デスゲームを望む少年
「ライトニング――カウンターーーッ!」
シュパッ! と輝く金髪に黒い武道着スタイルの少年が放つ光のカウンターが赤い皮膚の凶暴な巨大竜に直撃する。必殺技であるスタースキルを使い、血に染まる赤い壁のダンジョンの最深部で激闘を繰り広げていた一人と一匹の戦いは終結した。
赤い眼光で金髪の少年を恫喝していた多数の魔法さえ跳ね返す、体長十メートルの巨大竜はズウウウンッ……という轟音と共に地面に倒れた。鋼のように硬い鱗に覆われる全身には無数の打撃痕があり、激戦が行われていた事が想像出来る。しかし、金髪をかきあげる初期アバターの少年の緑に輝くHPゲージは微塵も減っていなかった。
「このライトに勝つなら三十メートル級の竜じゃなきゃ無理だぜ」
鮮やかな金髪をかきあげ、一人壮大なボスエリアに立つ少年は呟く。
倒された巨大竜はパリンッ……とガラスが割れるように消え去った。
よっしゃ! と言わんばかりにガッ! と両拳を叩く初期アバターの黒い武道着に金の髪色を指定しただけの少年は、このサイバーグランゾーンオンライン最強の少年・ライトである。
この金髪アバターでリアルでも金髪の少年は幼少期より格闘ゲームの才に秀でていた。
幼稚園時代、格闘ゲーム・スターロボット大合戦で最強を誇った雪村京雅ことライトはそのゲームが生産中止になった事により、新たに開発された各々の好む武器を取り戦うVRMMO・サイバーグランゾーンオンラインにて拳のみで最強のプレイヤーとなった。
スターロボット大合戦が生産停止したその理由は、スターロボット大合戦がシュミレーションゲームとして売り出されると大成功を収め、開発者がロボット物は格闘ゲームよりシュミレーションゲームの方が売れるという判断を下した為だった。
格闘ゲームは人間キャラじゃないと売れない――。
シュミレーションゲームが苦手なライトは格闘ゲームの方へ流れ、今の地位に落ち着いていた。
「さて、攻略ボーナスアイテムは何かな……」
上位ランクダンジョンである赤龍の遺跡ダンジョンのボスを撃破したライトは撃破ボーナスである赤龍のツノを受け取る為に出現した星に手を伸ばす。
今の戦いを天井の陰からぬっ……と覗き見をするように見つめていたこのVRMMOの開発者・鳴海修也ことシュウヤは無造作に整えられる茶髪をいじり、広範囲攻撃スキル・マップウェポンを発動させる。
「さて、君は僕の理想を叶える星となるかな?」
ズズズ……とシュウヤは黒い玉を生み出し、それは広範囲をなぎ払うマップウェポンクラスへと変化した。ライトが反応した時にはすでに遅く、黒いブラックホールの直撃を受けてしまう――。
「うおおおおっ!? これはスタロボのショウ・クロカワ必殺のブラックホール……? うああああああ――」
「僕と二人で話をしようかライト。君の人生を賭けた話をね」
そして、茶髪をいじるシュウヤはにんまりと爽やかに微笑んだ。