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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
東大陸・マジックギャザリング編
48/51

休息から突撃へ

 魔力の穴に落とされてから海中に飛ばされたライトは、ボマーによって沈没させられた難破船に泳いで辿り着いた。

 海に閉ざされた島国となる東の中央都市において、ライトの潜伏出来る場所はここにしか存在しなかった。

 国の住民による魔法の連携でライトの居場所は特定される為にその目も、耳も、魔法も届かない海中にしか逃げ場は無かった。


「……流石にゲーム内の船だけあって沈没しても内部に空気もちゃんとあって助かるな。ここで体制を立て直すか」


 空気もある海中に沈む難破船内部でライトは休息する。船内を散策すると食料庫を発見した。そこには肉や魚が加工された缶詰や生野菜が積まれていた。


「うっし、ポーション飲んで腹ごしらえすっか」


 鍋に水を入れお湯を沸かしトウモロコシを鍋に入れた。

 ポリポリとキュウリを塩につけ食べながらポーションを飲み、鯖缶を平らげる。

 これから東の魔法大陸の王ユリカに辿り着き倒すまでの作戦を考える。

 マジックギャザリングの魔法結界を突破するには、並大抵の攻撃では突破出来ない。運営が張る最大の防御結界である為にサグオ最強のライトの攻撃でも侵入する穴を開けるには相当の時間がかかるだろう。その結界突破にかかる時間がライトが敵に囲まれる事になるのは言うまでもない。


「……ここにいつまでもとどまるわけにはいかねぇ。さて、どうしたもんかな」


 湯で上がったトウモロコシを口にすると同時に、ライトの感覚が戦闘モードに移行する。


「誰かいる――」


〈鷹の目〉で他人の存在を感知したライトは三つ先の室内に意識を集中する。

 トウモロコシをテーブルに置き、無音のスキルを使いつつ食堂を出る。シャワールームの方から聞こえる音にライトは敵がいる確信を持った。


(まさかこの難破船にもう敵がいるとはな。呑気にシャワーを浴びてるのは罠か否か……)


 シャワールームの音はただの罠である危険性も考えつつシャワールームのすぐ近くまで来て大きく息を吐いた。床で跳ねる熱いお湯の音がライトの心を膨張させ、全身の毛穴が開くように感覚が広く解放されていく。


(どうやら本当にシャワーを浴びてるようだ……? 二人? シャワールームに二人いる?)


 敵である以上、先手必勝で倒すのが吉である。

 ライトは無音のスキルで自分の存在を限りなく消しながら熱いシャワーが誰かの素肌をぬらすシャワールームへ足を進める。

 曇りガラスの奥にいる二人の存在をしっかりと見据えながらシャワールームの扉に手をかけた。


『……!?』


 そこにいたのは死神アバターのサクヤとニンジャアバターのニャムだった。

 サクヤは特に驚く様子も無く無言のままシャワーを浴び続けていた。

 驚くニャムは顔を隠し、身体は隠さない。


「……」


「はうわぁ! ハレンチ!」


 そのシャワールームの時が一瞬止まる中、バムッ! とニャムはそそくさと煙玉を床に叩きつけ逃げた。

 

「ぐおおっ! スゲー煙だ!」


 突如シャワールームに煙が立ち込める。

 その煙の中を駆け抜けニャムは消える。

 視界を殺す煙をかき分けていると、柔らかなお椀のような物体に触れた。


「……! す、すまん!」


 煙が晴れ目の前に現れたサクヤの胸に触れていたライトは驚き下がる。

 フフフ……と笑うサクヤは濡れる紫のツインテールの毛先を指で遊ばせ自分の胸を触り、微笑む。


「さぁ、ライト。乙女の肌を見た罪は償ってもらうわよ」


「……どう償えばいいんだ?」


 死神少女の妖艶な香りにライトは籠絡される。

 あまりにも堂々としているサクヤの裸体にもうどうにもならなくなり、半分口を開けたまま近づいて行く。頬に触れてくるサクヤに感じ、ライトの唇はそのまま淡い吐息が漏れる薄い唇に向かい――。


「エッチなのはサグオでは禁止ですわよ」


 唇と唇の間に日本刀が割って入る。

 興奮に身を委ねる二人の間を切り裂くように女侍・キキョウが現れた。

 




