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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
南大陸・メディカルキャッスル編
27/51

水中からの刺客

 この一分近くの戦闘でアークとレイはまずは一人倒す事にした。

 そのターゲットは死神仮面アバターの紫式部。

 レイは小回りのきく鬼仮面をするレディサムライよりも紫式部を先にしとめようとアークに耳打ちする。

 レイは電撃魔法で敵の二人を離し、アークの剣にも電撃を纏わせる。

 すかさずアークは盾を突き出し、スキル〈啖呵たんかを切る〉を使用しつつ気迫で突っ込んだ。


(デスサイズは攻撃力が高い――けど、その振り抜き後のスキは大きいぜ)


 そこをサンダーソードでアークは狙い、大鎌を振りぬいて事後硬直する紫式部を狙う。

 刹那の時が両者の感情を高める――が、紫式部は薄く微笑む。


「残念、無念。大きい武器を使う以上そんな攻撃をしてくる人間は山ほどいるわ。対策が無いとでも思った? それにそのスキルは弱すぎる相手にしか通じないわよ」


 ぐるっ! と一回転する紫式部は回避行動と攻撃行動を同時に取る。無防備なアークの背中に死神の鎌の切っ先が迫った。しかし、レイは魔法詠唱に集中して動かない。


「あんがとよレイ。俺を信用じゃなく信頼してくれたな――」


 まるで紫式部の攻撃を読んでいたかのようなアークは左手の盾を背後に突き出していた。


「まさか! 私の行動を先読みしたの? 素人の貴方が!?」


「へっ、俺だっていつまでも弱くないんだよ! それと、剣だけが魔法を帯びてるんじゃねぇ!」


 サンダースパークの効果がある電撃の盾が紫式部に直撃した。

 そして詠唱が終わり、魔法を放つレイは大きく手を上げた。


「そうはさせないわよ――」


 その背後には悪鬼のようなレディサムライが日本刀を振りかざしている。

 キインッ! と鋭い音が空間に伝わりライトは驚いた顔をした。

 もう余力の無いアークがレディサムライの一撃を防いだのである。


「俺の相棒の背中は俺が守る!」


 気迫で勝るアークはレディサムライに猛攻する。


「くっ! こいつ!」


 その剣はレディサムライの赤い着物の奥にある豊かな胸を突いた。

 ピカカッ! と光が発し、アークは満身創痍ながらも笑う。


「俺と相棒の一撃だ。存分に味わえ」


「きゃああああ!」


 そして激しい稲妻がレディサムライを襲った。

 ほう……と言った顔でライトは善戦する二人を見る。


「だいぶ成長したな……この調子なら邪竜復活阻止作戦に参加出来るレベルまで到達する」


 そしてボスステージの戦局は終盤を迎えた。

 〈鷹の目〉のスキルでライトは釣りをしつつも戦いを観察している。

 しかし、目の前の小川の中まではその範囲は及んではいない。


「……何だ? 吸い込まれる――」


 餌の無い釣りをするライトはスゥゥゥ……と小川に吸い込まれた。





 小川に吸い込まれたライトは近くの海まで流されていた。

 静かな海の遠くに、青い鮫のようなフォルムのアバターがゆらめいて見えた。

 サメアバターの二人組がライトを捉えて動き出す。


(……空気も無いのにやってくれるぜ。誰の罠だ?)


 こんな余興は知らないぞ? と思うライトは、瞬時に表情が戦闘モードになる。

 水中を進むライトは、水深を下げつつ敵のいる海へ出る方角へ向かう。

 その最中〈鷹の目〉を全快にし索敵を行う。

 すると、その敵は過去に対戦した事のある敵であった。


(……海の珍獣・阿吽あうん兄弟か。嫌な奴に出会ったもんだな)


 思うライトは、目の前の海の青さに見とれる。


(ふへ? 全裸の女?)


 目の前にはソープの森の主である泡姫が泳いでいた。というより泡に包まれ流れていた。

 微笑みながらライトを見つめる妖艶な泡姫に阿吽兄弟は嫉妬した。

 そして、その兄弟は遠距離からライトに魚雷を叩き込んだ。

 水中を苦手とするライトは防御するが直撃には変わりなく、ダメージを受けて少ない肺の空気を吐きつつもがく。ポワ……ポワ……とただ散歩をしてるだけの泡姫の姿を見たライトは瞬時にこの状況に対応する策が浮かんだ。


(……そうだ! 泡だ!)



 フルに溜まったスキルゲージを確認し、両手を合わせ念じた。


(ララライララライ・ララライラ。ララライララライ・ララライラ……)


 それっぽいがよくわからない呪文を唱え、スキルゲージを全て使い、新たなスキル〈泡の兜〉を生み出す。これにより、ライトは一定時間ではあるが呼吸と会話などが普通に出来るようになった。

 驚く阿吽兄弟は次の魚雷を準備する。

 ケッ! と思うライトは上の二人の心配もしつつ目の前の状況をどうするか悩む。


「まだ水に慣れたばっかなのに、水中専門の相手にどう戦うか……」


「水中で自在に動ければ、貴方は真の意味で最強に近づくでしょう。また会えるのを楽しみにしてますわアワワ……」


 スゥゥ……と加速した泡姫は微かな泡を立てながら水中の奥に姿を消した。

 それを追おうと身体を加速させようとするが、上手くいかない。


「アークとレイの試練のはずだったが、俺にもいい試練だぜ……」


 放たれた魚雷をライトニングカウンターで破壊し、堂々と宣言する。


「蹴散らしてやるぜ! この俺は最強……あ、屁が出る」


『や、やめろライト!』


 近距離に来た阿吽兄弟は懇願するがもうすでに遅かった。


「無理に決まってるだろ!」


 ぷぅ……とこかれた屁の泡が泡の兜に充満し、ライトはフラフラになる。

 同時に、海の匂いも嗅ぐ事が出来る阿吽兄弟もフラフラになった。


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