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十六章 眼鬼

眼鬼


魔美は大きな窓があるキッチンで朝ごはんを作っていた。

「嵐丸ダメよ、じゃまよ」

足元には巨大な猫が魔美の足にしっぽを絡め

魔美は嵐丸を跨ぎテーブルに皿を並べると

母親の由美が車いすで入って来た。

「おはよう魔美」

「ママ、大丈夫?」

キッチンで車いすの脇に膝を着いた魔美が由美の額に手を当てた。

「ちょっと熱があるみたい」

「ええ、今日は体が熱いの」

魔美はトーストとベーコンエッグとサラダと豆乳をテーブルに出した。


「魔美のお陰でずいぶんよくなったわ。

こうして自分で車いすにも乗れるようになったし、

声も出るようになったわ」

魔美は冷たい豆乳を呑んだ

「後、どれくらいかな?」

「左足と左手と右目だから・・・」

「あの戦いに負けなければこんな事にならなかったのに・・・

 パパも死ななかった」

「うふふ、パパは死んだわけではないわ、

私がパパをあっちの世界に飛ばしたのよ」

「ごめんね、あの時はまだ私が子供だったから能力が無かった」

魔美は笑って由美に顔を寄せた。

「ママ。パパに会いたい?」

「もちろんよ、向こうのパパは元気?」

由美は美味しそうにトーストを食べた。

「うん、ちょっと性格が変わってチャラくなって

パチンコや競馬で遊んでいるけどだんだん能力が強くなってきている」


「まあ、まじめなパパも良いけどチャラいパパも可愛くて良いわ」

由美は目を輝かせた。

「もう一つの世界のパパは警察の特殊部隊の隊長さんで

そっちはめちゃくちゃかっこいい・・・」

「じゃあ、後三匹倒したらこっちへ来られるかもね・・・会ってみたいわ」

「どっちの方?」

「どっちって?三人が合体しているんだから一人でしょう」

「うふふ、三人分の記憶があるので本人も戸惑っているみたい」

「あら、大変」

「そう言えば私が向こうに行けなかった時、鬼丸がパパの

 所に現れたみたい」

「あの我儘な鬼丸が魔美もいなかったのに・・・向こうのパパも

 気に入られたのね」

「じゃあ、行ってきます。後大丈夫ね」

魔美は食べた物を片付けて立ち上がった。

「大丈夫よ、午後にはヘルパーさんも来るし、

おじいちゃんも朝のお勤めが終わったら戻って来るわ」

「はーい、学校の帰りにアルバイトがあるから遅くなります」

「ええ、あなたもその力があるから気を付けて、

鬼が出ても一人で戦っちゃだめよ」

「はーい」

******

私、オオトリ魔美17歳高校二年生、高円寺の大鳥神社の孫。

おじいちゃんが宮司をやっている。

そして隣には善然寺がある。

神仏分離される前はお寺の中に神社があるし神社の中にお寺がある。

上野東照宮は寛永寺の敷地内、赤坂の豊川稲荷は

円福山豊川閣妙厳寺えんぷくざんとよかわかくみょうごんじ」と言う

曹洞宗のお寺、年始には参拝客でごった返す浅草の浅草寺の

隣は三社祭で有名な浅草神社はほとんど並ぶことなく

参拝ができる。

江戸時代お寺が住民の戸籍管理をしていたので

お寺の力が強かったらしい。

お正月は神社で初詣、結婚式はキリスト教会、死んだらお寺

12月25日はクリスマス最近はハロウィンまでやっている

日本の宗教は複雑!


