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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
南大陸・メディカルキャッスル編
33/51

誘惑の花

 崖の下に落下したエピオンとはぐれ、プレーン山脈の洞窟の中へ入るライトは雨で濡れたエビナメディカルのジャケットを脱いで乾かしていた。薄暗い洞窟内部には赤いバラのような花が大量に生えている。花に興味が無いライトは特に気にもせず外の雨の音にイラついている。


「……山の天候変化はやってられねぇな。全身ズブ濡れだぜ……ん? 何か甘い香りがするな」


 ライトは甘い花の香りで少し眠気が起こり、頭を振るい息を吐く。

 すると、目の前には白い着物に赤い袴。長く艶のあるポニーテールをなびかせる美少女剣士がそこにいた。唖然とするライトは問う。


「キキョウ……何でここに?」


「貴方が望んだから現れたのですわよ」


「……」


 突如、当たり前のように現れるキキョウを怪しみながらも、ライトはキキョウと話す。


「この険しい山をよく一人で来たもんだ。面倒なモンスターもたくさんいただろ。特にヤマザルゴッツは複数で来るからウザいぜ」


「まぁね。でも上手くかわして来たからダメージは受けて無いですわよ」


「そうか。俺はエビナメディカルの任務でミストフラワーを探してる。お前の目的は何だ?」


「私の目的は……」


「――!」


 頬を染め、うつむき加減のキキョウはライトに密着した。マジかよ! と思いつつドキドキするライトはゲームのアバターであるキキョウの身体のリアルな体温に動揺する。


(キキョウの奴……一体どうしたんだ? 受験勉強で疲れてんのか?)


 そう思うライトは更に意外な行動に出るキキョウに興奮のボルテージを高めて行く。


「この洞窟暑いですわね……」


 突如現れたキキョウはこの寒い洞窟の中で着物を脱ぎ出した。白く艶やかな肌が見え、流石にこれはマズイ状況になるんじゃないかと直感で悟るライトは下着姿になるポニーテールの少女に忠告するように言う。


「おい、この洞窟は山の中の洞窟だし寒い……。いや、お前の望むようにしよう」


「……ありがとう」


 息を呑むライトはさっきまでの興奮はどこへ行ったのか冷静に下着姿のキキョウを抱きしめた。豊かな胸の膨らみと、細いウエストのラインがライトの雄を目覚めさせこの洞窟内で押し倒してやりたい衝動に駆られる。


「……キキョウ。するぞ」


「うん……」


 スッ……とライトはキキョウの左頬に手を当て瞳を閉じ、唇を目の前の少年に委ねた少女と重ね合う――。


「ぐっ!」


 何故か、ライトは目の前のキキョウの腹に一撃を浴びせた。


「グギギ! ……な、何をするの?」


「グギギってモンスター的な言葉が出ちまってるぜ。無駄な演技ご苦労様さん。お前の中途半端な魔法にまんまと騙される所だったぜ」


 キキョウは普段はゲームでもリアルでも下着をつけていない事を知っており、目の前のキキョウがモンスターによる幻影だと見抜いたのである。

 目の前には標的に幻を見せる花・パニックフラワーが大口を開けてライトを捕食しようとしていた。

 バシッ! という音が弾け、パニックフラワーは消滅する。

 フゥーと溜息をつくライトは自分の油断を反省しつつ呟く。


「興奮してると、見切りのスキルも役に立たないな。危ない所だったぜ」


 そして洞窟の奥にはパニックフラワーが大量にライトを待ち構えていた。

 冷静になるライトにはすでに幻影が完全に通じない。

 そのモンスターを無視しつつ真上を見上げると雨が降る暗い天が見え、こいつはいい……と口元を綻ばせた。


「丁度いい。このパニックフラワーを登って頂上を目指すか」


 ズガガガガガガッ! と壁に生えるパニックフラワーを蹴散らしながら真上の山頂付近へショートカットする為に登る。最後のパニックフラワーを倒し、とうとう山頂付近に辿り着いた。

 その暗い天を切り裂くような飛竜の鳴き声がライトの耳に聞こえた。


「これはさっきの飛竜の鳴き声……まさか向こうから現れるとは好都合だな。エピオン探しの前にミストフラワーを手に入れちまうのがいいかもしれん」


 すると、そこに飛竜・バハムートが翼を大いに広げ現れた。

 青い瞳に清らかな清流のような身体の色。

 天空を飛翔する姿は正に竜の中の王と呼べる存在であった。


「? あれ? あの背中にいる二人は……」


 ふとライトはバハムートの背中にへばりつく二人の男女を見た。

 黒髪の歌舞伎役者アバターの少年と、純白のセーラー服の白髪の少女――弟子であるアークとレイがバハムートの背中にいるのである。


「何やってんだあの二人は……?」


 サグオ初心者の二人が異常な無茶をする姿を見て、師匠であるライトは怖いもの知らずの初心を思い出し二人に感謝し微笑んだ。





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