十五章 鏡鬼②
「頼む」
三人はホテルを出ると
浜田は池袋警察へ向かった
「俺達は足取りをたどる」
「はい」
「川島」
「はい」
「何か変わった事がないか?」
「えっ、実は最近何か感じるんです」
「やはりな」
礼司はラブホテル街の駐車場の影に入って
由美の額に手を当てた
「額がピリピリとします」
「心を開け」
「はい」
由美は何も考えず
心を大きく広げた
すると色々な声が頭の中に入ってきた
「夜野さん、感じました」
「うん・何がだ?」
「何か来ました」
二人が再びラ・セゾンの前に立つと
「土田が井上さんを殺して死んだ三人と
接触したと考えられないか?」
「ええ、たとえばホテルの中とかこの辺りの道路とかで
すれ違ったんじゃ」
「ああ、たとえば塚田道子が彼氏と歩いていて
小西栄一は浮気相手歩いていたとか」
「じゃあ、東幹夫は?」
「土井は上野で捕まったのでおそらくここから川越街道へ出たんだろう
そこで何らかの接触があったんじゃないか」
礼司はホテル街から東口へ渡る陸橋を指差した
「そうですね、人を殺して駅に向うやつはいませんね」
そこに二人の前を猫が横切ると
「あら、猫ちゃん」
由美が声をかけると両足をそろえて
猫は立ち止まった
「夜野さん、おとといここで男が二組のカップルと
ぶつかったそうです」
「ん?誰が言ったんだ」
「この猫ちゃん」
礼司が近づくと猫は逃げていってしまった
「由美に聞こえたんだな、猫の声」
「はい」
「君には退治した獣鬼のパワーが付いたんだろう」
「私だけですか?能力が付いたのは?」
「いや、浜田も沢村にも付いたはずだ」
「はい」
「まずいぞ、土田が逃走中に接触した人がもっといるはずだ」
礼司は思いついたように言った
「その人たちが鏡を見たら頭を喰われてしまうんですか?
「おそらくな」
「なんとか、助けなくちゃ」
「助けるためには鬼を退治するしかない」
そこへ浜田からの電話が鳴った
「土田が鏡を見ないように言ってきました」
「声に元気が無いな」
「ええ、一生懸命説明したんですが信用していないようです」
「わかった」
「お二人は今どちらですか?」
「まだ、ホテル街だ」
「では、北口で合流しましょう」
「おお、じゃあ武蔵小山まで乗せていくぞ」
「勘弁してください」
礼司は魔美のスマフォに電話をし
3回ベルがなるとそれを受けた。
「もしもし」
「おい、今どこにいるんだ?」
「新宿、今電話しようとおもっていたの」
「どうした?」
「そろそろお呼びかなと思って」
「おお、すぐに池袋北口に来てくれ」
「はい」
15分後に四人は合流し近くに止めてあった礼司のタクシーに乗り込んだ
「いいか、事件の全貌を話すとまずホテルラ・セゾンで土田が井上さんを
鏡に頭を叩きつけた」
礼司はみんなに話を始めた
「ええ」
ホテルの現場を見た由美はうなずいた
「その時に鏡の一部分が井上さんの首に刺さって死亡し土田は現場から逃走」
「はい」
魔美がうなずいた
「そして、ホテルを出たところで鏡鬼に喰われた
塚田道子と小西栄一とぶつかりその後、
土田は川越街道に出ると東幹夫の車と接触した」
「たぶんそうですね」
「鬼の残るは目標は土田だ」
「じゃあ鬼は警察署に現れると言う事?」
魔美が礼司に聞いた
「ああ、そんな気がする」
「ええと、今22時20分です」
浜田が時計を見ると礼司はうなずきながら
「今回の武器は?」
「無いです、ガラスを叩き割って」
魔美が笑っていった
「おいおい」
「だって鏡が人を飲み込むなんて防ぎようがもの」
「魔美、鏡が攻撃してくるタイミングは?」
「あっ、思い出した。自分の目と合った時だ」
「わかった」
礼司はタクシーを動かしコンビニエンスストアへ行った
「どうするの夜野さん」
「ちょっと待っていろ」
礼司はサングラスを4つ買ってタクシーに戻ると
「ほら」
肉まんを3つ魔美に渡して
礼司はあんまんを持った。
「サングラスをかければ鏡と目が合わないだろう」
「そうですね」
浜田がうなずいた
「まあ、失敗したら喰われちまうけどな」
「夜野さん」
魔美が怖そうな顔をして言った
「な、なんだよ」
「お茶も買ってきてよ、気が利かないんだから」
「悪い」
礼司は外へ飛び出すと浜田が魔美に向って言った。
「魔美ちゃんに弱いですね隊長。それに甘党」
「夜野さんが甘いものを食べるのは供養です」
「供養―――」
浜田は言葉を失った。
「おいお茶」
「ありがとう、夜野さん」
皆の礼司を見る目が変わっていた。
「な、なんだ気持ち悪い。行くぞ」
「はい」
三人は笑っていた
「武器は前と一緒だな。浜田がピストル、川島には小柄、
魔美は根付、俺が鬼のノブだ、いいな」
「はい」
「俺と浜田が前に出て戦う、魔美と川島は後方で待機いいな」
「はい」
魔美と由美は礼司を頼もしく思った。
タクシーを池袋警察の前につけて礼司が時計を見ると23時をさしていた
「さあ、鬼退治の時間だ」