古代、巫女卑弥呼は神の力を得て様々な奇跡を民にみせ

政治を行い、それ以降も巫女は政治に大きくかかわっていた。

世界的に女性は謎の力を持っていてその能力は世界では魔女と呼ばれ

日本の巫女もその類である。

私とママは巫女で神の力を得てこの世にある魔と戦う力を持っている。

向こうのパパは夜野礼司でタクシードライバーだけど、こっちのパパはお婿さんで

鳳礼司と言う名前で民俗学先生の幸せな家庭だった。

三年前のあの事件が無ければ・・・


******

「おはよう、魔美」

高校の門の前でセーラー服の女の子が魔美に声をかけた。

「おはよう千枝」

「ねえ、今日学校終わったらあなたの好きな

ケーキ食べ放に行かない?」

「ごめん、今日もフェミレスでアルバイトなの」

「どうして?お金持ちなのに・・・」

千枝は大きな神社の孫だから魔美はお金があると思っていた。

「ちょっとタクシー代を稼がないと」

「えっ?タクシー代?」

「うふふ」


「じゃあ、来週中間試験が終わったら行こう」

「そうだね。それならいいよ」

「ねえ、魔美のママ元気?」

千枝は聞きにくそうに聞いた。

「うん、車いす生活だけどかなり動けるようになった。

 また遊びに来て」

「良かった。また魔美の家で一緒に勉強したい」

「そうだね、中学の時は一緒に勉強したね」

魔美は三年前を懐かしく思った。

「アルバイトの帰り気を付けてね。最近痴漢が多いらしいから」

「うん」


ママが休業中なので鬼は何日かに一度、

この世に現れ人間を食っているが

それは鬼の仕業だと誰も知らない。

鬼が出て人が食われて行方不明になり

警察が出動するが犯人の目途はつかず、

捜査は行き詰まり犯人の手配もできない。


私たち神社の神職者が鬼を封印しているだけど、鬼を退治できるのは

能力を持った巫女と鬼退治を手伝う鬼人だけ。

残念ながらおじいちゃんはその能力皆無まして

お正月のアルバイトの巫女には出来ない。

「おい、鳳いるか?」

昼休みにトレパン姿の男が教室に入って来た。

「はい、後藤先生どうしたんですか?」

「今日は部活あるんだっけ?」

「はい、お裁縫部です」

「今度の日曜日弓道の試合出てくれないか?」

「分かりました」

私は真当流の手解きを得て鏡鬼に射った手ごたえを覚えていた。


「鳳、弓道部で本気でやらないか?段が取れるぞ」

「すみません、ちょっと家庭的に無理なので・・・明日練習に参加します」

魔美にとって段などどうでもいい話で

矢によって鬼を倒せればよかった。

「ああ、お母さんの介護か残念だな」

弓道部の顧問の田代は魔美が参加してくれることが決まって

ニヤニヤして戻って行った。


千枝が興味深そうに近づいてきた。

「ねえ、魔美。スポーツ万能だから

運動部の方が向いているんじゃない。

 合気道部にも誘われているんでしょう」

「私は裁縫が好きなの」


放課後、裁縫部に行った魔美は袴を縫いだしていた。

「鳳さんは運針が上手よね」

顧問の田代が話しかけた。

「ありがとうございます」

「今どき和裁がそこまで出来る人は居ないわ」

「袴は家業なので・・」

「うふふ、そうだったわね」

田代は少し大きめの袴を見て不思議に思った。

「あら」

窓の外にCD大の黒い影が見えた。

魔美は長い針に絹糸を通しそれを持った。

「ちょっとトイレ行ってきます」

魔美は立ち上がると校舎の裏に行き

狭い通路を歩くと1mの高さをそれが漂っていた。


「あんた何者!」

糸の付いた針をそれに放り投げると黒い物に

突き刺さって糸が絡まり消えて行った。


「こっちに来るのかな?」

巫女の修行中の魔美は何の予兆か分からず

空を見上げた。


魔美は17時からレストラン・アンナミに入った。

他のファミレスと差別化を図るために

ウエイトレスはメイド服おかげでお店は大繁盛だった。

「おはようございます」

「ああ、魔美ちゃん。今日は21時まで出来るかな」

店長の岡本がいきなり聞いた。

「ええ、またバイトさん急に休み?」

「ああ、まったく家族が突然日本に来たんだそうだ。

外国人はシフト通り働いてくれない。

魔美ちゃんはまじめで助かるよ」

「私も学生だからあまり引っ張らないでくださいね。テストも近いし」

「学年トップの魔美ちゃんがなんていう事を」

「トップを維持する難しさわかってくださいよ」

魔美は岡本のわき腹を突いた。

「でも、魔美ちゃんの学校の学校教えてくれよ。

その制服この辺で見ないから」

「うふふ。内緒です」


魔美はテキパキと仕事をこなしながら時々外の様子が気になっていた。

「やはり何かいる!」


「いらっしゃいませ。今日のおすすめは・・・」

魔美が進めるメニューは殆どの客が注文をして

それは魔美の能力の一つ人の心を動かす力だった。


21時に仕事を終えた魔美はアルバイト先から歩いて家に着くまでは

暗がりが一か所、それは善然寺の裏側だった。


「おーい、彼女。俺たちと遊びに行かねえ?」

「いいえ」

魔美は後ろから声をかけてきた男を断った。

「おい、冷たいなあ」

「あの制服どこの高校だ?」

「清楚な感じの間違いなく・・・」

魔美はその言葉を無視し早歩きでスピードを上げた。


能力を持った魔美にとって暗がりは怖い物ではなかったが

狂った人間の方が怖かった。


そこに突然後ろから車が来て魔美の首に腕を回し、口を押える男がいたが

その男の手首をつかみ体を返し男の体を飛ばした。

「おい、足を抑えろ!」

もう一人の男が暴れる魔美の足を掴み

ワゴン車に魔美を乗せた。

「やだ、止めて!」

魔美は足をバタつかせもがいた。

「パパ!パパ」

魔美は礼司の名前を呼んだ。


******

「パパ!?」

運転中の礼司の耳元で魔美の声が聞こえた。

「ん?魔美?」

「パパって俺か・・・?」

礼司は客を代々木で降ろし方南通りを下り

大原交差点を右に曲がり環七を走った。

「魔美!」

礼司は車の中で大声を上げた。

「パパ助けて!」

魔美の声が礼司の頭で大きく響いた。

「魔美、ぬおおおおお」

礼司がアクセルを踏むとタクシーが金色に光り猛スピードで

走ると目の前の車が消えた。


中野の善然寺の前に着くと礼司は周りを見渡した。

「魔美!!!!」

礼司は大声で魔美の名を呼ぶと

目の前に黒いワゴン車が止まっていた

「魔美」

礼司はその車の前に立ちドアを開けると

魔美を押さえつけている二人の男を目撃した。

「こら!何をしているんだ」

礼司は魔美の足を抑えている男の服を掴んで引っ張り3mほど投げ、

奥に入って魔美の手を抑えている男の胸ぐらをつかんで車から

引き落とした。

「魔美、大丈夫か?」

「う、うん」

魔美が体を起こすと礼司は男を睨みつけた。

「こら!集団暴行は許さねえぞ」

礼司の迫力に二人の男は膝を付き正座をしていた。

「もう一人」

礼司が運転席に向かうと運転手は真っ白な

顔をしてハンドルにしがみついていた。

「どうした?」

「ば、化け物が・・・」

「鬼を見たのか?」

「はい」


「魔美、どうしたんだ?」

「私もわからない。アルバイトの帰りに

こいつらに車に引き込まれて。

それより夜野さんどうしてここにいるの?」

「パパ助けてという声が聞こえた」

「ありがとう・・・」

「ふう・・・ここは魔美の世界か?」

「ううん、夜野さんの世界だよ」

魔美は周りを見て確認した。


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