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十六章 眼鬼②

「なんでここにいる?」

「アルバイトの帰りよ」

礼司は初めて見た魔美の制服姿を見た。

「ああ、ご苦労さん・・・アルバイトはこっちでやっているんだな」

「そうよ。こっちのコスチュームファミレスは時給がいいから」

「生活大変なんだな・・・」

礼司は魔美がタクシー代を稼ぐ為のアルバイト

とは知らなかった。

「善然寺まで送っていく」

「ありがとう」

礼司が黒のワゴンの運転席を見るとハンドルを

つかんで震えている男を見た。

「おい、どうした?」

「黒い目玉のような物が俺を見ていました」


「ところで三人さん、仕事は何をしているのかな?」

礼司は三人に向かって聞いた。

「俺は柿本仁大学生です」

魔美の足を持っていた男が答えた。

「俺は桃田博建築業です」

車の持ち主の運転していた男が答えた。

「俺は梨田健電気工事やっています」

魔美の手を掴んでいた男が最後に答えた。

「なぜ、魔美を襲った!」

「一人で暗がり歩いていたしスカートが長くてまじめそうだから・・・」

「首謀者は?」

礼司は魔美の手を掴んでいた梨田の奥襟をつかんだ。

「すみません」

梨田はうなだれた。

「みんな家庭は?」

「俺だけ結婚しています」

運転席にいた桃田が答えた。

「目が合ったんだよな」

「はい合いました。ジロッと見られました」

「魔美、そういう事だ!」

「気の毒にあなた殺されるわよ!」

「だ、誰に?」

「あなたと目が合った鬼眼鬼に・・・殺されると言うより食われちゃう。

生きたままボリボリとね。信じる信じないは勝手だけど」

「ええ!」

鬼と目が合った桃田は魔美の言葉にガタガタと震えだした。


「助けてください。お願いします」

桃田さん手を付いて頭を下げた。

「桃田さん、鬼ってどんな感じ?」

「やたら大きい赤い目がギロッと見ていました」

桃田が大きく手を広げた。


「眼鬼か・・・」

「魔美、眼鬼ってどんなんだ?」

「にらんだ者を動けなくして手足を引き裂いて最後に頭を食う」

「あはは、結構残酷だな、栗、梨、柿だから食べやすい」

礼司は笑いながら桃田を見た。

「でも私帰らなくちゃ。ママが心配する」

魔美は冷たい返事をした。

「魔美、つれない返事だな?いつもは鬼退治に夢中なのに」

「眼鬼は私に関係ないの」

「関係ある鬼と関係ない鬼が居るんだ」

「そうよ。じゃあ帰るね」

「オイオイ、こいつらを見捨てるのか?」

「だって私を襲った男なんて・・・鬼に食われて死ねばいい!」

礼司は魔美が出入りしていた墓の前に行った。

「魔美、以前この墓が壊れてこっちへ来れなかったんだよな」

「ここは私の能力があるから使えるの、誰でも通れるわけじゃなわ」

魔美は墓の前に立ち手を振ると姿を消した。

「消えた!」

三人は礼司の言っていた事を本気で信じていた。

「俺たちも家に帰りたいです」

「家に帰ったら家族も食われるぞ」

礼司は腕を組んで考え込んだ。

「外は危険だからタクシーに乗ってくれ」

礼司は三人を車に乗せ運転席で腕を組んだ。

しばらくすると後ろから声が聞こえた。

「夜野さん、寝ています?」

「い、いや。考えていたんだ」

「どうするんですか?」


「SSATの夜野礼司と魔美の父親は死んで俺と合体した、

俺はそのせいで能力が強くなった。俺の中には二人の記憶がある

思い出せ!魔美の父親の記憶」

礼司がそうつぶやくと魔美と由美の顔が次々に現れた。

すると目の前に神社が見えてきた。

「ここ、どこだ?」

礼司はつぶやくと振り返ってにっこり笑った。

「お客様~ここの近くに神社がありますか?」

「無いですね。善然寺の中に小さな祠があるだけですね。

 鳥居が有って・・・」 

「そうか・・・なんだかんだと言っても魔美の稼業も知らなかったんだな」

礼司は寂しい気がしていた。

「ふう」

礼司はため息をついて鬼の根付をチリンチリンと鳴らせ

目を閉じて、頭の中でイメージを膨らませた。

「もう一人の夜野礼司さんあんたの世界を見せてくれ」

三人を乗せてメーターのスイッチを押してアクセルを踏むと

タクシーは金色に光った。

数秒後光が消えると礼司は後ろを振り返った。

「はい、お待たせしました」

「走っていないじゃないか?」

魔美の腕を掴んだ梨田文句を言った。

「でも、違う世界に着きましたよ」

タクシーから降りた三人は目の前に大きな鳥居と社が有った

事に呆然とした。

「夜野さん、本当に来れたんですね」

暗闇から出てきた魔美が礼司に声をかけた。

「ああ、魔美のオヤジさんの力を借りた」

「ママに会っていく、会ってみたいと言っていたよ」

「いや、やめておく。仕事があるんでね」

礼司は自分の世界で死んだはずの由美に会うのが怖かった。

「そう、また来てね」

魔美は嬉しそうに手を振った。

「ああ、その前にやる事が出来たみたいだ」

礼司は空を見上げると月に照らされた真っ赤な雲が

渦巻いてゆっくりと降りてきた。

「来るぞ!」

礼司は桃田の前に立つと魔美の顔を見た。

「魔美!武器は?」

「今日の武器は鬼丸」

「鬼丸あの時の刀か?」

「今日は本物の刀を使うよ」

一度家に戻った魔美は刀を礼司に渡した。

「お、重い!」

国宝級の刀鬼丸は重かった。

「桃田君はタクシーに乗って残りの二人は善然寺に逃げろ!

