雛壇令嬢マリアンヌの一芸
※この物語はフィクションです。実在する人物・職業・雛壇令嬢とは何の関係もございません。
※「編集令嬢マリアンヌの校閲」のキャラクターが気に入ったので、別世界線を書きました。マリアンヌの前世が違いますが、ノリはほぼ一緒です。スターシステム的な感じでお楽しみください。
「貴様だな! カトリーナの靴に細工をしたのは!」
「違う! 俺は!」
パーティー会場に広がるざわめきに、その渦中へと視線を向けました。
そこには、わたくしが家庭教師としてお仕えしている坊ちゃまと、その婚約者のカトリーナ様。
そして、このパーティーの主催者であるこの国の王子様の姿があります。
あら。何かトラブルでもあったのでしょうか。
興味本位で、するするとそちらに近づきました。
「お、おやめください殿下!」
「いいや、この際だから言わせてもらう!」
王子様に寄り添うようにして立っているカトリーナ様。王子様の手には、ヒールがぽっきり折れた女性ものの靴。よくよく見れば、カトリーナ様は片方靴を履いていません。
なるほど、なるほど。
「お前は婚約者でありながらカトリーナに嫌がらせをしているそうだな!」
「濡れ衣だ!」
「王子権限で命ずる。このパーティーから出て行け!」
高らかに宣言する王子様、対して悔しそうに顔を歪める坊ちゃま。
わたくしは思いました。
異世界恋愛アニメで5億回見たやつだ、と。
いつだったか、わたくしは前世らしき記憶を思い出しました。
そして思い出してからよくよく眺めてみれば、わたくしが家庭教師としてお仕えしている坊ちゃまは少々気位が高くて自信過剰で、吊り目で適度に顔が良く……有り体に言ってしまえばたいそう、悪役当て馬顔でした。
そして婚約者のカトリーナ様はツンと澄ましたお顔がクールで美しい、悪役令嬢顔。
カトリーナ様が由緒正しきお家のお生まれで我らが坊ちゃまが超お金持ちの新興貴族というところもたいへん「っぽい」設定で、サブスクでアニメを流し見するくらいしか趣味のなかったわたくしがお二人の立ち位置を把握するのに、時間はかかりませんでした。
問題を回避できないかと、家庭教師の立場を利用して坊ちゃまにいろいろと働きかけてみましたけれど、やっぱり一家庭教師に過ぎないわたくしの影響力では、この「悪役令嬢モノ」世界の流れには抗うことなどできるはずもなく。
ああ、この時が来てしまったのね、と。
今この時を迎えて、そう思うのでした。
坊ちゃま、いつか婚約破棄するとか言い出しそうだなと思っていたのです。
ざまぁされて追放されそうと思っていたのです。
ちょっと順番が違いましたけれど、概ね予想通りの展開でした。
きっとこのあと坊ちゃまは、何やかんやあって断罪されてひどい目に遭うのでしょう。それが悪役令嬢たるカトリーナ様を冷遇した坊ちゃまの運命。
ですけれど……そうですね。
わたくしはまだ、本気を出していませんでした。だってこれでも貴族令嬢の端くれですから、はしたないかしらと思っていたのです。
ですが、このまま坊ちゃまを見捨てて終わり、というのも、少々後味の悪い話です。
ここは少しくらい……本気を出してしまっても、構わないのかしら。
手に持っていたグラスを給仕係に預けます。ドレスの首元にこっそりと手を差し入れて、首をこきんと鳴らしました。
そして、そっと坊ちゃまの隣に歩み出ます。
「マリアンヌ」
「坊ちゃま」
「違う、俺は、本当に」
「大丈夫です」
これまでで一番焦った表情で顔色を無くしている坊ちゃまに、わたくしは坊ちゃまの目を見返して、力強く頷きました。
砂糖もミルクもなしで紅茶が飲めると息巻いて、苦みに顔を顰めた挙句、夜眠れなくなってめそめそ泣いていらっしゃった坊ちゃま。
やっと字を覚えた日に、お父様とお母様だけでなく、わたくしや使用人たちにもお手紙を書いてくださった坊ちゃま。
お友達と喧嘩をして帰ってきて、使用人一堂に励まされ、きちんと翌日も学園に行って、謝って仲直りすることができたと報告してくださった坊ちゃま。
