第3話
それ以来、毎日来ているのかつばさが図書館を訪れると常に鷹がいた。
少しずつ会話する機会が増えると鷹が甘い物好きであることが分かり、料理の腕がプロ並みのつばさは図書館を訪れる度にお菓子を持参するようになった。
最初は興味なさげであったつばさも話してみると気が合う部分が多いことから、徐々に心を開いてき、笑うようになっていった。
鷹がベンチでケーキを食べているのが見える向かいのテーブルに選んだ本を数冊置き、椅子に座って本を読んでいたつばさだったが、ふと顔をあげて鷹をみた。
「鷹先輩、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「どうしてここには人がこないんでしょう?」
鷹がケーキを食べるのを止め、考える素振りをみせたあと、またケーキを食べながらつばさを見ながら言った。
「もともとここは、教室棟から離れているし、他の生徒は近い図書室を使ってるからじゃね?」
「そんなものですかね?私はここで鷹先輩としかお会いしたことがないので、いくら利用者が少ないといっても誰にも会わないというのは・・・」
「まぁ、そのうちだれか来るかもな。」
つばさは納得できなかったが、適当に答える鷹を見てこれ以上聞いても答えが返ってくるとは思わなかったので、本を閉じ自分の分のケーキを食べ始めた。
適当に返事をしていたが、ここに鷹以外の生徒が来ないことは本人が一番知っていた。それは、鷹がこの図書館への一般生徒の出入りを制限した張本人だからだ。
入口にあるセンサーに一般生徒の学生証を差しても開錠しないようになっている。元々鷹がいることで近寄る者が少なかった図書館であったが、つばさに会ってからは限られた生徒しか利用できないようにしたのだ。
なぜ、こんなことをしたのか鷹にはよく分らなかった。ただ、この時間を邪魔されたくはないと思った。
そして、つばさは鷹が思っていることも、鷹がこの学園でどういった地位にいるか知らなかった。
知らなくても問題はないと聞かずにいたことを後に後悔することになるとは思いもしなかった。




