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サイバーグランゾーンオンライン  作者: 鬼京雅
ブラックマトリクス編
20/51

天才開発者・鳴海修也との決戦2

 二人の激闘は協会全体に振動を与え、地鳴りさえ起こすほどの状態であった。

 少しずつ……少しずつライトはシュウヤの〈未来予知〉スキルを超え出していた。

 そして〈見切り〉のスキルを壊された事により危機感が増大し、目の前の事態に対応しようという気持ちがスロウドロップのスロー効果を乗り越えるようになっている。

 かつて初期アバターと素手でこのサイバーグランゾーンオンラインを攻略していた少年は久しぶりの異常な緊張感から新たな進化を始めていた。シュウヤが壊したシステムが皮肉にもライト自身がシステムを超えるきっかけを作り出していたのである。


「シュウヤーーー!」


 今のライトはスロウドロップのスロー効果をライトニングドーンの推進力でカバーして対抗していた。

 明らかに進化するライトにシュウヤは驚きを隠しえない。

 更にスピードを上げ、左手で背中にもライトニングドーンを叩き込み、ライトはスロウドロップのスキル効果を無効化するほどのスピードを得た――。


「ぐはぁ!」


 ガスッ! とシュウヤは異常な一撃で殴られた。


「まさかこれほど早く進化するとは……君の危機感は進化に必要なスパイスであるようだね。だけどここで終わるよ」


 シュウヤは突如一つのゲートを生み出した。

 そこは自分のアジトに繋がるワープゲートだった。

 それを察するライトはこれからシュウヤのしようとしている事に絶句する。

 フハハハハッ! と笑うシュウヤは叫んだ。


「この空間ごと消えるがいい」


 この聖堂教会を消し去り、ライトを強制的にこのサイバーグランゾーンオンラインから消滅させようという作戦にシュウヤは出た。

 すでにワープゲートに半身を入れている悪魔の男に、思考の硬直で反応の遅れたライトは伸ばす手が届かない。


 死――。


 という感覚が全身を駆け巡り、ライトの意識は真っ白になる。


 今までの人生が走馬灯として頭の中を駆け巡る。


 両親が不在がちで生活は満たされていても、心は死んでいた幼少時代。

 それを変えたのが対戦格闘ゲーム・スターロボット大合戦だった。

 スタロボにのめり込むライトは全国大会でも優勝し、その名を全国に馳せた。

 しかし、スタロボは対戦格闘ゲームブームの下火と共に姿を消し、次世代ゲームの中心となる体感ゲームに人々の感心は移った。


(そこで俺はスタロボ終焉のショックを癒すようにベーターテスターの依頼を受けた。そしてサクヤと出会った……)


 スタロボはシミレーションゲームとして存続し、確実な売り上げを出してはいるがライトの好む対戦格闘ゲームでは無い為に手を出す事は無かった。そしてVRMMOを開発する鳴海修也からサイバーグランゾーンオンラインのベーターテスターの依頼を受け、その内部でサクヤを相棒とし光と闇の二人はサグオの正式リリースまでを作り出すプレイヤーとして活躍した。


 (シュウヤの奴とはあそこからの縁か……随分と長い伏線があったもんだぜ)


 そしてサグオは正式リリースされ、その膨れ上がるプレイヤーの一部が暴走しアイドル的存在に祭り上げられていたサクヤはネットの闇に葬られた。


 サクヤとの別れと再会。

 そしてまたサグオ内部にて再会した。

 ライトの瞳は最後にキキョウの姿を映した。


(……)


 キキョウは自分がこのサグオで生きていく上で戦闘から他の事でも互いに共感し、学んでいけると思い選んだパートナーだった。もちろん見た目も好みではあるが、キキョウの清廉潔白な態度と大胆な行動に出るアンバランスさが気にいっていた。


(どうやら、あいつには何も出来ないまま終わっちまったな。俺が消えれば俺との記憶もあいつから消えるのか? ま、もうそんな事を考えても無駄だな……光が……俺を導いているぜ……)


 真っ白な無の中へ――ライトの意識は吸い込まれていった。

 そして、ライトの全身は終わりを告げるかのように色彩を失い出す。


 しかし、次にライトの見た光景は悪魔の男が倒れる光景だった。


 ズバッ……! と闇のゲートを切り裂き、そのゲートの中から現れる死神の少女はシュウヤの胸元を八つ裂きにする。倒れるシュウヤは苦悶の表情を浮かべて叫ぶ。


「き、貴様ぁ! この僕のアジトから出てきただとぉ!?」


「もう貴方のアジトは壊したわよ。故にこの空間を消したら貴方も死ぬ」


 現れるサクヤに自分の計画の邪魔をされたシュウヤはブチ切れた。


「!? このド畜生がああっ!」


 怒るシュウヤはスロウドロップを使いサクヤを倒した。

 床に転がるサクヤをライトは受け止める。


「サクヤ! しっかりしろ!」


「まだ元気そうね。私はもう戦う力は無い。お膳立てはしたわよ。後は正々堂々あの男を倒しなさい……貴方は最強なんだから」


「そうだな。俺がサグオ最強だ」


 そして、微笑む死神少女は金髪の少年がガッ! と拳を叩き天才開発者にもう一度挑む背中を見つめた。

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