危なっかしい包丁遣いで怪我をした手を隠しながら、手作りのお菓子(炭の塊)を差し入れてくださった坊ちゃま。
わたくしは、いえ。あのお屋敷に勤めている者や、ご学友。そんな坊ちゃまと親しい人間は、みんな知っています。
坊ちゃまは目つきが悪くて態度も大きくてツンツンしていて自信過剰なところはありますけれど……それで誤解されやすい方ですけれども。
根は素直で、いい方ですもの。
「ちゃんと分かっていますよ」
そうはっきりと坊ちゃまに告げて、まっすぐに胸を張って……王子様に対峙します。
どうせ坊ちゃまが追放だの断罪だのされたら、わたくしの身分だって危ういものです。なんなら巻き込まれて追放されそうな気も致しますし。
それならここらで少し、前世の……前職の記憶を活用したって、バチは当たらないでしょう。
王子様が、坊ちゃまに向けて言いました。
「お前を追放する!」
「からのォ〜〜〜〜!!??」
わたくしの大きな声が、会場全体に響き渡ります。
しーん、とその場が静まり返りました。
ですが、ここで怯んではなりません。
わたくしはその場にしっかり仁王立ちして、王子様の瞳を見返します。
一瞬、王子様の態度が揺らぎました。
「だ、だから、追放」
「そして〜〜〜〜!!!???」
「そして!!??」
王子様がわたくしの言葉を繰り返します。
坊ちゃまもカトリーナ様も、ぽかんとした顔でわたくしを見上げていました。
「何なんだ君は、そしても何も」
「さらにぃ〜〜〜〜!!!!????」
「さらに!!!???」
王子様が明らかに取り乱しました。
わたくしは確信します。
勝ちました。
これぞ、天丼。
一度でウケなかったからといって、反応しなかったからと言って、決してそこで屈してはなりません。
鋼の精神で、繰り返す。
そこにこそ生まれる――笑いがある。前世の――前職の経験から、わたくしはそれを、理解していました。
そう。これが、これこそが、芸人魂というものです。
「君、何なんださっきから! 無礼だぞ!」
「失礼いたしました。わたくしマリアンヌと申します」
「急に普通に話すな!」
とっさに発した王子様の声に、わずかにどよめきが走ります。
そうです。こうしてこの場を掌握することこそ……わたくしの狙いでした。
「君には関係のない話だろう」
「そうはいきませんわ。わたくしそちらの坊ちゃまの家庭教師ですもの」
「家庭教師?」
王子様が一瞬、黙りました。そして鋭い視線でわたくしを睨みます。
その表情には嫌悪感はありますけれど……どうやら、何か悪いことを企んでいるというわけではなさそうです。
本当に坊ちゃまを犯人だと思っているのですね。それならば……潔白さえ、証明できればいい。
そのあたりを瞬時に判断して、わたくしは次の行動を決めました。
空気読みこそ、雛壇において一番大事なスキルですもの。
「それなら君の教育の問題でもあるということだな。ならば、君も一緒についほ」
「打首ですね!!」
「そこまでするとは言ってな」
「そして打首にしたのがこちらになります!」
「ギャー!!!!!!」
すっこんと自分の首をお腹のあたりに落としてみると目の前の王子様が悲鳴を上げました。
ただの手品でこんなに驚いていただけるとは、首の落とし甲斐もあるというものです。
こんなこともあろうかとドレスの肩に針金を仕込んでおいてよかったですわ。ドレスって体の余分なところを隠すスペースがたくさんありますから、ある意味チートですね。
準備はいくらしておいても損はありません。いつ振られてもいいように、チャンスには備えておくのが当然ですわ。
その場に尻餅をついた王子様がわたくしを見上げながら、がたがた震えています。
「何!? それ、え、何!!??」
「それでは打首にしたので今回はこちらで手打ちということで。さぁ帰りましょう坊ちゃま」
「普通に話すなぁ!!!!」
くるりと踵を返したところ呼び止められました。
ドレスの腰のあたりをごそごそやって、首を元の位置に戻します。