礼司はタクシーのノブを取り替えてエンジンキーを回した
すると周りの風景が変わり
目の前にいた、路上ライブをしていた
若者が消え、何の音も聞こえなくなった
礼司は鬼のノブをはずし
「行くぞ、サングラスをかけろ」
「はい」
「浜田、土田は何階にいる?」
「地下の留置場です」
「鏡の破片は?」
「4階だったと思います」
「わかった、4階へ行くぞ」
「はい」
四人は階段を上がって
厚い扉を開けると
4つの部屋があった
「魔美、鏡鬼は?」
魔美は根付を高く上げて
根付を見るとなんの反応も無かった
「反応はないわ」
「うーん俺も何も感じない」
「どこへ行ったのかしら?」
その時、魔美の根付が緑色に
光った
「来た」
「浜田ピストルを構えろ」
「はい」
四人は身を低くし前方に
目を凝らすと
突然床が鏡になり魔美の下着を映した
「きゃー」
魔美がスカートを押えた
すると天井も
鏡になって
由美の胸元を映し出した
「きゃー」
由美は胸を押えた
「まて、いったん退避だ。このままでは俺たち全員が飲みこまれる」
「はい」
すると天井の鏡にひびが入り
それが割れて雨のように降って来た
「逃げるぞ」
「はい」
礼司は床を鬼のノブソードで床を叩くと
「ピーン」
と音を立ててひびがまっすぐ突き当たりの壁まで走った
「浜田突き当りを撃て」
「はい」
浜田は天井を5発撃ち
天井からガラスの破片が
礼司に向かって飛んでくると
ソードで叩き落した
「退避、退避だ」
四人は階段を駆け下り
表へ飛び出した
「壁が鏡に変わりますね」
浜田が呼吸を荒くして言った
「ああ」
「土井はどうしているかしら?」
「このまま、鬼を退治できないで24時を過ぎたら
完全に喰われるだろう、それまでに助け出さなくては」
「はい」
「ちょっと待て、今まで退治した鬼は?」
「汗鬼、武鬼、獣鬼、写鬼です」
浜田がすぐに答えると
「そうか、武鬼だ」
礼司は心を集中して天を仰いだ
すると空から真っ白な光が注ぎ
礼司を包んだ
そして礼司の後ろに
2mほどある首のない武鬼が立っていた
「おお」
はじめて武鬼を見る浜田と由美はあまりの大きさに声を上げた
礼司が後ろを振り返ると
「おお登場したな」
「隊長。く、首が無いです」
浜田が指をさした
「ああ、だから打って付けなんだよ。首がないから。あはは」
「でも、こいつは何者ですか?」
「味方だよ、俺たちが退治した鬼は自分で操れる、浜田は煙鬼を操れるはずだ」
「そうなんですか?」
「それで私が動物の言葉が話かるのね」
由美が言った
「ああ、そうだ」
「でも、こいつがいても天井から
鏡のかけらが落ちてきますよ」
「いや、今回現れた鏡は人間の心の中を映しているだけだ」
「えっ?」
「浜田」
「はい」
「魔美のスカートの中身を見たかったよな」
「はっ?」
「見たかったろう」
「はあ」
浜田は動揺して返事をした
「俺は由美の胸が見たかった」
「いやらしい」
魔美が軽蔑をするように言った
「そして、誰かは鏡の破片が天井から落ちてくる不安を抱いた。
誰かは廊下の先が見えない事を不安に思った」
「それは私が思ったわ」
由美が天井を見た
「じゃあどうすれば」
「あの、4階の破片のある部屋に何も考えず
目を閉じたまま行くんだ」
「サングラスでは」
「だめだ、見えればまた同じ事を考える」
「なるほど」
「俺一人で行くぞ」
「それは危険では」
「四人の誰かが少しでも考えたら終わりだ、だから俺が行く」
「分かりました、気をつけて」
由美が心配そうに返事をした
「武鬼行け!」
礼司は武鬼に合図を送ると
甲冑の紐を握り後ろを付いて行った
「1・2・3」
礼司は歩数を数えながら武鬼が正面のドアを開けた音を聞いて
「24歩か」
礼司は部屋に入り目を開くと
テーブルの上に有った鏡の破片をシルクの袋に入れた
「任務完了・・・・・・・・・・・・・・・なわけないか」
回りも見渡し
「鏡鬼がいない」
礼司は部屋を飛び出し
三人の下へ走った
「鏡鬼がいないぞ」
「えっ?」
浜田が驚いて言った
「土田は?」
「鬼の世界にはいないわよ」
「じゃあ向こうに戻るぞ」
「はい」
23時23分
元の世界にもどると、浜田が池袋警察に電話をし
向こうからの返事は歯切れの悪い返事が返ってきた
池袋の留置所
鉄格子のドアの覗き窓が黒く光を反射すると
土田の音もなく消え血液が床を濡らし
他の留置された男たちが声を上げた。
******
「土田はどうしたんですか?」
礼司は聞いた。
「実は留置所で死亡しました」
浜田は礼司の顔を見て首を横に振った。
「分かっていたことだが・・・」
「これで井上さんの復讐は終わったけど“復讐の連鎖”は終わらない。
だって、三人は関係者じゃない」
魔美は壁にもたれかかった。
「鬼は鬼の世界で俺たちの足止めをして、土田を襲ったんだろう。
鬼には意識と思考力がある」
礼司は恐怖心を持った。




