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マヨケの剛切断  作者: 三下朧気
1/1

プロローグ:冒険は終わり。

 数百年前、人類は魔法を使って世界を冒険していた。時に魔物と戦い、時に洞窟を攻略して新大陸や先人の遺したオーパーツを見つけ出てしてきた。

 しかし、土地は有限であり魔法の進化は早かった。

 冒険の終わりと魔法の過剰とも言える進化。そこから始まったのは誰がいかに魔法を利用した道具、魔道具で儲けられるかという商業戦争。

 自動車、照明、空調。魔道具によって快適に整備された町の中で暮らす内に人々は自ら魔法を使うことをやめていく。

 魔物による脅威も探知魔道具や高威力の爆弾の製造などによりほとんどの人間はそれを忘れる。


 だが、魔法と同じく魔物も進化する。


――――――――――――――――――――――――――


 山一つ越えた所には魔鏡を利用したモニターが所狭しと並ぶような都会があるにもかかわらず、その洞窟は数百年前から見た目は変わっていないが、訪れる人間の目的は変わり果てている。

 冒険を生業としていた者たちが挑んでいたのは当の昔。現在では近所の子供が肝試しに利用したり金のないカップルの密会所と化している。

 現在は昼間なため逆に人はおらず、のどかな雰囲気だった。

 そこに一台のバイクが止まる。黒塗りのバイクには一人の男が乗っていた。

 黒革のジャンパーにジーンズ。褐色の肌に黒い髪。名はダカツ・フォールマン。

 法で推奨されているヘルメットは被っておらず、耳元と肩で挟むようにして魔鏡から声を聞いている。

 

『そこで何人か人が消えてる。多分魔物だね。』


 魔鏡から発せられるのは女の声。ダカツはそれを聞きながらバイクのスタンドを立てて、ライトで洞窟内を照らす。


「洞窟内で人を待ち伏せて食べちまうって?それ何年前の魔物だよ。」

『今でも知能の低い魔物は結構いるんだよ。新聞とか読んでないのかい?犬に似た魔物が子供を食い殺したとかたまに報道されるじゃないか。』


 ダカツは魔鏡で会話をしながら洞窟内を進んでいく。

 水滴が落ちる音。ヒンヤリとかすかに吹く風。石の匂い。どこかロマンを感じさせる場所ではあるものの、壁中に刻まれている落書きのせいで冒険気分はまるで感じられない。


「魔物だったら報酬弾んでくれ。今週ピンチでさ。」

『それ言ってない週あったかい?』


 ライトに照らされた道の奥に何かが見える。

 洞窟内の石質ではない灰色の巨象。それも多数。冒険家をモチーフにしたもので旗を持ったものや杖を持ったもの。犬を連れているものもある。


「道の奥に石像がいっぱいあんだけど。」

『石像に擬態して廃墟で人を襲う魔物もいるそうだよ』

「いやーどう見ても浮いてるかん―――。」


 ダカツは殴り飛ばされた。

 石像は巨体からは想像も出来ないスピードでダカツに接近。鉄拳ならぬ石拳でダカツの顔面を殴り飛ばす。パワーは巨体から想像できる通りであり、殴られたダカツは壁に激突する。


『すごい音だね。』

「いってぇ…。動きが速い。相当強いな。本当に、だから高い報酬が必要になるなこれ。」


 石像は群れとなってダカツに殺到する。足で踏みつぶされそうな所を間一髪で回避。だがその足の数は多くゴロゴロと洞窟を転がり続ける羽目になるダカツ。

 何も手に持っていない石像がダカツの足を掴み壁に何度も打ち付ける。


『またまたすごい音。そんなに必死になって、今週相当ピンチなんだね。いやー演技派だね。』


 常人なら頭が破裂していてもおかしくはない攻撃。しかし、ダカツは額に血が滲む程度の怪我しか負っておらず魔鏡も手放していない。石像は不思議そうにダカツの様子を見る。


「いやー。本当に報酬弾んで欲しいかも。」


 次に石像はダカツを床に叩きつける。その瞬間、ダカツは両手で地面を受けて掴まれていない左足で石像の腕を蹴り飛ばす。石の砕ける音。捥げた石像の手が足かせの様にダカツの右足をまだ掴んでいる。

 石像は残された手でまたもダカツを殴り飛ばそうとする。その石像の体にキラリと一筋の光が走る。瞬く間にバラバラに崩れる石像。光の正体はナイフ。ダカツが腰から振りぬいたそれが先ほど地面に落ちたライトを反射していた。


「片手が塞がるから魔鏡切っていいか?」

『今暇を持て余していてね。話し相手になってくれたら報酬弾むよ。』

「だーもう!」

『そうだ。せっかくだから音楽を掛けてあげよう。いいスピーカーを買ったんだ。魔鏡越しでも音質の良さがわかるさ。』

「集中したいんだけど!」


 魔鏡から子守唄の様な穏やかな曲が流れ始める。状況とは一切合致しない選曲に呆れるダカツ。魔鏡先の相手は鼻歌交じりで気分が良さそうだ。

 曲に合わせたかのように石像の攻撃が再開する。石拳、蹴り、頭突き。単純な攻撃だったが、重く素早いそれはどれも洞窟の壁に軽く穴を開ける破壊力はあった。

 ダカツは列になって攻撃を繰り出し続ける石像を一太刀でバラバラにしていく。拳を突き出したものには手から、蹴りを繰り出したものには足から、頭突きを放ったものには頭から。亀裂が入り全身がサイコロのように切断される。


 曲が終わるころにはダカツは洞窟から出ていた。

 スタンドを畳む際に石像の手がまだ足首を掴んでいたのに気付いてそれを蹴り砕く。

 

「終わったから切っていいいか?」

『楽勝そうだったね。報酬の上乗せは通話に付き合ってくれた分だけだよ』

 

 その言葉を聞いてかそれとも魔鏡の先の相手の自由奔放さに嫌気が差したのか、大きなため息を吐いてダカツはバイクに跨り、山を一つ越えた先にある街へと向かった。

 

 

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