でしょ!?」



 運営スタッフ達も、サグオ最強の男も二人の女には勝てないか……とある意味可哀想な瞳を向けた。

 花火が上がる夜は更けていく――。

 そして、キキョウに呼び出された。

 しばらくログイン出来ないという事と、父の会社と取引先である鬼瓦ファミリーとの関係、サグオでの活躍が目立つと学業に取り込む姿が見せられないらしい。


「ゴメンなさいライト……」


「まぁ、いいさ。ゲームは娯楽。出来る時にログインすりゃいいよ相棒」


 ポンと肩を叩き、ライトはキキョウを抱きしめた。

 そして新しく花火が上がり、二人の唇は重なる。



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