 突如、難破船のシャワールームに現れたキキョウはここに辿り着いた経緯を話す。

 キキョウの親の会社である桔村グループと関係のある鬼瓦ファミリーの特権を利用し、サグオ運営の友好の架け橋であるラブブリッジを使い東中央都市に到着したようだ。

 そして、キキョウはライトが現れてから起こった事件を住民から聞き、この沈没した難破船ならば誰にもバレずにこの中央都市に潜伏できるはずだと考えたのである。

 そのキキョウはサクヤと共にエッチな行為についてもめていた。

 まーた始まったよ……と思うライトは互いにスッキリするまでほっておく事にした。


「どうせアバターじゃない。減るもんでも垂れるもんでもないじゃない」


 ペロンとサクヤはキキョウの胸元を豊かな乳を無理矢理出した。


「ぶはっ!」


 ポーションを飲んでいたライトは違う意味でスッキリしてしまう。

 そんなこんなでもめていると、エピオンまでもがマジックギャザリングから弾き出され海中に逃げこの難破船に辿り着いた。

 キキョウ、サクヤ、ニャム、エピオンの四人の仲間を得たライトはマジックギャザリング攻略へ向けて動き出した。





 五人はマジックギャザリングに突入する作戦会議行っている。

 はずだったが、エピオンは自分がここに来るはめになった話を長々としていた。


「俺様はお前と仲間だと勘違いされ狙われていたんだ。とんだ誤解でこの海底まで逃げるはめになったのだ」


 ライトのおかけで狙わらていたエピオンは憮然とした態度で言う。


「ライトのおかげで父親と上手くいってるのに文句を言うなんてかっこ悪いですよ」


「……くっ!」


 ニャムの言葉でエピオンは黙る。

 キキョウは言った。


「でもこの五人で結界を破って突入しても、完全に結界そのものを破壊しない限りユリカの魔力の感知を殺ぐ事は出来ないわ」


「そうね。ユリカの膨大な魔力と魔法をどうにかしなければならない。結界を破り混乱させないと、またダミーの自分で戦い本体は何処かで高みの見物と洒落込まれるかもしれない」


 サクヤの言葉に全員が黙る。


『……』


 閉ざされた街からは脱出不可能。

 そして城の結界を突破しなければボスにも対面する事が出来ない――。

 一時間かけて作戦会議で決まった事はこの難破船を使い、結界をブチ破る事だった。

 偶然にもこの五人が集まった難破船というものが利用出来るなら、これほど突入にうってつけなものは無いとライトは判断した。


「……にしてもライト。お前は本当に正攻法の特攻しか知らんのだな」


「奇襲も正攻法かは知らんが、ユリカと一騎打ちをするにはこの作戦しか考えられねぇからな」


 五人は力を合わせ難破船がもう一度動くように整備した。

 そして動き出す難破船は浮上し、マジックギャザリングへと進行を始めた。

 船首に立つライトは叫ぶ。


「見てるかユリカ! ライトが東大陸の王を倒しに来たぜ!」


 無理矢理な特攻をする船首にいるライトは叫んだ。

 難破船がコンクリートの地面を削り、マジックギャザリングに向けて無謀な航海をしている。


『……!?』


 街の住民達は一瞬の沈黙の後、蜘蛛の子を散らすように絶叫しながら難破船の進撃ラインからそれるように逃げる。東の魔術王・ユリカは結界に難破船が接種するのを感じた。


「……何て事をしてくれるの?」


 瞳が大きく開かれると同時に、結界はジジジジジッ! という音と共に破られた。

 そのあり得ない光景を街の住民達は茫然と眺めている。

 そして、ズゴゴゴゴッ!と激震を生み出し、難破船は城の城門を砕いた所で停止した。

 同時に、難破船の大砲が火を吹いた。マジックギャザリングの一部はそれにより崩壊する。

 すぐさま、五人の戦士が船首から飛び降りた。

 ガッ! と拳を叩く金髪の少年に四人は言う。


『メイルスレイブは任せておけ!』


 パパパパッ! と現れるメイルスレイブには仲間が対応する。


「ここは任せたぜ!」


 ライトは再度マジックギャザリングへの突入を開始した。


「魔法には力だぜ」


 という城の頂上にいるユリカに向けてライトの笑みは加速する――。

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