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『十人目の証言』  作者: くろめがね


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6/8

第六話 被害者の友人の証言

第六話です。

――音声記録・文字起こし⑥


 質問:被害者とはどのような関係でしたか。


「大学の同期です。

 同じゼミで、

 ……一番長く一緒にいた友人でした」


「卒業してからも、

 たまに連絡を取ってて。

 頻繁ではないですけど、

 誕生日にメッセージ送ったり、

 新しい仕事の話を聞いたり」


「……ああ、

 こういう場で名前を出すの、

 まだ少し変な感じがしますね」


 質問:彼については。


「顔は知っていました。

 直接話したのは数回だけです」


「友人が相談していた相手、

 ……という印象でした」


「最初は、

 ただの仕事仲間だと思っていたんですけど」


 質問:どんな相談でしたか。


「お金の話です」


(長い沈黙)


「最初は、

 小さな投資みたいなものだったらしいんです。

 “少し生活が楽になるかもしれない”

 って笑ってました」


「でも、

 途中から雰囲気が変わった」


「……期限、って言葉を

 よく使うようになって」


 質問:期限。


「“いつまでに結果を出さないといけない”

 って」


「正直、

 その頃から嫌な予感はしてました」


「でも、

 友人って、

 止めすぎると距離ができるじゃないですか」


「だから、

 軽く“気をつけなよ”

 って言うくらいしかできなくて」


 質問:女性の存在は知っていましたか。


「知ってます。

 彼女にも相談していたみたいです」


「三人で話したこともあったって

 聞きました」


「……うまくいってるのかは、

 正直わかりませんでしたけど」


 質問:関係は良好でしたか。


「難しかったと思います」


「誰が悪いとかじゃなくて、

 それぞれ違う方向を見ていた感じで」


「責任の話になると、

 少し空気が重くなるって

 友人が言ってました」


 質問:事件当日の連絡は。


「夜の九時過ぎに来ました」


「“話し合いに行く”

 って、それだけ」


「短いメッセージでした。

 ……いつもより句読点が少なくて」


 質問:場所は。


「川沿いの公園です」


「昔から、

 三人がよく会っていた場所でした」


「昼間は人が多いんですけど、

 夜は急に静かになる場所で」


 質問:その後、何が。


「詳しくは見ていません」


「ただ、

 口論になったと聞きました」


「突き飛ばされたのか、

 足を滑らせたのか、

 ……そこははっきりしていません」


「警察は事故に近いって言いましたけど、

 納得はできなかった」


 質問:彼はその場に残っていたそうですね。


「ええ」


(少し考える間)


「……逃げる人じゃないとは、

 思っていました」


「だから、

 その話を聞いたとき、

 少しだけ安心したんです」


「変な言い方ですけど、

 あの人らしいなって」


 質問:様子はどうだったと聞きましたか。


「静かだったそうです」


「取り乱してるわけでもなくて、

 ……終わった、

 って顔だったって」


(長い沈黙)


「……でも、

 友人も引き返せたはずなんです」


「誰か一人が悪い話じゃない」


「みんな、

 少しずつ間違えてたんだと思います」


 質問:あなたは彼をどう思いますか。


「悪い人ではないと思います」


「ただ、

 ……優しい人ほど、

 最後に

 静かな選択をしてしまうことがある」


「それが、

 良いことなのかどうかは、

 今でもわかりません」


 質問:ありがとうございました。


――音声記録⑥終了


誤字脱字はお許しください。

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