第六話 被害者の友人の証言
第六話です。
――音声記録・文字起こし⑥
質問:被害者とはどのような関係でしたか。
「大学の同期です。
同じゼミで、
……一番長く一緒にいた友人でした」
「卒業してからも、
たまに連絡を取ってて。
頻繁ではないですけど、
誕生日にメッセージ送ったり、
新しい仕事の話を聞いたり」
「……ああ、
こういう場で名前を出すの、
まだ少し変な感じがしますね」
質問:彼については。
「顔は知っていました。
直接話したのは数回だけです」
「友人が相談していた相手、
……という印象でした」
「最初は、
ただの仕事仲間だと思っていたんですけど」
質問:どんな相談でしたか。
「お金の話です」
(長い沈黙)
「最初は、
小さな投資みたいなものだったらしいんです。
“少し生活が楽になるかもしれない”
って笑ってました」
「でも、
途中から雰囲気が変わった」
「……期限、って言葉を
よく使うようになって」
質問:期限。
「“いつまでに結果を出さないといけない”
って」
「正直、
その頃から嫌な予感はしてました」
「でも、
友人って、
止めすぎると距離ができるじゃないですか」
「だから、
軽く“気をつけなよ”
って言うくらいしかできなくて」
質問:女性の存在は知っていましたか。
「知ってます。
彼女にも相談していたみたいです」
「三人で話したこともあったって
聞きました」
「……うまくいってるのかは、
正直わかりませんでしたけど」
質問:関係は良好でしたか。
「難しかったと思います」
「誰が悪いとかじゃなくて、
それぞれ違う方向を見ていた感じで」
「責任の話になると、
少し空気が重くなるって
友人が言ってました」
質問:事件当日の連絡は。
「夜の九時過ぎに来ました」
「“話し合いに行く”
って、それだけ」
「短いメッセージでした。
……いつもより句読点が少なくて」
質問:場所は。
「川沿いの公園です」
「昔から、
三人がよく会っていた場所でした」
「昼間は人が多いんですけど、
夜は急に静かになる場所で」
質問:その後、何が。
「詳しくは見ていません」
「ただ、
口論になったと聞きました」
「突き飛ばされたのか、
足を滑らせたのか、
……そこははっきりしていません」
「警察は事故に近いって言いましたけど、
納得はできなかった」
質問:彼はその場に残っていたそうですね。
「ええ」
(少し考える間)
「……逃げる人じゃないとは、
思っていました」
「だから、
その話を聞いたとき、
少しだけ安心したんです」
「変な言い方ですけど、
あの人らしいなって」
質問:様子はどうだったと聞きましたか。
「静かだったそうです」
「取り乱してるわけでもなくて、
……終わった、
って顔だったって」
(長い沈黙)
「……でも、
友人も引き返せたはずなんです」
「誰か一人が悪い話じゃない」
「みんな、
少しずつ間違えてたんだと思います」
質問:あなたは彼をどう思いますか。
「悪い人ではないと思います」
「ただ、
……優しい人ほど、
最後に
静かな選択をしてしまうことがある」
「それが、
良いことなのかどうかは、
今でもわかりません」
質問:ありがとうございました。
――音声記録⑥終了
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