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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
南大陸・メディカルキャッスル編
26/51

紫式部とレディサムライ

 ムラサキダンジョンの奥へ向かうアークとレイ。

 その後をライトは外せないホブゴブリンの盾と格闘しながら歩く。


「……まだ外せないのかよ? てか俺、二刀流で行きたいんだけど? やっぱ男のロマンは二刀流だよな」


 ふいにアークは振り返り言う。

 そのアークに対し、ライトは容赦なく否定する。


「お前は盾と剣のコンボが向いてる。それに盾は防御だけ出来るわけじゃないぜ? 攻撃にだって使えるし、そういう盾もサグオ内にはある。まぁ、それを使いこなすには二刀流以上の努力が必要だけどな」


 攻撃の意識に集中し続けられる二刀流と、盾を持った状態の剣士ではどうしても防御の意識に囚われてしまい、一瞬の判断力が鈍る。その刹那の思考停止が強者とぶつかる上では死を招く確率が上がる。その為、剣と盾を同時に使う英雄や豪傑はあまり出現していなかった。

 白い髪を揺らし歩くセーラー服姿のレイの瞳は二人の会話に聞き入りながらも前方への警戒を怠らない。そして、ライトはアークの成長を促す為に確信的な一言を言った。


「お前がその英雄になれ」


「俺が……英雄に?」


 ゴクリ……と唾を飲み込むアークは呟く。

 追い討ちをかけるように金髪の師匠は言う。


「オンリーワンになりたいんだろ?」


 男の会話にレイは口を出さない。

 これは相棒である男が自分できめなくてはならない男の決断だからである。

 そしてライトは高き山のような存在感で言う。


「今、決めろ」


「……」


 サグオ最強の男の凄みにアークは息が止まりそうである。

 しかし、ここを乗り越えなければ病気である現実の自分の身体にも負けそうな気がしてならない。


(……)


 震える手を抑えつけ、相棒であるレイを見つめ頷くアークは大きく息を吐き、バッ! と歌舞伎役者のように睨みをきかせたアークは叫んだ。


「なってやるさ。最強の剣と盾のソールドキングにな!」


「ま、肩肘張らずに行けよ」


 そして、肩透かしをくらいながらもライトの助言を得つつ初心者二人はボスステージにたどり着いた。





 清濁含む小川が流れる鍾乳洞――。

 そのボスステージには紫の着物を着た死神の仮面をつける紫式部のような少女と、鬼の仮面をつける赤い羽織袴姿の少女がいた。

 紫式部とレディサムライ。

 このダンジョンのボスである二人の少女は敵の襲来を喜ぶかのように殺気を解放した。


 そして剣と盾を構えるアークは言う。


「……え? あれモンスターじゃなくね?」


「低ランクにしては珍しい人間タイプだな。まー、相当強いだろうが手加減してくれるから大丈夫だ」


「え? 手加減? うわっ!?」


 低ランクのダンジョンにしては珍しく人間タイプのボスモンスターが現れた。

 何か都合が悪いような顔をするライトは、そそくさと後方へ下がりアイテム欄からポーションを取り出しゴクゴクと飲みながら高見の見物と洒落込む。

 魔法を使う余裕すら無く吹き飛ばされダメージを受けるレイは後ろを振り向き言う。


「ポーション下さいよ」


「ダメだ。これは俺の命の水だからな」


「ポーションは回復アイテムで飲料水ではないでしょう?」


「うっせえな。俺にとっては命の水なんだよ。目の前に集中しないと死ぬぜ」


 先に本来のボスを倒して偽ボスとして君臨しているサクヤとキキョウの二人はライトの依頼を受けてこのダンジョンのボスを演じていた。アークとレイは無論そんな事は知らないが、倒さなければならないボスである事に変わりは無い。

 ふと、アークは海老名病院にいる紫のツインテールの年上の少女を思い出す。


「あれ? あの死神女、紫式部に似てね?」


「確かに……似てる。似てるわね」


 そんな言葉を発する二人にライトは焦りながら言う。


「紫式部に似てる? 似てるのはアバターのせいだろ? さっさと戦え!」


『……はい!』


「ドラゴンエッグ争奪戦まで残り短いぞ。ここでレベル上げとかねぇと速攻でやられてモニター観戦になっちまうぜ。おら、一気に始末しちまえよ! とりあえず今は二人で戦っておけ。ヤバくなったと俺が判断したら援護するぜ。んじゃ、俺は釣りと洒落込むわ」


「って針の先に餌も無いのに釣りなのか!?」


「アーク君。来るわよ!」


「うはっ! やるしかねーな!」


 明らかに低ランクのダンジョンのボスではない事をおかしく思うアークとレイだが、目の前のボス二人を相手にしてる状況でそうも言ってる場合じゃ無かった。第一にこのダンジョン攻略はサグオ最強と呼ばれるライトが護衛に付いてくれている戦いである。

 ここで成長せねばイベント・邪竜復活阻止作戦に参加も出来ず、ライトが自分達を成長させてくれると言ってくれた思いも無駄になる。


『……』


 アークとレイは顔を合わせ、目の前の強敵二人を倒す覚悟を決めた。

 それを見たライトは頷く。


(いい覚悟だ。いくら仮想現実とはいえ自分より強い相手と戦うには相当の覚悟がいる。この二人はその点では問題無いな。後はその嘘っぱちの虚勢を全身全霊でぶつけられ続けるかどうかだ)


 やってやれ! とライトは二人の覚悟を後押しするように叫んだ。

 動く黒と白の二人は水を得た魚のように勢いよく加速する――。

 二人は死神の大鎌を振りかぶる紫式部と居合いの構えを見せるレディサムライとの戦いに挑む。

 サグオ初心者ペアと紫式部・レディサムライとの戦いは激化する――。

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