 早くしないと食われるぞ」

「は、はい」

二人が逃げていくと礼司はシフトを鬼のノブに交換をしていた。

「魔美、まだ21時前なのになぜ鬼が出る?」

「こっちの世界の事はわからない。ママに聞いてくる」

魔美は走り出した。

「ど、どこへ行くんですか?」

桃田は礼司にしがみ付いた。

「あの雲から逃げる!」

「どこまで?」

「でも逃げ切れるわけない、倒すしか」

桃田は後ろを振り返って空を見上げた。

「だんだん大きくなっていますよ」

桃田は雲を指さした。

「わかっている。まだ大丈夫なはずなんだが・・・」

礼司は時計を見ながら雲の様子を観察していた。

「時間が関係するんですか?」

「うん、関係する」


「夜野さん私の家に来て!」

魔美から電話があった。

「おい、携帯電話通じるのかよ?」

礼司は神社脇の自宅にタクシーを寄せると

車いすに乗った由美が居た。

「あっ、お久しぶりです」

礼司は車から降りて由美に深々と頭を下げた。

「うふふ、夜野礼司さん。こんばんは」

向こうの世界の由美と同じ顔をしていたが

こちらの由美は車いすに乗っていた。

「ママを車に乗せて」

魔美は車いすを押した。

「桃田さん奥に移動してください」

「はい」

「私、前に座るわ」

由美は前を指刺した。

「はい」

礼司は前のドアを開けた。

「大丈夫ですか?」

「ええ、左足が不自由なので」

「そうですか」

タクシー運転手の礼司は慣れた手つきで由美を助手席に座らせ

車いすをたたみトランクにしまった。

「お上手ですね。乗せ方」

「職業柄です」

タクシーは障害者手帳を持った人は運賃の1割を

引くので障害者の使用頻度は高い礼司も慣れていた。

「魔美は今日は後ろだ!」

「はい」

魔美は幅180cm室内長190cmのタクシーに長さ221cmの弓を斜めに乗せた。

「ちょっとじゃまだけど・・・」

「大丈夫だ運転できる」

亮は運転席に乗って由美の顔を見た。

「由美さん・・・どうすればいいですか?」

「眼鬼は雲のような鬼なので攻撃しても手ごたえが無く、ガス(煙鬼)のように

 熱して爆発させることもできない」

由美は空に浮かぶ赤い雲を見上げた。

「難しいですね」

「魔美、鬼のノブください」

「礼司さん、相手はかなり強いわ今までのようにいかないわよ」

由美は真剣な顔で言った。

「あいつはどんな力持っているんですか?」

「空から眼光を当てて動きを止めてそれを食うのよ」

「メドゥーサのように石にして?」

「うふふ、どちらかと言うと肉の塊」

「わあ・・・」

桃田が声を出して頭を抱えると由美が振り返った。

「あなたが娘を襲った男?」

「いいえ、襲おうとしたのは柿本と梨田です」

「まあ。巫女を襲うなんて彼らにはいつか天罰が下るわ」

「本当か?」

礼司が驚いて由美の顔を見た。

「ええ、そうよ。そうか・・・あなたは向こうの礼司さんだったわね」

由美は礼司の記憶が曖昧なのに気付いた。


「ママ、そろそろ22時よ」

魔美が後ろから声をかけた。

「礼司さん出来るだけ高いところへ行きましょう」

「富士山か?」

「うふふ、面白い人」

由美は自分の知っているまじめな礼司と

違っていて冗談を言う礼司は可笑しくて笑った。

「取り合えず中央高速に向かいます」

礼司はアクセルを踏みホイルスピンを鳴らして走り出した。

礼司は環七を走り永福町から中央高速に乗った。

「由美さん、向こうでは一度行った事がある場所は走らなくても行けるんだが

 ここは未経験だから走るしかない」

「本当?そんな能力も備わったのね」

由美は礼司の進化に驚いていた。

