表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/320

一章十五話目

 特に何かが起こるわけではないようだった。

 先ほどの光によって周囲の木々がびりびりと震え、木の葉や細かい塵が舞い上がる。

 中庭にまた元のような静寂が戻ってくる。

 レインは恐る恐るまぶたを開ける。

 ――何の法術だろう?

 目くらましの法術だろうか、とレインが考えた時だった。

 杖を掲げた黒服の男がこちらを指差す。

「あそこだ。この鍵を壊した犯人はあの茂みにいる!」

 今度は男の声がはっきりとわかった。

 レインは心臓が跳ね上がる。

 今の光は空間知覚の法術だったのだ。学校の授業ではまだ習っていないが、そういった法術があることはレインも知識として知っている。

 ――まずい。

 レインは慌てて走り出す。

 茂みを掻き分けた時に派手な音がしたが、かまってはいられない。

 温室とは反対の方角、グラウンドの方角へと走っていく。

「この学校の生徒だ。追え!」

 背後から男の声が聞こえる。

 レインは後ろを振り返る暇があればこそ、がむしゃらに足を動かす。

 生い茂った下草を掻き分け、木の根につまずかないよう注意しながら、木々の間を駆け抜ける。

 小石だらけの、舗装されていない道を走るのは相手も同じはずだ。

 レインはまだうっすらと朝靄の垂れ込める中庭を、息を切らして走り続ける。

 グラウンドに出れば部活動に励む生徒達がいるはずだ。

 レインの胸の内に微かな望みが生まれる。

 ――あと少し、あと少し。

 朝靄の先にグラウンドへ出る曲がり角を見つけ、レインはほっと胸をなでおろした。

 ――これで、誰かに助けを求めれば。

 グラウンドへ出れば部活動に励む生徒達がいるだろうし、顧問の先生も一緒にいるはずだ。

 安堵した瞬間、背後で耳をつんざくような轟音が鳴り響く。

 ――え?

 ぐらりと視界がぶれて、レインは地面に倒れこむ。まるで後頭部を思い切り殴られたようだった。

 しかし無論そういった訳ではない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