十五章 鏡鬼④
「色々な先生に古文書を解読してもらったのですが、意味がわからないんです
それで東大の先生なら解るかと思いまして」
「わかりました。本郷ですね」
「はい」
「私がそちらに向かいますから待っていただけますか?」
「はい」
そこへるなが弓を持って戻ってくると
亮がるなに言った。
「藤間さんと連絡が取れました」
「良かった、それで薬は?」
るなは礼司に心配して聞いた
「それがまだ、そりあえず東大に向かいます」
「はい」
礼司たちは宮司に早々に挨拶をし
車に乗りエンジンをかけると
礼司たちの車は光を放って消えた
「やっぱり目立ちすぎる」
前に座っている魔美が礼司の
ひざを叩いた
「大丈夫だよ、消える瞬間を写真に撮ったやつは居ないよ」
「まあね」
亮は東大病院内に車を止めた。
「ここタクシー乗り場じゃない」
「しょうがないだろう、記憶のある所に移動するんだから」
「あはは、そうか」
亮は車を降りて藤間に電話をかけて藤間を探した。
「藤間さん今どこですか?」
「大学の前の喫茶店におりますが」
「私は今、大学の中に居ます」
「えっ?さっき鎌倉じゃ」
「ああ、後で説明します」
「すぐにそちらへ行きます」
「魔美、るなさん外だ!」
「はい」
三人が喫茶店に入ると
奥の窓際に居る男が立ち上がった。
「るなさん」
「藤間さん、心配しました」
「あはは、申し訳ない」
「こちらが夜野さんと魔美さんです」
るなが二人を紹介した
「藤間です。よろしくお願いします」
「どうも夜野です」
「魔美です」
魔美が頭を下げると
礼司は解読の事が気になった。
「すみません、俺に古文書を見せていただけますか?」
礼司が聞いた。
「どうぞ」
礼司は藤間の持っている古文書をペラペラとめくると
内容を理解した。
「なるほど。これは天正8年ですから1580年428年前に
鏡鬼を矢で封じこめた話ですね」
「それを封じ込めた矢が火事で焼けてしまったんです」
「ええとそれは違いますね」
「はい?」
「この封印は28年前に切れていますからひょっとしたら
一昨日矢自体が燃えたのかもしれません」
「封印が解けていたんですか?」
藤間がおどろいて聞いた。
「はい、封印は400年間と書いてあります」
「それじゃ、タイムオーバー言う事になるわけですね」
「はい、鏃は水晶、箆は九州高千穂の矢竹、
矢羽が京都大沢の池に居る白鳥」
「はい」
「はい、最後にその先につける物は三毒ですね」
「三毒ですか?」
「動物と虫と植物の毒を合わせるんですよ」
「じゃあ、すごい毒なんですか?」
「いいえ、動物は蛇の毒、虫はドクガの毒、植物はトリカブトの毒ですね」
「分かりました」
礼司は川島由美に連絡して三毒を作れる所を探させた。
それより笹を取りに高千穂に行かなければなりませんね」
「はい、夜野さんは行ったことは?」
「な、無いです。藤間さんは?」
「私も無いですよ」
礼司がるなを見るとるなも手を横に振っていた。
「ああ、だめか」
礼司は突然立ち上がって喫茶店の中で大声で聞いた。
「誰か高千穂に行った方いらっしゃいますか?」
「はい」
二人の客が手を挙げた。
「さすが東大日本中から来ている」
礼司が立ち上がって客の元へ行こうとすると
マスターが来て壁を指さした。
「私の趣味は写真なので」
「やった!」
「マスター目をつぶって思い出してください。手を握ります」
「えっ?」
礼司は手を握りマスターの頭のイメージをスキャニングした。
「ありがとうございます」
マスターは礼司の奇妙な行動に怪訝な顔をした。
「さあ、行きましょう時間が無い」
「三毒はどうするの?」
魔美が聞いた。
「由美さんを信じましょう」
礼司がマスターに挨拶をしてドアの前に立つと藤間が聞いた。
「あっ、私は京都へ行けばいいですか?」
「いいえ、直に戻りますからこの喫茶店でお待ちください」
「えっ、行くのは高千穂ですよね」
「はい、急いでいってきます」
「はあ」
藤間は九州へ行くはずの礼司が何を言っているか分からなかったが
とりあえず返事をしてみた
礼司たちは急いで駐車場の車に乗って
エンジンのキーを回すと
「夜野さん、大丈夫?行ける」
魔美が疑ったような目で聞いた。
車は金色の光を放って駐車場から消えた
礼司たちの乗った車が飛行機のエアポケットに落ちた
ガタガタと揺れてなかなか目的地に着かず
目の前が灰色の雲の中に居るようだった。
「夜野さんどうしたんですか?」
るなが運転席のしがみつきながら
悲鳴を上げていた
