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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
南大陸・メディカルキャッスル編
34/51

飛竜・バハムート

 飛竜・バハムートの背に乗ってライトの弟子であるアークとレイが来る。

 降りしきる雨に負けじと歌舞伎アバターのアークは必死に剣を飛竜の背中に突き立てていた。

 セーラー服のマジシャンであるレイの腕からロープが伸び、何故か一緒にいるシーフの青いバンダナがトレードマークのジンも飛び降りた。

 そしてバハムートは自分の巣に戻り子供達にエサをあげている。

 今回の目的であるミストフラワーが巣の周囲に生えているのを確認し、その隙にライトは三人に近寄る。


「一体何でお前達が飛竜の背中に乗ってやがるんだ? このプレーン山脈にはいなかったはずだぜ?」


 すると青いバンダナを締め直すジンが答える。


「俺はドラゴンキラーを探しに隣山のレーズン山脈に登ってたんだが、その山頂付近で飛竜に襲われてな。勢いあまって先に戦闘してたこの二人が飛竜の背中に乗ったから俺も乗っちまったわけよ」


 そのジンの発言にアークとレイは頷く。特に大きなダメージを受けてない二人を確認したライトは今まで何度かハメられて来た事を思い出しジンに言う。


「ドラゴンキラーか。そいつは俺も欲しい。てか、お前はたまに不幸な事が起きた方が人の邪魔にならなくていいだろ」


「ずいぶん酷い事を言うなライトさんよ?」


 飛竜の子供がエサを食べ終わりつつあるのを見たジンは勝てない強敵にたった二人で挑もうとした黒と白の少年少女を見て言う。


「とんでもない跳ねっ返りの弟子をもったなライト」


「ま、そうだな。って、どこへ行く?」


「ドラゴンキラーが無いならここに目的は無い。俺は退散するぜ」


 子供達を巣の奥に逃がし、瞳に獰猛性が宿るミストドラグーンを見たジンはライト達を囮にして自分は早々に下山を始めた。


「バハムートの巣の周囲のみに咲くミストフラワー。そうだな……あれが今回の任務の目的だ」


 戦闘は避けられないかと思うライトはアークとレイに声をかけようとするが、一つの自信を感じさせる声に阻まれた。それは緑の髪の今回の任務の相棒であるエピオン――。


「ようやくここまで来たと思いきや邪魔が入ったな。だが丁度いい。俺様が目的を果たすのは確実だからな」


「そうだな。このバハムートを倒せばてっとり早い。でも倒す必要が無いなら倒さなくていいだろ。奴も子供を守るのを優先して俺達に攻撃をしてこなかったんだ。知性はあるだろ」


「そうだな。だがどうでもいい」

 

 鼻で笑うエピオンはバハムートの足元にあるミストフラワーに目をやる。

 ミスト化し、敵の攻撃を無効化状態にしているバハムートは飛翔した。

 そしてライトは自分の弟子に問う。


「そういや、アークとレイはどうやってミスト化した飛竜の背中に乗ってやがったんだ?」


「魔法剣だよ」


 すぐにアークが答えた。

 魔法と武器を合わせたコンボだと一時的ではあるがミスト化してても効果があるらしい。

 そしてライトが返事をすると共に、今回の相棒が動く。


「魔法剣で背中を刺していたのか……エピオン!」


「貴様の浅はかな考えなど俺様はおみ通しだ」


 この場を乱すエピオンはすでに魔法の詠唱を始めていた。

 火炎竜・マグマドラグーンを放ち、地面を破壊してすべり台のような逃げ道を生み出した。

 そしてミストフラワーを手にすると自作すべり台に素早く乗った。


「俺様はミストフラワーを回収しに来ただけだ。後は頑張れよ相棒」


「待てエピオン! あの野郎!」


 シーフのジンと今回の相棒であるエピオンに逃げる囮にされたライトは攻撃を開始するバハムートに対抗せざるをえない。ボボボボッ! と口からフレアシャイニングを放つ。マグマ以上に強力な火玉であるそれはライトにしか弾く事も出来ない為、弟子の前に立ち拳で弾く。