どよめきがいつしか広がって……わたくしは、会場があたたまってきたのを肌で感じました。
腰を抜かしている王子様の元に、さっとカトリーナ様が駆け寄りました。王子様はまだ震える指で、わたくしを指さします。
あら、お行儀が悪いこと。
「何だそれは!!??」
「わたくしの故郷では全員できます、これ」
「ほんとに!!!???」
本当です。秘伝の技を師匠から教わったわたくしたちが身に着けているのはもちろん、楽○とかAmaz○nでも専用のグッズが売っていましたし。
カトリーナ様の助けを借りて立ち上がった王子様に、わたくしは問いかけます。
「それで? どうして坊ちゃまが疑われるのですか? 何か証拠が?」
「せ、聖女エレナが、嫌がらせの現場を見たと言っているんだ!」
「聖女……」
言われて、会場を見回します。
王子様とカトリーナ様の少し後ろに、小柄な女性が立っていました。
亜麻色の髪、貴族には珍しいボブヘアー。
そういえば聖女の話も聞いたことがありました。庶民の娘が聖女の魔力を見込まれて、男爵家の養子になったとか、なんとか。
そのときに「ヨッ出ました伝家の宝刀!」と思ったのも、一緒に思い出しました。
なるほど。あちらの方が、カトリーナ様を陥れる「男爵令嬢」。そういう展開ですね。
聖女様を視界に入れながら、王子様に問いかけます。
「わたくし不勉強でして……聖女というのは具体的にどのようなお力が?」
「聖女は……このように命の源たる水を出すことができるのだ」
「え」
歩み出てきた聖女様が、ぴゅーと袖口から水を出しました。
ざわざわと、パーティー会場がどよめきます。
神の御業、とか、さすが聖女、とか。
そんな呟きを受けて、もう一度聖女様の袖から出ている水を見て……そして、王子様に向き直ります。
「聖女ってこういうがっかり宴会芸でいい感じですか?」
「がっかり宴会芸って言うな!!!!」
そう言われましても。
だってどう見ても由緒正しい古の水芸にしか見えなかったので。
今どき珍しいですよと言われたらそれはそうかもしれませんが。
つかつかと歩み寄って、坊ちゃまの肩を掴みます。
坊ちゃまの肩が大きく跳ねました。
「そのくらいうちの坊ちゃまも出せますわ!」
「俺も!!!!????」
「2時間ください。うちの坊ちゃまは人体切断まではいけます!」
「人体切断!!!!!????」
えへんと胸を張って答えるわたくしに坊ちゃまも王子様も仰天した様子です。
聖女様だけは、何やら慌てた顔をしていました。
「そちらの聖女様もできる感じですか? 人体切断」
「できるわけないでしょ!?」
「やっぱりあれはちょっと準備が大変ですものね」
「大変とかの話じゃないわよ!!!!」
「服も汚れるし」
「服汚れるの!!??」
唖然とした様子の聖女様。
そうでしょうそうでしょう。人体切断はうちの師匠の秘伝の技ですもの。首落ちとは違います。わたくしだって相当練習しました。
ですが坊ちゃまは相当物覚えがよくて努力家ですもの。きっとできるようになるとわたくしは確信しておりました。もちろんわたくしも、全身全霊で伝授いたしますし。
できなくても「やれます!!」という瞬発力。それがこの世界で生き抜くためには何より大切なのです。
「人体切断だなんて、世迷い言を」
「鳩」
「会話の途中で鳩を出すな!!!!!」
「平和の象徴ですものほら」
「うわぁドレスの裾から鳩が!!!???」
ドレスって本当にスペースがたくさんあって助かります。うちの一門も衣装は全員これにしたらいいのではないかしら。
ばっさばっさと飛び立つ鳩が会場でくるっぽくるっぽとパンを啄み始めたところで、王子様が音をあげました。
「わ、分かった分かった! 君の言う通りに2時間やる! だからもう鳩を出すな!!」
「では」
わたくしは今度こそ踵を返すと、坊ちゃまの手を掴みます。
「参りましょう、坊ちゃま」
「おい、どういうつもりだ、そんなこと出来るわけ」
「坊ちゃまなら出来ますわ」
