十五章 鏡鬼③
鏡鬼 2部
そこへ礼司の元に佐々から電話があった
「夜分すみません、佐々です」
「佐々さんお久しぶりです。どうしました?」
「東京で首が無くなって三人亡くなったそうですね」
「ええ、さっき四人目が出ましたけど。それで何か?」
「実は昨日、京都の鏡神社が燃えてしまったんです」
「えっ?」
「そのご神体が鬼を封じ込めていたという伝説が」
「鏡神社の鬼ですか」
「はい」
「佐々さんどこに行けばいいですか?」
礼司は焦って言った
「明日、京都駅まで来ていただけますか?」
「分かりました、23時に」
礼司は電話を切るとみんな向かって言った
「明日23時に京都へ行く、昨日鬼を封印していた鏡神社が燃えたそうだ」
「夜野さん明日休みでしょ」
魔美がうれしそうに言った
「ああ、自家用車でいく」
「我々は行けませんが何かありましたら呼んで下さい」
浜田が言った
「ああ、今日はご苦労だったな」
「はい」
「ひょっとしたら、白尾るなに会えるかも知れませんよ」
由美が言うと
「なるほど、由美が言うならそうかも知れないな」
礼司は由美の動物的勘を信じていた
「じゃあ、お土産に黒八橋買ってくるからな」
礼司はまじめな顔をして言うと由美と浜田は
礼司がまじめに言ったのか冗談だったのか
わからずなんと答えていいか悩んだ
「時々隊長がわからなくなる」
浜田が由美の耳元で囁いた
「私も」
「あれが本当の二重人格だからな」
「私達もああなるのかしら、怖い!」
「うん、僕達もああなる前に、向こうの世界に戻らなくては」
「そうですね、早く白尾さんと山野さんを見つけなくちゃ」
「隊長がんばってください」
浜田が礼司に呼びかけた
「おお、抹茶八橋も買ってくるぞ」
「ああ、やっぱりおかしい」
「じゃあ、みんな送っていくぞ、中野、目黒、世田谷5000円コースだ」
礼司は嬉そうに言った
「はい」
浜田と由美は仕方なさそうに答えた
礼司は魔美を中野の善然寺に送ると
「魔美、明日8時に行くからな」
「はい」
「じゃあ」
由美が手を振って車が走り出すと礼司に聞いた
「魔美ちゃん、こんなに遅くなって大丈夫なのかしら?
家族がいるんでしょう」
「そう言えば知り合ったときから遅くなっていたなあ」
「隊長は魔美ちゃんの事あまり知らないの?」
「そうだな、あまり詮索するのが好きじゃないから」
「警察官だったのに?」
由美が体を乗り出して聞くと
「TVマンだったのに?」
浜田も真似をして前の席で
夜野に聞いた
「それの反発だろう、それに今は何も聞かなくても分かるし」
なるほど、由美は何も言わずにそう思った
「そういえば、川島さん誕生日はいつだ?」
「あら、何かくれるの?うれしいわ。11月11日よ」
「そうか、さそり座かやっぱりな」
「なによ、何か言いたいの?」
翌朝、礼司は8時50分に善然寺の前に着いた
魔美はピンク色のリュックを背負って
長い黒髪を風になびかせて車のところへ走ってきた
「かわいいな」
礼司は一瞬思った
「おはよう、どうしたのにやけて」
「いいや、なんでもない。さあ行こう」
「うん」
魔美は助手席に乗ると鬼のノブを渡した。
礼司がそれを車に取り付けると
車は金色の光を残し消えてなくなった
礼司は途中浜名湖のPAに車を止めて
ボーっと湖の方を眺めた
「どうしたの?」
「ああ、おしっこ」
「あはは、変なの」
礼司はトイレから戻ると
赤いリボンの付いたピンクの箱を渡した。
「魔美、ほら誕生日プレゼントだ」
「ええ?私の誕生日どうして知っているの?」
「やっぱりそうか・・・」
自分の娘の真美と魔美が同じ誕生日で繋がりを確信した。
「うん、じゃあその前に」
魔美は浜名湖が見えるテーブルにプレゼントを乗せて
手を合わせた。
「魔美ありがとう」
礼司と魔美の乗った車は10時に京都駅前に着くと
魔美が笑った
「1時間早かったね」
「いや、今からケーキを食べる」
「本当?」
「うん、オ・グルニエ・ドールへ行こう」
「えっ、何?」
礼司は車を錦市場に走らせ
ケーキ店に着いた
「悪いな、わざわざ付き合ってもらって」
「良いよ、それよりこれ美味しいピラミッド型のケーキ」
「うん」
