エクストラダンジョン・聖堂協会
エクストラダンジョン・聖堂協会内部。
そこは煌びやかなステンドガラスがあり、そこから差す陽の光が歩くライトの顔を照らす。
その憮然とするライトの視線の先に、一人の黒髪の少年がいた。ライトニングと同じヤンキースタイルのアバターの男。それは偽ライト事件の犯人である証拠のアバター。
その犯人、サイバーグランゾーンオンライン開発者・シュウヤはこの聖堂協会のデザインにウットリするような顔でシャボン玉を吹きながら言う。
「ここは余計な邪魔は入らないよ。ここは僕だけの空間として作ってあるから僕が認可しない限り、認識すら出来ない場所なんだ」
「そのアバターはやめろ。決戦にはふさわしくないぜ?」
「そうだねぇ。あまり怒るなよライト君」
やれやれといった顔のシュウヤは茶色のコート姿にアバターチェンジし、シャボン玉を吹き出した。
そしてライトはこのエクストラダンジョンに入った瞬間のマップウェポンの光について問う。
「ここに来るゲートの中で浴びたマップウェポンの光にダメージは無かったが、ただのドッキリか?」
「はははっ! そうだよ。君の驚いた顔がたまらなく面白かったよ! ゲートに入ろうとしたらマップウェポンの光が目の前から襲ってきたら誰もが驚くよねぇ」
「……余裕こいてられんのも今の内だぜ。俺とタイマン張れる奴はこのサグオにゃいねぇよ」
「開発者の僕に対して言う台詞かな?」
笑うシュウヤは真新しい茶色のコートを右に広げた。
そして元に戻されるコートの影から緑の髪の少年が現れる。
白いスーツ姿のナルシストのような感じを受けるライトと因縁のある男が拳を突き出す。
「まずは君の友人が君と愛しあいたいようだよ。チャオ」
「おい、お前ここまで来て中ボスを準備すんのか――」
爽やかに手を振るシュウヤを見ていると、シュパ! と緑の髪の少年は上半身裸になる。
野心に満ちた瞳を誤魔化すかのような優しいグリーンの髪。
しかし、その身体は生物災害ゲームに登場するような生体兵器そのもので、緑色に染められる身体全体は血流とは違う何かが蠢いているように体内で躍動していた。
獲物を見据える少年は触手のような剣を左右の手に展開させる。
そのアンデッドアバター姿の少年は――。
「エピオン……何だそのちょいグロいアバターは?」
明らかにエピオンはリビングデッドの死体関係スキルを進化させたものを使用していた。
これはシュウヤに貰った専用アバターであり、このエピオンこそが活かせるゲデモノアバターでもある。不敵に笑うエピオンはいつも通り次世代のサグオ王は俺だと言わんばかり笑う。
「このアバターはアンデッド・デッド。俺様そのものが死体になればこの世界で次世代の王になるなど問題無い」
エピオンは自分自身をアンデッドと化しHPゲージの存在を消し、消滅しなければ死ぬ事の無い存在へと変わり果てた。ある意味チートと呼べなくも無いアバターで襲いかかって来る。
「……くっ!」
多少後退するライトは相手の頭上にあるグリーンとレッドのゲージの一つが欠けている事に気付く。
「おいおい、HPゲージが無いとかアリかよ? いくらなんでもゲームシステム無視し過ぎじゃね?」
「無視はしてないさ。それなりのリスクもある。この姿は十分しか保てなくてな。つまり、十分以内にお前はこのエピオン様に敗北し、下僕となるのだ」
「十分以内に敗北すんのはお前だ!」
ライトはスキル〈瞬歩〉にて〈加速〉スキルを使い特攻して視野が狭まるエピオンの度肝を抜くように顔面を殴りつけ消滅させる。頭を消され全身に命令を出す指示系統を失うエピオンはそのまま停止していた。生々しい手の緑色の体液を拭うライトは、
「アンデッドデッド・デッドだか知らんが、所詮頭潰せば終わりだろ。俺はシュウヤと決着をつけに来た。お前なんぞにかまっていられるか。この最強の俺が」
フゥ……と息を吐きエピオンが消滅し真のボスであるシュウヤが出現するのを待つ。
そのライトに聞こえたのはいつ聞いても耳障りな甲高い声だった。
「俺様は無敵だ」