会場から出て、わたくしに手を引かれながらも立ち止まった坊ちゃまに、わたくしは堂々と胸を張って答えます。
女は度胸。男も度胸。芸人に必要なのは、度胸とド根性。
「わたくし、信じていますもの。一子相伝のこの技を、坊ちゃまなら受け継いでくださると」
「……ああもう、分かった!」
坊ちゃまががしがしと頭を掻いた後で、力強い意志を宿した瞳で、きっぱりと言いました。
「いいか! よく見ていろよマリアンヌ! 俺がどれだけできる男か見せてやるからな!!」
◇ ◇ ◇
「出来た」
2時間後。
パーティー会場に戻った坊ちゃまは、人体切断を見事成功させながら、右手から水をぴゅうと噴出させ、左手でオレンジを空中浮遊させた上に、ジャボの下からこれでもかと鳩を出現させていました。
その姿にわたくしは感動を禁じえません。まさか坊ちゃまにここまでのポテンシャルがあったなんて。才能の塊すぎます。伸びしろしかありません。
そしてそれをこの短時間で見事に習得した努力もまた、素晴らしいものでした。大きくなりましたね、坊ちゃま……!
その姿を見て、王子様も考えを改めたようです。坊ちゃまに向かって頭を下げました。
「まさか本当に人体切断までやり遂げるとは……疑って申し訳なかった。お前こそが真の聖女だ」
「俺が……聖女……?」
坊ちゃまが人体を切断されたままでそう呟いたところで、ばぁんと勢いよく会場の扉が開け放たれました。そこに飛び込んできたのは……わたくしとともに坊ちゃまにお仕えしている執事長と、メイド長でした。
「坊ちゃま! この者が坊ちゃまの悪い噂を流していたと突き止めました!」
「そこの偽聖女と組んでカトリーナ様を陥れようとしていたところ、ことごとく坊ちゃまの邪魔が入るものだから、先に坊ちゃまを追放しようと」
執事長に引き倒された貴族の男に注目が集まったその瞬間、メイド長と執事長がその場に崩れ落ちました。
「あああ坊ちゃま!! 何てこと!!」
「間に合わなかったとは……こんな、むごい……」
「いや俺は無事なんだ不思議なことに」
上半身と下半身をくっつけて差し上げると、坊ちゃまがテーブルから身体を起こします。
貴族の男は、あっさりと悪事を白状しました。
聖女様に頼まれて、カトリーナ様を陥れようとしていたとか。
それをどうしてか都度坊ちゃまが邪魔をするものだから、先に坊ちゃまを追放してしまおうと考えたとか。
お決まりの展開でもって男と聖女様が捕えられ――そして、坊ちゃまと使用人たちがひっしと抱き合って、感動の一幕はお開きとなりました。
ほとんどの賓客が帰っていった、人影もまばらな会場。
やっとこさ鳩を回収し終わったわたくしは、網を持って鳩を追い掛け回している坊ちゃまに声を掛けました。
「坊ちゃまがまさか、あれほどカトリーナ様のことを想っていらしたなんて」
「は?」
「わたくし、てっきりお二人は仲が悪いのかと思っておりました。余計な心配でしたね」
「違う、俺は」
坊ちゃまは捕えた鳩を胸に抱きながら、やや言いにくそうに……そして、ぶっきらぼうに言いました。
「お前が言ったんだろう。レディにはやさしくするのが紳士だと」
「え?」
「人の気も知らないで」
ぷいとそっぽを向いた坊ちゃまの耳が、赤くなっていました。
わたくし、そんなことを言ったでしょうか。
いえ、教育の一環として……そしておそらく悪役令嬢であるカトリーナ様にやさしくしていただきたくて……そんなことを言ったとしても、何らおかしくはないのでしょうが。
「だいたい、カトリーナがあの王子に懸想していることなどみんなが知っている」
「え??」
「王子もどうやらカトリーナに気があるようだしな」
「え????」
「そんなに鈍いのはお前だけだ」
坊ちゃまの言葉にぽかんとしてしまいます。
確かにカトリーナ様はそっと王子様に寄り添っていましたし……王子様も王子様で、カトリーナ様を気に掛けているからこそのあの振る舞い、というのはよく伝わってきましたけれども。
え? もう両片思いなんですか??
