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二章八話目

 ――あ、あの、サライに触ってみてもいいですか?

 鈴牙人の国民的性質に、子どものような好奇心が上げられるが、レインも例にもれず、好奇心は強い方だった。

「どうぞ」

 リシェンに促されて、レインは白い獣の前に立つ。

 その首元に触れると、固い蛇のような鱗の感触がする。

 レインは青い目を見開く。

 この感触は以前にも覚えがあった。

 そしてこの白い獣。

 ずっと昔、レインはこの白い獣の背に乗ったことがあるような気がする。

 レインの頭におぼろげにその時の記憶がよみがえる。

 ――そうだ、確か。あれは。

 レインがまだ十になるかならない頃、辺境伯の息子のライと一緒に崖の上から地上を眺めていた時だった。

 突然強い風が吹いて、レインは崖から落ちてしまったのだ。

 空中浮遊の法術を覚えていなかったレインは、そのまま風に吹き飛ばされ、崖から真っ逆さまに落ちてしまった。

 そんな時、空を飛んでいた白い獣がレインを見つけた。

 その白い獣はレインを助け、背中に乗せて、空に浮かぶ島の一つに下してくれた。

 レインは九死に一生を得たのだった。

 その時、その白い獣の背に、もう一人誰かが乗っていたような気がする。

 レインはその誰かと話をして、自由に空を飛べるなんてすごい、と素直に感心したのを覚えている。

 しかしその誰かの顔までは思い出せない。

 もしかしたら、目の前のリシェンかもしれない。

 そこまで考えて、レインは軽く頭を振る。

 その時に助けてもらった恩人に、こうして出会えるなんて虫のいい話があるはずがない。

 しかもその相手を好きになるなんて。

 ――い、いや、好きになるのは、あまり関係ないけれど。

 レインは頭を振って雑念を振り払う。

「レイン。どうかしたのですか?」

 リシェンが何気なく聞いてくる。

 ――い、いえ、大丈夫です。

 レインはぶんぶんと首を横に振る。

 それにそもそも、レインが覚えているくらいだから、もし助けてくれたのがリシェンならば、彼女が真っ先に気付いてもいいはずだ。


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