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二人の魔王 開戦

サタンとアラスゼン

想造主より生み出された

二人の魔王


彼らは、相容れることは決してない


片や世界を滅ぼす者

片や魔王を滅ぼす者


相容れられないならば

相手を避けるべき

されど

それすらかなわないならば


相手を滅ぼすしかないのだ


そして、戦いは始まった――


「ゆくぞ!」

先手を取ったのはサタン

手にした杖を

竜鱗を彫った

大振りの片手剣に変えて

アラスゼンへと

簡潔に威勢良く吠え

切りかかった


【来るがいい!】

対してアラスゼンは

右下の手に握った

漆黒の大剣の腹にて

サタンを待ち受ける


――残りの空き手にて

敵であるサタンを

握り潰すために――


そして二人は、正面から激突した


サタンの持つ

竜鱗彫りの片手剣が


アラスゼンの持つ

漆黒の大剣の腹に

突き刺さったのだ


ガキィィン……


硬質の物同士がぶつかったことで

響き渡る金属音


そして、生まれるは

片手剣での突撃を防がれた

サタンの数秒の隙


そこを狙っていたのか

アラスゼンは不敵に笑う


【わざわざ、罠にかかるとは。貴様は愚かしいな。

己が愚かしさを呪いながら、我が掌中にて身を滅ぼすがいい!!】


サタンの隙を

アラスゼンは逃さない


上の両腕で

すぐさまサタンを掴むと

掴んだ手から魔力の光球を

生み出して


至近距離から爆発を引き起こす


「……ぐっ……がぁ……!!」

短くも悲痛なサタンの叫び声

至近距離での魔力の爆発は

魔王の身であるとはいえ

軽い痛みはくるが

その前に、アラスゼンに

身体を握りしめられている

痛みとの併痛は

骨折程度の痛みを

魔王たるサタンに味あわせる


「…ぬかったが、これならどうだ?」


爆発によってわずかに緩んだ

両手による身体の拘束

その隙をサタンは突き返す


「……かぁ!!」

サタンは剣を持たぬ左手に

魔力を一瞬で練り上げ

高威力の爆発を

自らの至近距離で

引き起こした


【……ぬぉっ! 我と同じ手法で、我が拘束から抜け出すか。なかなかやりおる】

爆発すると同時に

両足を蹴り

その反動で

拘束から脱出したのだ


人の身では決して出来えぬやり方

魔王の身ゆえに出来えたこと


「率直に向かっても

無駄ならば

遠距離から攻撃するまで」

サタンは距離を取ると

前方に魔力の光球を

無数に生み出すと

アラスゼンへ打ち出した


【ほう、それで我を滅ぼせると思うたか?

浅慮と知れ!!】


アラスゼンは吼えて

黒い衝撃波を放つと

迫り来る魔力の光球を

撃墜する


軌道から消滅

あるいは逸れた光球は

辺りに墜ちて

幾つかの火柱を

生じさせる


「浅慮? はは、違うな

我が負傷を治す

時間稼ぎに過ぎんさ」


人の身で骨折程度の痛みは

アラスゼンとの戦いに

少なからず影響する


ならば、遠距離で光球を放ちつつ

魔術で傷を癒せば良い


無数の光球は

そのためのめくらまし


【ほう、そうくるならば

傷が癒える前に

再び負傷させてやろう】


サタンの策を破壊するために

アラスゼンはサタンのもとへと

己が四脚を持って駆けゆく

「我がもとへ行く

それが賢明な判断だ

しかし、もう遅い」


サタンはアラスゼンの行動を

褒めながらも嘲笑う

すでに傷は癒えているのだから


サタンとアラスゼンとの距離が

接触する前の時

サタンは蹴り跳ぶ

アラスゼンの頭上を越えながら

己が翼を背中から生やす

漆黒のコウモリのごとき翼で

飛び回るために


【な、にぃ!? 宙を翔けて戦うだと!】


アラスゼンは驚愕の叫びをあげる


飛びながらの攻撃は

相手に焦りを生ませ

自身を撃ちづらくさせるのだ


【こうなれば、撃ち落としてやるまでのこと!】

アラスゼンは三腕の空手から

闇の球を生み出して

連射するかのように

飛び回るサタンへ向けて

放ち続ける


しかし、サタンはアラスゼンの攻撃を

軽々とかわしながら

あるいは旋回しながら

アラスゼンの背後に回り

左手に練り上げていた

魔力の光球を撃つ


【ぬぉ!? ええい、小癪な!】


アラスゼンは空手に

闇の球を生み出しつつ

大振りに己が巨体を

勢いをつけ反転させると

そのままサタンめがけて

三弾の闇の球を放った


「…ちぃっ!!」


近距離から放たれた

三弾の闇の球を

サタンは間一髪でかわした

狙いが外れた闇の球は

遠方に墜ちて

無音の超重力を生じさせるが

燃やしていた黒炎を

一部沈下させただけだった

「……かわしていて助かった……

あんなものを受けていたら

即座に大地へと墜とされているところだったな……」

宙を飛ぶ鳥にとって

地に落とされるのは

己の存在意義に関わることだ


戦いにおいては

己の敗北を引き寄せる

致命的な隙を

生むことにもなる


【グハハハハハ! 宙を飛ぶ貴様にとって、地に墜とされるのは、屈辱ではないか? 屈辱にまみれたまま滅ぶがいい!!】


アラスゼンは哄笑をあげながら

闇の球を放ち続ける


「即座に決着をつけるとするか」


無音の超重力を放ち続ける

アラスゼンとの戦いを

長引かせれば

危険と判断したサタンは

正面から戦いの決着を

つけることにした


【ほう、剣で我を突き刺すつもりか? 無駄だということが、分からぬらしいな】

サタンはアラスゼンへと

右手に持った

竜鱗彫りの片手剣を向けて

旋回しつつ突撃する


対するアラスゼンは

右下の手に握った

漆黒の大剣を

胸を覆うように構え

残りの三腕に闇の球を

生み出していた


戦いはまだ

序章でしかない――



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