「相変わらず夜野さんはモンブランね」
礼司は手を合わせ目を閉じた。
魔美は礼司からもらった真っ白なマフラーを首に巻いて
美味しそうに食べていた
11時に戸田真由美の家に着くと
礼司は玄関のチャイムを鳴らした
「おお、玄関が直っている」
先日、武鬼壊した玄関を礼司はしみじみ見て言った
「当たり前でしょう」
「あはは、そうか」
真由美が玄関の戸を開けると
「夜野さん、魔美さん。遠路はるばるありがとうございます」
真由美は懐かしそうに言った
「こんにちは」
魔美が小さく頭を下げた。
応接室には佐々が待っており礼司と強く握手をした。
「早速ですが、鏡神社の件ですが」
「はい」
佐々は神妙な顔をして言った。
「おととい、比叡山の近くにある鏡神社が焼けて
ご神体の銅鏡が焼けたんです」
「銅鏡が溶けたんですか?」
礼司は佐々に聞いた
「いいえ、昔弓の名手大島光義が織田信長の命を受けて
鬼が隠れていた銅鏡に矢を放ってそこに封じ込めたとされた
と言う伝説があったんです。」
「では、その矢が焼けて封印が解けてその銅鏡の中から
鬼が逃げ出したという事ですか」
「はい」
「それが原因で、東京で事件が起きたと言う事か・・・」
礼司は考え込んで佐々に東京の事件を説明した。
「東京の事件は、井上と言う女性が土田と言う男に
鏡に頭を打ち付けられて殺され
その犯人が昨日鏡に頭を食われて死んだんです」
「残りの三人は?」
「それが、三人ともあまり関係が無くて一人はメイク中に見ていた鏡に
一人は運転中にバックミラーにもう一人は電車の中の窓に」
「窓?」
「ええ、夜だったので窓ガラスが鏡になってしまったんですよ」
「そして、最後の被害者は土田。留置所の覗き窓が鏡になって
ギロチンになってしまった」
「わかりました、やはり鏡神社の影響もあると思います」
「そうなると、こちらでも誰かの首がなくなる可能性がある」
「ええ、急ぎましょう」
佐々と魔美は礼司の運転する車で鏡神社に向かった。
「佐々さん、銅鏡はどこにあるんですか?」
「隣の神主さんの自宅にあります」
「そうですか」
「それが神主の藤間さんが行方不明なんです」
「え?食われてしまったんでしょうか?」
「それなら、首無し死体があるはずですよね」
「ええ」
佐々が不安げに答えた。
礼司たちが鏡神社に着き
神殿の焼け跡を丹念に調べても
何も感じなかった
「何も無いな。魔美」
「ええ、何も感じないわ」
「ここのご利益は?」
礼司は入り口にある看板を覗きこむと
「ここは的を当てるという意味で
ギャンブルの神様なんだ」
礼司は佐々に鏡が見たいと言って鏡が置いてある
部屋に入って銅鏡を眺めた
それは真ん中に矢の痕がついているものだった
「本当に銅鏡に穴が開いてる」
魔美が覗きこんで言った
「ええ、これに矢が刺さっていたんです」
神主の妻の藤間玲子が言った
「すごいですね、ところでご主人は?」
昨夜の21時ごろに物音がして
人が逃げていった後に神殿に火がついた
という事だった
「最近、仏像が盗まれていますからね」
礼司が藤間に言うと
「ええ、神社には仏像が無いので油断をしていたんです。
まさか火をつけられるとは」
風間玲子は肩を落としていた
「ご主人は?」
「それがこのご神体の銅鏡を持ち出した後に
火を消しているうちにいなくなってしまったんです」
礼司が部屋の壁を見ると礼司は写真に気が付いた。
「この写真は?」
「この銅鏡に矢を放った大島光義の弓道の
流れを組んだ真当流の家元です」
「なるほど」
礼司はしばらく写真を見ていると
「そうか」
礼司は手をたたいて
「佐々さんそこへ行きましょう」
「はい」
三人は西加茂の真当流の道場へ向かう途中
礼司は藤間の行動が頭に浮かんだ
「佐々さんひょっとしたら藤間さん封印の為の
矢を探しに行ったのかもしれませんね」
「なるほど」
「真当流へ家元なら封印の方法を知っているかもしれませんね」
「ええ」
佐々は礼司の的確な推理に緊張で手のひらに汗をかいていた
礼司が真当流の道場に着いて
佐々が家元に話を聞いた。
「昨日、藤間さんが神社が燃えたのに息せき切って来ましてね、
真当流の古文書を見せてくれって言われました」
