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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
南大陸・メディカルキャッスル編
32/51

暗雲

「隣の山も見えるはずたが、天気が悪くて見えないな」


 崖の前に立つライトは目をこらし雲が深くなる隣山を見据える。

 隣山であるレーズン山脈はこのプレーン山脈と対を成す山であった。

 天候が悪くなる現状では隣山など暗雲で見えないが、そこにも何かあるかもしれないとエピオンは思う。


「隣山にも何かアイテムがあるかもな。だが、今はイベントが始まるダンジョンをいち早く見つけるのが大事だ」


「それは他のメンバーがやってんだろ?」


「そうだ。我々エビナメディカルは確実にこの南大陸で起こるイベントを制覇するつもりだからな」


 現在、エビナメディカルは南大陸のフィールドで始まる邪竜復活阻止のイベントダンジョンがどこかを探している。

 絶対に一番にイベントダンジョンを見つけ、そのダンジョンの奥に眠るドラゴンエッグを破壊し邪竜の復活を阻止せねばらない。それこそが、エビナメディカルがサグオで他の大陸に勝る証拠を生み出すものであった。

 その崖で、エピオンは一つの青い薬草を見つけた。


「これは親父と初めて見つけたブルーパールの薬草だ」


 ブルーパールは打ち身・骨折に効能がある薬草で、鍋で煮ると芳醇なエキスが出る薬草であった。

 そのスープは青いエメラルドと呼ばれる希少なスープでもある。

 エピオンはブルーパールを回収した。


「これで親父を喜ばす料理を……」


「本当に戦い以外にもやれる事があるんだな……やっぱお前はリアルの人間だよ。サグオじゃ王にはなれん」


「お前がアホな事を言うから、天が機嫌を損ねたぞ」


 すると、雨がポツポツ……と降り出して来た。

 ヤマザルゴッツが唱えたウェザーリポートの効果がここに来て現れたのである。


「あのサルが唱えた天候系魔法の効果が現れたか。最悪だな……山の天候は変わりやすいが、無理矢理変えられるとは……」


 サアァァァ……と無情な雨が降り出す。

 最後のヤマザルゴッツの唱えたこの魔法効果により、当分この雨は止みそうにない。

 二人は天を見上げ、黒い雲に支配される空に瞳を呑まれる。

 突如、天を切り裂く野性的な咆哮が聞こえた。


『――!』


 ライトとエピオンは上空を青い飛竜が飛んで行くのを見た。その飛竜は身体からミストを散らしながら山頂の方へ飛んで行った。おそらく、そこに飛竜の巣があるのだろう。


 ライトの〈見切り〉のスキルはそれをしっかりと認識していた。


「あの飛竜にミストの粒子が見えたとなると、飛竜の巣にミストフラワーがあるのかもな」


「おい、あの飛竜こっちに接近してきてないか?」


「確かに方向転換しやがったな――ぐっ!」


 バサバサッ! と青い飛竜はその両翼をはためかせ、激しい風と雨粒が二人を襲う。同時に繰り返される風圧で土砂崩れに巻き込まれた。

 泥まみれになるライトは片目で上空の悪魔を見据えながらも目の前に迫る土の津波に向かって叫ぶ。


「土砂崩れかよ!」


 ズガガガガッ! と流れる土砂崩れにエピオンは呑まれてしまう。すかさずライトは奈落の底に流されるエピオンを助ける為に場所を移動し、手を伸ばした。


「エピオンっ!」


「……ライト? 手を離していい。俺様はほっておけ! このままじゃお前の腕が持たないぞ!」


「相棒をほっておけるかよ! ――!」


 グキッ……と嫌な音がし、左腕にヒビが入る。

 絶対に手を離しそうにない金髪の男に、エピオンは動揺した。


「お前は魔法使いじゃない。腕が折れたら体術は出来ないだろ。もうお前はログアウトしろ!」


「馬鹿野郎! 最強を目指す俺はこの命が無くなるまでログアウト出来ないんだよ!」


「……シュウヤに勝ってもまだデスゲームを続けてたのか。分からず屋が。ならさっさと引き上げろ」


「おう、任せとけ」


 その瞬間、青い飛竜の爪がライトの左腕を砕いた。


『……!』


 絶望の音が二人の鼓膜を刺激し、左腕が折れたライトは風圧で背後に転がった。

 そして二人の手は離れ、エピオンは暗闇の奈落に落ちる。

 一人残るライトも新たに発生した土砂崩れに巻き込まれ、どこかへ流されて行った。

 空の天気は回復の傾向を見せず、青い稲妻が山頂を切り裂くように鳴り響いていた。


 




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