23時までまだ時間があり鬼のノブの効果が無く礼司は車の間をすり抜けながら

走って行った。

「運転の癖が同じね」

「ん?」

「左に行くとき一度右に膨らむの同じ癖」

由美は嬉しそうだった。

「そう言えば礼司さん、前職は?」

「テレビ局のディレクターです」

礼司は中央高速に乗り八王子に向かって走り出した。

「・・・向こうの世界には魔美は居ないのね」

「はい、3年前の12月24日に・・・」

「そうかあの日・・・ありがとう・・・」

礼司は突然礼を言われて驚いていた。

「ちょっといいスカ?」

「何?」

桃田が魔美に聞いた。

「俺たちの今いる世界から元の世界に戻れるんですか?」

「多分戻れると思うけど夜野さん次第」

「な、なぜですか?」

「夜野さんが鬼退治が出来なかったら戻れないからあなたたちは

この世界で生活する事になる」

「家族とは会えるんですか?」

「会えるわけないじゃない、もう一人のあなたが居るから」

「ええっ!」

「もう一人の君と会ったら君の細胞が

分解して塵となって消える」

「マジですか?」

「一瞬だから痛くないはずだ」

「一瞬って!」

礼司は桃田をからかって楽しんでいた。

「良く知っているわね。さすが学者さん。

所詮接してはいけないパラレルワールドの世界。

 同じ質量を持った物質が接触したら溶合するか反発しあうの、

 桃田さんがこの世界でもう一人の桃田さんの反発によって

 消されてしまうのよ」

魔美は桃田に説明した。

「八王子から高尾山まで圏央道でいけるのでもう少しです」

「はい」

由美の顔は次第に険しくなった。

「ママ、赤い雲が大きくなって追ってくる」

赤い雲は次第に楕円形に変化してその中央は黒い丸に変化していた

「やはり、ターゲットは桃田さんなのね」

由美は目を閉じて口の中で何かを唱え始めた。

「魔美、手伝ってもらうわ」

「わかっている。弓は大丈夫よ」

「眼鬼は私の体を奪った鬼!だからかなり強いわよ」

身体が万全じゃない由美は眼鬼と一人で戦って勝つ自信が無かった。

「体を奪った鬼ってなんだ?!」

礼司は事情が読めなかった。

「私たち巫女はこの世の鬼を退治する力を持っているの、

 それが3年前、一挙にこの世界に鬼がやって来て

三人の巫女が戦った。

仲間は次々に倒れ勝てそうになかった

私は自分の体の中に鬼たちを封印したの」

由美はその出来事を噛みしめるように

ゆっくり話した。

「それでママは全ての機能が奪われ生きる屍になっていたの」

由美は耳も目も口も聞けず食べる事すらできない、

髪も抜け手も足も体も動かす事が出来きず

まるで壊れたマネキンのようになっていた。

「まさか内臓も?」

「うん、動いていたのは心臓と脳だけだった。もう終わりだと思っていた

 3年前の12月24日私とママは蘇ったの」

由美は胸を抑えた。

「魔美は俺に鬼を退治させていたんだな、

鬼の情報も知っていたのも納得した」

「そうだよ。夜野さんが鬼を退治してくれたおかげで

ママはここまで動けるようになったの」

礼司はうなずくとある記憶がよみがえってきた。

「そうか、思い出した最後の力を振り絞ってあんたの

ダンナをもう1つの世界に飛ばしたんだな」

「そう、あまり力を持っていない夫に死んで欲しくなくて」

「そうだったのか」

礼司は何故自分の世界に魔美が来たかやっと理解した。

「魔美は巫女じゃないのか?」

「今は巫女の修行中、3年前はまだ14歳の子供だったので能力が無かったの」

魔美が後ろから怒鳴った。


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