「ええ」
「大島光義の矢の事を調べに来たんですよ」
「やっぱり」
それは礼司の推測通りだった
「それでどうしたんですか?」
「それが解読不明の部分がありまして困っていたんですよ」
「それで?」
礼司も聞いた
「鏃は水晶、箆つまり棒の部分ですな、
矢羽が白鳥はわかったのですが先に塗る薬がわからなくて」
「それでどこへ行ったかわかりますか?」
「薬学者を探しに東京へ行きました」
「そうですか、ありがとうございます」
「佐々さんすぐに調べましょう」
「はい」
礼司たちが道場の出口へ向かうと
そこに弓を持って姿勢良く立っている女性がいた
「白尾るな?」
礼司がおどろいて声を出して呼んだ
「はい?」
「うちの娘です」
家元が後ろから言うと礼司は納得した。
「なるほど、弓道家がスナイパーか」
礼司は魔美に聞こえるように言った
「そうだね。うふふ」
「るなさんちょっとお話があるんですが」
「な、なんでしょうか」
るなはあっけに取られていた
礼司たち奥の部屋に通されると
礼司は浜田に電話をして藤間を探すように言った
「探すって言っても、どうやって?」
「川島に言って薬学博士を捜してもらえ」
「あっ、そうかなるほど」
「たぶん、漢方に詳しい先生だ」
「はい、でもどうして家族は連絡が取れないんでしょうか?」
浜田は藤間の行動が理解できなかった。
「たぶん落ち着いたら連絡が来るだろう」
「わかりました」
「頼む」
礼司が電話を終えると
礼司たちが今まで体験していた事を話し始めた
「わかります」
るながすぐに返事をした
「何でわかる?」
父親の大島光照が聞くとるなは
「今矢を放つと100発100中なんです」
「知らなかった」
「ええ、恐ろしくてわざとはずしていたくらいです」
「鬼の件は私も信じます」
光照は納得して協力をしてくれる事になり
矢の製作に入る事になった
「ねえ、るなさん職業は?」
魔美が尋ねるとるなはあっさりと答えた
「警察官です」
「ああ、やっぱり」
「大島さんだったから見つからなかったのね」
「うん」
「でもどうして大島さんなんですか?」
礼司が恐る恐る質問をした
「白尾は私の旧姓です」
「えっ?結婚しているんですか」
「私は母の連れ子で父と再婚したので
今は大島の姓を名乗っているんです」
「なんだ、そうか良かった」
礼司がホッとして胸をなでおろすと
「何喜んでいるの、夜野さん」
「まあ良い、るなさん協力をしてくれないか」
「わかりました。じゃあ、弓の用意をしなくてはなりません」
「弓ですか?」
「ええ、三人引きの強力な重藤の弓です」
「それはどこに?」
「鎌倉の小笠原流の承諾を得なければならないんです」
「鎌倉か?」
「夜野さん鎌倉は?」
魔美が聞くと礼司は鎌倉を思い浮かべた。
「大丈夫だ、行った事がある。家族三人で」
「じゃあすぐに行きましょう」
「ああ」
「ところでるなさん、その弓貸してもらえそうか?」
「わかりません交渉してみます」
るなが出かける準備をしている間
魔美が弓をうたせてもらっていた。
「夜野さん、魔美さん弓道をやっているんですか?
筋がいいですね」
大島光照が驚いていた。
「そういえば、武鬼に矢を射っていましたね」
佐々が思い出して言った。
礼司と魔美とるなが車に乗りアクセルを踏むと
車は金色の光を残して消えた
「言ったとおりですね、本当に消えた」
佐々は大島と顔を見合わせた
「さあ、我々もがんばって矢を作りましょう」
「はい」
「京都は240万人の人口と
年間1000万人の観光客が訪れる
人気の観光土地だそこには何億もの鏡と
鏡の代わりになるものがある
もし鏡鬼が相手を選ばなかったら
何人の人が犠牲になるのだろう。
「そうですか」
「信じてくれますか?」
「ええ、鬼の話は我々の中に語り継がれて
いる事です」
「ではぜひ重藤の弓をお貸しください」
「わかりました、」
「お願いいたします」
そこに礼司のスマフォがなった。
「夜野さんですか?藤間と申します」
「藤間さん探しましたよ」
「申し訳ありません、気が動転していまして」
「今、どちらですか?」
「東京に来ています」
「東京で何をなさっているんですか?」