そしてもしかして……今回ひっ捕らえられたあの方たち以外、みんなそれを知っていて、応援している?
そんな、そんな「話が早い」パターンが、あるのかしら……?
「婚約の円満な解消に向けて動いていたら、あの聖女が妙な動きをしていたからな。様子を探っていた。まさかこんな手に出るとは思わなかったが」
「婚約の解消」
肩の力が抜けました。
坊ちゃまは最初から、カトリーナ様と王子様の恋愛事情を知った上で、「円満に」婚約を解消しようとしていた。
それはつまり、悪役令嬢と、王子様。2人の仲を応援していることに他なりません。
周りの人間もそれを知っていたなら……坊ちゃまが追放などされるはずがありません。断罪などもっての他です。
なぁんだ。
それなら元から、わたくしの出る幕などなかったということですね。
ついつい前に出すぎて怒られるのは、前世から変わっていなかったようです。まだまだ修行が足りませんね。
ふぅとため息をついて顔をあげると、坊ちゃまがわたくしのすぐ目の前に迫っていたことに気が付きました。
「それで?」
「はい?」
ネタ振りかと思って目を瞬くわたくしに、坊ちゃまがどこか呆れたように……それでいて、嬉しそうに。ふっと口元を緩めました。
「主人を切断した挙句聖女に仕立て上げておいて、このままというつもりではないだろうな?」
「え、えーと……」
「お前の一族に伝わるという秘伝の技まで覚えたんだ」
坊ちゃまが、わたくしの手を握ります。
その手がとても、あたたかくて――いえ、あたたかいを通り越して、熱くて。
一瞬子ども体温? と思いましたけれど、わたくしを見つめる坊ちゃまの瞳があまりに真剣なものだから、何も言えなくなってしまいます。
「責任を取って、これからも俺のそばで支えてくれ」
「責任」
「今回は、助かった。俺にはお前が必要なんだ」
ばさばさと、坊ちゃまの手から解き放たれた鳩が飛び立ちました。
それにつられて、残っていた鳩たちも一斉に飛び立ちます。
その光景はまるで――結婚式の、ピジョンリリースのようでした。
面食らってしまって、自分の手を握る坊ちゃまの手と、坊ちゃまの顔を交互に見比べることしかできません。やっとのことで、言葉を絞り出しました。
「ええと、坊ちゃま」
「何だ」
「この手は、何でしょう」
「お前が先に掴んだんだろう」
坊ちゃまがわたくしを見上げながら、「逃がさないぞ」と付け加えます。
これまで培った空気読みのスキルがありますので――さすがに、坊ちゃまが何が言いたいのかは、分かってしまって。
「掴みはオッケー、ということかしら」
「お前の言うことは時々よく分からん」
俯きながら呟いたわたくしに、坊ちゃまが苦笑いしました。