「か、マスターの記憶が古かったようだ」
「確かに写真古かった。どうするの?夜野さん」
魔美が心配でいっぱいだった
「とりあえず宮崎に行く」
「宮崎は知っているの?」
「ああ、学生時代彼女と旅行へ行った」
礼司は宮崎駅を思い出すとくるくると回りながら駅前に着いた。
「夜野さんどうするの?」
「ああ、いい事がある」
礼司はスマフォを取って電話をかけた。
「夜野です」
「お久しぶりです」
ジャパンテレビの水野が返事をした
「ちょっと頼みが・・・」
「何でしょうか?」
「ジャパンテレビのネットワーク局ジャパンミヤザキの
人間を紹介して欲しいんだ」
「どういう理由で?」
「高千穂へ行った人と会えればいい、詳しくな」
「分かりました、折り返し電話します」
「そうかテレビ局ね」
魔美は礼司の言った意味が分かった
「ああ、テレビ局の人なら詳しく知っているはずだ」
「うふふ、曖昧なのは困りますものね」
るな笑って言うとそこに水野からの電話が鳴った
「夜野さんジャパンミヤザキの女子アナの
北里さんが会ってくれるそうです」
「分かった、ありがとう」
礼司はジャパンミヤザキの玄関で北里に会うと
「こんにちは、北里です」
北里はアナウンサーらしく笑顔と美しい声で
答えた
「夜野です。高千穂の矢竹が欲しいのですが」
「はい、でもここから3時間から4時間かかりますよ」
「そりゃまずいな、間に合わん」
「でもそれより早くは無理ですよ」
「すみません、手を握っていいですか?」
「はあ?」
北里は恐る恐る手を出すと
礼司はガバッと手を握り北里のイメージを自分に取り込んだ
「ああ」
北里は色っぽい声を出し体の力が抜けた
「ありがとうございます」
礼司は深々と頭を下げて車に乗り込んだ。
「今度は大丈夫だ、行くぞ」
エンジンをかけると目をつぶって北里のイメージを思い浮かべた
すると車は金色の光を残し消えた
「彼女、好きな男性がいるよ」
「えっ、本当?」
「ああ、最近触るだけで相手の心が読める」
るなが後ろの席で騒いだ
礼司の乗る車は天岩戸神社前に止まった
「ここどこ?」
魔美が聞いた。
「天岩戸神社だ、高千穂からちょっと距離があるけどな」
「えっ?選べるの」
「ああ、彼女の記憶の中に竹やぶが映っていた」
「すごい」
「あそこだ」
礼司は車を降りて竹やぶの中に入っていくと
矢竹を5本取って出てきた
「あったの?」
魔美が大きな声で聞くと
「ああ、有った」
礼司はるなに竹を見せた。
「これでいいのかな?」
「はい、でもまだ青いですね」
「どうにかなるだろう」
「そうですね」
「じゃあ行きましょう」
るなは竹を車に入れて
藤間に電話を掛けた。
「高千穂の矢竹を入手しました」
るなはうれしそうに笑って言った。
「夜野さん、どこですか?」
「もうすぐ東大に着く」
「ちょうど良かった、東大薬学部へ行ってください。
三毒が手に入ります」
「ありがとう」
礼司は薬学部で三毒を受け取ると
喫茶店へ行って藤間を乗せた。
「ずいぶん荷物が多いですな」
「藤間さん京都に戻ります」
「ええ、でも車じゃ時間がかかります」
「大丈夫ですよ」
るなが笑って後部座席に座った藤間の目を見た
「はい」
礼司は車のエンジンキーを回して
アクセルを踏むと
金色の光を残して消えていった。
「魔美今何時だ?」
「17時よ」
「あと6時間か」
「そうだね」
「後は水晶の鏃と白鳥の羽だな」
魔美はうなずいて礼司の顔を見た
真当流の道場に着いた礼司の運転する車から
四人が降りるとすぐに大島の家に走った
「お父さん、矢竹を取ってきました」
るなが竹と重藤の弓を渡すと家元が受け取った。
「よし、すぐに箆を作る」
「佐々さんは?」
礼司が部屋の周りを見渡しながら家元に聞くと
「水晶の加工家を探しに行っています」
「はい」
礼司は魔美を見て
「じゃあ、俺たちは白鳥の羽か」
「簡単ね」
「そうかなあ、そんなにうまく行くかな」
「えっ?」
礼司は北嵯峨に向けて車を走らせ
大沢池の前に着いた白鳥を眺めた
「あの大沢池の白鳥がそんなに霊験あらたかに思えないな」
「そういえばそうね、でも古文書に書いてあるんでしょ」
「古文書に書いているから怪しいんだよ、昨日今日シベリアから渡って来た白鳥か?」
「17時半か、大覚寺は閉まったな」
「大覚寺?」
「ああ、あそこのからパワーを感じる」
「白鳥の羽があるの?」
「分からん。入ってみよう」
「ええ」
そこへ佐々から電話があった
「夜野さん水晶の鏃、今作っています」




