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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
南大陸・メディカルキャッスル編
31/51

変わる気持ちと天気

 モコモコ! モコモコ! と天然パーマをいじり魔法を唱える山猿モンスター・ヤマザルゴッツとの戦闘が開始された。

 ヤマザルゴッツは一様に魔法の詠唱をするように唸り出した。

 シュパ! と冷気が空気中に弾け、冷凍魔法である氷の氷柱・ブリザードスプラッシュがズババッ! と地面に刺さる。それを回避するライトは背後のエピオンも回避した事を確認し言う。


「ブリザードスプラッシュか。山猿にしちゃ上等な魔法だぜ」


「次々と来るぞ。面倒だな」


 次々とヤマザルゴッツから冷凍魔法であるブリザードスプラッシュが放たれる。

 寒さに強いヤマザルゴッツの得意魔法でもあり、この魔法で牽制しつつ他のヤマザルゴッツが背後に回り敵を囲い込むように倒すのが必勝パターンだった。

 チラッと背後のエピオンと自分達を取り囲もうと動き出したヤマザルゴッツを見たライトは正面に迫る氷の氷柱の群れを見据え――。


「おら倍返しだ!」


 放たれた氷の氷柱は全て弾き返された。そして敵の二人を取り囲もうとしていた残りのヤマザルゴッツはエピオンのマグマドラグーンで三匹が燃え尽きた。


「どこが倍返しだ。二匹しかしとめられてないじゃないか。カウンターが得意ならもっと狙いすませよ」


「お前こそお得意の火炎魔法を使った割には三匹じゃねーか。どっこいどっこいだろ?」


「貴様は数の計算も出来んのか」


 そんな口喧嘩をしている間に統率力の取れているヤマザルゴッツは動く。前方の群れは前面に氷の壁を生み出し、後衛の群れは魔法の詠唱を唸りながらしている。邪魔なアイスシールドの壁を破壊し、一気に蹴散らしてやろうというライトはライトニングドーンを使う。


「くらえ! ライトニング――ぐはっ!」


 ババババッ! とスタースキルを発動させるライトの背中にフレアボムの火球が激突する。背中の熱をこらえるライトは怒り、


「おい、邪魔すんな!」


「俺様の邪魔をしてんのは貴様だライト。軽く炎で溶かしてから一気に砕いてやろうとしたのを邪魔しやがって」


「んだとテメー!」


「何だこの野郎!」


 互いの連携も無いまま戦闘をしている二人は本来苦戦するはずの無い敵に苦戦している。元々相性も良くなく、敵でもあり任務という名目で強制的に組まされている即席の相棒ではソロで戦った方が効率がいい状態になっていた。


『!』


 そして、魔力の胎動を感じた二人は巨大な氷の壁を見上げた。

 ヤマザルゴッツ達はビックブリザードマウンテンでこの二人を潰してしまおうという作戦らしい。


『うおおおおおお――』


 ズゴウンッ……! と噛み合わないエビナメディカルの即席相棒の二人はビックブリザードマウンテンに押し潰された。崩壊する巨大な氷の壁は空間に微細なダイヤモンドダストのような氷の散りを舞い上げる。

 ウキキ! ウキキ! とヤマザルゴッツ達は勝利のダンスを始める。

 クルクルと回転し、バック転なども行った。

 苦戦はしたものの、勝利をした事によりヤマザルゴッツ達は死んだ仲間を弔うように踊りまくる。

 一直線に並ぶと渦を巻くように先頭のヤマザルゴッツから順々に回転し、イカしたパフォーマンスが始まる。


「ウキキ! ウキキ! ウキキ……!?」


 瞬間、ヤマザルゴッツのダンスが止まり鳴き声が悲鳴に変わった。

 金髪と緑の髪の少年二人が、不機嫌そうな顔でダイヤモンドダストのような氷の舞い散る中を歩いて来た。

 鼻をこするライトは言う。


「……あー、くそイラつくわ。そのダンスにもイラつくわ。お前達はアイドルかこの野郎」


「同感だ。俺様もその自分達は勝ちました! って主張するダンスは不愉快だぜ」


 フゥー? と口笛を吹き、ライトは呟く。


「珍しく気が合うな」


「今回だけだろ?」


 無駄にダメージを受けた事で二人の気持ちは一つになった。

 エピオンは両手に魔力を集中しだし、ガッ! と両拳を叩くライトは気合いを入れて言う。


「一気に片付けるぜ!」


 次の瞬間――ライトはヤマザルゴッツの群れの中央にいた。


『……!』


「ウキキ! ウキキ! って言わねーのかよ!」


 ズガガガガッ! とライトの拳が閃光のように炸裂し五体が散った。すぐさまライトの無防備な背中を三体のヤマザルゴッツが鋭利な爪を立てて襲いかかる。


「ウキ……キ……」


「俺様を忘れてもらっては困るぜ。何せ俺様は次世代の王なんだからな」


 火炎魔法で生み出した炎の剣・フレイムソードで三体を鮮やかに倒した。そして、残るヤマザルゴッツの群れは体制を立て直す暇も無く総崩れになり出した。


「……っとぉ! おいエピオン! 後はお前の方の一体だけだぞ」


「わかってる……魔法を使うつもりだな。ライト、奴の一撃を回避してからしとめる」


 二人は最後に残るヤマザルゴッツの魔法を待ち、カウンターに備えた。


『……!』


 しかし、ヤマザルゴッツが使った魔法は攻撃魔法ではなかった。


「天候魔法か!」


 敵が使用したのは天候を変えてしまう魔法で、現在は晴れの為に雨か雪になる可能性が高い。しかも山という環境は天気が変わりやすく、このウェザーリポートという魔法が発動するには有利な条件にあった。

 そしてエピオンは最後のヤマザルゴッツを倒した。その間、ライトは魔法がかかるプレーン山脈の空を見上げる。


「チッ……もう黒い雲が出始めたな」


 すでに雨雲が生まれ出していた。

 ゴロゴロ……と雷が鳴り出し、明らかにこれから雨が降る気配を山にいる全ての存在に告知するよう音を発していた。


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