「フレアシャイニングをくらったらお前達は一発で終わりだ! 動き続けろ!」


『はい!』


 三人は連携して地面を溶かすフレアシャイニングを回避しつつ、バハムートの降下時を狙い攻撃する。

 時折、霧になるミストドラグーンを倒すには実体化を狙うしかない。


『おおおおおおおっ――』


 アークとレイの同時攻撃が炸裂するが、その攻撃はまるで決め手にならない。

 しかし、眉を潜めるライトは呟く。


「バハムートのミスト化が始まらない?」


 水蒸気のように発生する霧のミストは飛竜の実体化を行う事が出来ずにいた。グアッ? グアッ……と呻き声を上げるように声を発する飛竜をライトの光輝く目が見据えた。


「……」


 ここでライトの〈見切り〉スキルが全てを察した。


(どうやらこいつはほぼ同時に身体のどこかにダメージを受けるとミスト化は一定時間出来なくなるようだな。そこが、この飛竜を倒す最大のチャンス……)


 同時に行けば勝てるはすだというジンの言葉はこういう事だったのかと思った。そして、疲労困憊のアークとレイの間に入り肩に手をかけ励ますように言う。


「二人共、危険を顧みずよく頑張った。ここで最後の大詰めだ。同時にタイミング良く攻撃するとバハムートの実体化が続く。レイの魔法攻撃から俺とアークがしとめるぜ」


『了解!』


 この作戦はレイの魔法攻撃で一瞬でも動きを止めなければ成功しない作戦である事をあえてライトは言わなかった。無駄なプレッシャーを与えない――というのもあったが、すでにレイもアークも強敵に挑める覚悟のある戦士へと成長している為に言う必要も無かった。

 レイならば飛竜を驚かせる魔法を使えるはずであった。

 ライトとアークは飛竜からレイを忘れさせる為に猛攻を仕掛ける。その間、魔法の詠唱に集中するレイは自身最大の魔法を使おうとしていた。


「電光石火の雷神。その叡智と暴悪を我に貸したまえ……我は……」


 レイの白い髪は雷の粒子を浴び、更に白く輝いて行く。

 そして、ライトとアークがバッ! とバハムートから離れると蒼白い電撃の群れが喚いた。


「ギガボルト・ダーザイン!」


 ズババババ! とレイの電撃魔法でバハムートの動きは一瞬止まる。それを見たライトは間髪入れず叫んだ。


「歌舞けよアーク!」


「言われなくてもわかってらぁ!」


 スキルゲージを使い果たしたレイも言う。


「一瞬だけどお願い――」


 始末組の二人は堂々とした口調で言った。


『一瞬あれば十分だ!』


 バッ! とライトは光のように輝き飛び上がった。飛竜の瞳は金髪の少年を見据え口からブリザードハリケーンを放とうとすると、歌舞伎役者のような出で立ちの黒髪の少年の取り出した竜の鱗が持ち手にあるグリーンの剣に驚く。

 それが、飛竜の全てを終わらせる結果となった。

 シュパァ! と上空で黄色い閃光が発し、地上では黒い獅子が荒れ狂って暴発した。


『うおおおおおおおーーーっ!』


 上空と真下からの同時攻撃でミストフラワーを守るバハムートを倒した。


「最後の一撃は凄かったな。スタースキルの効果か武器のおかげか?」


「あ、あぁ……おそらくスタースキルが良かったんじゃないかな? ははっ!」


 頭をかくアークはすでにアイテム欄にしまう最後に使った竜の鱗の柄の剣を見せずに言った。

 倒れるバハムートに子供の竜がよちよちと歩きながら駆け寄る。

 アイテムでスキルゲージを回復させ魔法を使おうとするレイを制するライトは言う。


「殺す必要は無いだろ。俺達はただミストフラワーを取りに来ただけだからな」


 そして、戦闘が終わるといつの間にか雨が上がっていた。



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