表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/320

二章十一話目

 リシェンは笑うのを止め、深緑の瞳でレインを躊躇いがちに見つめる。

「本当に、わたしの父を探してくれるのですか?」

 片方の手をサライの首に置いている。

 その表情は固い。

 今日会ったばかりのレインに対して、こんなことを頼んでいいのかという、慮と戸惑いがあるようだった。

 レインは青い目を細める。

 ――うん。僕に出来るなら、ね。もし白い竜とお父さんを見つけたら、ええと、リタ・ミラ様の御子に頼めば、きっと何とかできると思うし。またリシェンさんに連絡を取れるようにします。

 実際にはどうすればいいのか、レインにはさっぱりわからなかったが、まあ何とかなるだろう、という確信にも似た気持ちがあった。

 そもそもレインが、このどこかわからない場所で、リシェンと会っているのさえ不思議なのだから。

「本当に、本当ですか?」

 リシェンはまだ不安そうな顔で念を押す。

 レインは苦笑する。

 ――本当に、本当だよ。鈴牙人の男は、一度した約束は破らないんですよ。

 これはただ単にレインがお人好しのこともあるが。

 鈴牙人であることはあまり関係がない。

 それを聞いて、リシェンはようやく安心したらしい。

 表情を緩め、花がほころぶような笑みを浮かべる。

「ありがとうございます、レイン」

 その両目はうっすらと涙がにじんでいる。

 レインは照れくさそうに、黒髪を掻く。

 ――で、でも、僕も白い竜が空を飛んでいたら、その背中に男の人が乗っているかは確認できないし。それで、白い竜と男の人が別々にいたら、判断が尽きませんし。リシェンさんのお父さんは、具体的にはどんな人なのか、よかったら教えてくれませんか?

「父が、どんな人か、ですか?」

 リシェンの眉間に皺が寄る。

 難しい顔になって、考え込む素振りをする。

「わたしも、幼かったので、よく、覚えていないのですが。どんな人か、ですよね? 外見的特徴がわかればいいですか?」

 レインは遠慮がちにうなずく。

 ――う、うん。できるだけ詳しく教えてくれるといいな。

「特徴、と言っても、普通の人ですけど」

 リシェンは散々に首を捻る。

「髪は茶色で、瞳はわたしと同じ緑色で、背が高くて」

 指を折りながら、順番に並びたてる。

「顔は、兄に似ていますね。あぁ、兄と言うのは、ラスティエ様の神官をしているのですが」

 リシェンはきょろきょろと辺りを見回す。

 大樹に目を留め、走り出す。

 ――え? り、リシェンさん?

 大樹の方へと駆けていくリシェンの背中に、レインは慌てて声をかける。

 リシェンは走りながら振り返る。

「レインはそこで待っていてください。兄がラスティエ様のすぐそばにいると思うので、すぐに連れて来ます」

 言うが早いか、リシェンの背中が見る間に遠ざかっていく。

 その走りは小鹿のようにすばしっこく、レインの足よりよっぽど早かった。

 ――はぁ。

 一人取り残されたレインは、傍らで眠っている白い竜を振り返る。

 リシェンの友達だと言う、竜のサライを観察する。

 サライは、まるで白いトカゲを大きくしたようだった。

 トカゲに羽を生やし、大きくすれば竜になるのかもしれない、とレインはふと考える。

 レインは額に手を当て、軽く頭を振る。

 何もかもわからないことだらけだったが、とりあえずリシェンに会えたので良いとしよう。

 そう結論付けた。

 レインは巨大な大樹を見上げる。

 大樹は緑の葉を茂らせ、さわさわと風に揺れている。

 小鳥がさえずる声も聞こえてくる。

 隣で眠っている竜の寝息が、ごおごおと低いうなり声のようにも聞こえる。

 レインの口からふうっと安堵の息がもれる。

 まぶたが重くなる。

 目の前の景色がぼやけてくる。

 自然に下がってくるまぶたを押し上げ、レインは目をこする。

 ――だ、だめだ。寝ちゃいけない。

 気を抜くと、立ったまますぐにでも眠ってしまいそうなほど眠い。

 意識も朦朧としてくる。

 ――り、リシェンを待ってなきゃ、いけないのに。

 足元がおぼつかなくなり、レインは支えを求めて手を伸ばす。

 サライの背に置こうとした手は宙をかき、バランスを崩す。

 とても立っていられなくなる。

 レインは前のめりに草の上に倒れる。

 周囲の景色がぐるぐると回って見える。

 ――リシェン。

 レインは地面に倒れたまま、何とかして顔を上げようとした。

 手を伸ばし、リシェンの消えていった先を見つめる。

 抗いようのない強い眠気が襲い、レインはゆっくりと目を閉じる。

 黒い幕が降りてくるように、視界はすぐに暗闇に塗りつぶされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