ドラゴンロード攻略戦
邪竜の卵・ドラゴンエッグが眠るドラゴンロード攻略戦が始まる――。
エビナメディカルキャッスルの近くの森にイベントダンジョンが開放されたのであった。
その赤い岩壁に覆われた邪竜の卵・ドラゴンエッグが眠るダンジョンはドラゴン系のモンスターが中心に現れ、中堅以上のプレイヤーでなければ到底最深部まては到達出来ない難易度のダンジョンであった。
すでにイベントは開始されている為に多数のプレイヤーがこのドラゴンロードの何処かにあるドラゴンエッグを探し出し、邪竜復活阻止をして英雄になろうとしていた。エビナメディカルに所属しているライトは勝手に先走って侵入するわけにもいかず、新入りとして最後尾の部隊の仲間と共に進んでいた。
「あーあ」
とアクビをしながらダンジョンを進むライトはドラゴンが近くにいると仲間に伝える。
「どうやら敵だな。おそらくこの足音は小型竜ドラゴンバウだろ」
「えっ! ちょ、もう戦闘?」
「ま、魔法の詠唱を……」
「回復アイテムを出しておかないと!」
狼狽える仲間三人にライトは愛想を尽かし、
「よっ! そっ! はっ!」
トントントン! と仲間の三人に手刀をくらわし気絶させる。
「そんなんじゃこのダンジョンは進めないぞ。イベントに参加するならもう少しレベルを上げておけ。それにお前達は命懸けじゃねぇのに戦う覚悟もなさすぎだぜ」
そのままライトは仲間を安全地帯に放置し、ダンジョンの奥へと進む。
すると、三方向に分かれる道筋になっていた。
「とりあえず真っ直ぐ進むか。左右に曲がるのは時間の無駄な感じがするからな」
シュン! シュン! シュン! と現れるドラゴンバウはライトを見据えた。
ガスッ! と拳を叩くライトは突っ込んだ。
「ドラゴンのくせに犬みてぇな動きしてんじゃねー!」
すれ違い様に一撃叩きこむが硬質な皮膚は全力の一撃でないと大きなダメージは与えられる気がしなかった。
「前よりパワーアップしてんな。それに硬い!」
小型竜ドラゴンバウはパワーアップしており、現在の運営が隠れてバージョンアップをしているのを体感する事になった。ズガガガッ! と拳に力をこめて倒す。そして進むと、エビナメディカルのメンバーが苦戦している所に遭遇した。
「スピードドラゴンのドラゴンパンサーか。イベント中はコンテニューは出来ないぜ。お前達は下がってろ」
『任せた新入り!』
「誰が新入りだ! って確かに新入りか」
頭をかきながらエビナメディカルの仲間を下がらせ、一人でドラゴンパンサーと対峙する。
中々早いドラゴンパンサーの細く締まる足の動きを見ながらライトは呟く。
「こいつ、美食獣か?」
そう〈見切り〉のスキルか見極めていた。
小麦色に瞳を光らせるライトは叫ぶ
「お前の弱点はここだ!」
ズバッ! と上げた足の裏を殴る。
足が強いモンスターの弱点は足の裏という意外性もライトの見切りによって看破されていた。
簡単に倒したドラゴンパンサーの肉を焼いて食い出すライトは満腹感に満足し、仲間に言う。
「こいつの鍛え抜かれた足は絶品だな。美味いぜ」
『……』
「残りは食っていいぜ。こいつより強いモンスターはまだいるだろ。来たきゃ俺について来いよ」
「いや、やめておこう。俺達ではここまでが限界だ。後はエビナ王がドラゴンエッグを破壊するシーンの中継を外で待っていよう」
そしてライトは一人ドラゴンロードを進む。
すると、ホワワ……と展開する泡の空間に出た。
「よう泡姫。何だこの泡の群れは?」
「ドラゴンパンサーが百匹以上いて面倒なのよ。手伝いなさい」
「百か。多いな。それにドラゴンパンサーの肉は食い飽きたし、お前頑張れよ」
「ちょ! レディを一人にするの?」
「別にお前エビナメディカルのギルドメンバーじゃねぇし、時間かかるけど倒すのは余裕だろ?」
「確かにそうだけど……」
「んじゃ、そゆことで」
「ライト!」
シュン! と〈瞬歩〉のスキルで泡とドラゴンパンサーの群れをすり抜け、ここにいる百以上の敵を泡姫に任せ行く。エビナ王やその息子のエピオンがドラゴンロードの先を行く以上、遅れているライトはもたもたしてる場合じゃなかった事を思い出して急ぐ。
そして、このイベントダンジョンのボスである竜王・カオスドラゴンと遭遇した――。