写鬼④
「ええ、まあ」
「あはは」
「すみません、ではこのつり橋を渡ったら一気に山を登ります」
「了解、魔美大丈夫か?」
「うん、お尻がちょっと痛いだけ」
「あはは、我慢しろ」
魔美はいやな顔をした
そして、沢村はバイクのエンジンをふかし
走りだした
幅50cmほどの板がしいてあるつり橋を渡り
獣道ほどしかない急な斜面を
二台のバイクが頂上に付く頃には
日が山並みに日陰が出来ていた
「日暮れまであと少ししかありませんよ」
「ああ、分かっている」
礼司はバイクから降りて周りを見渡し
何かを見つけた
礼司は歩き出すと
「夜野さん待ってください」
魔美と沢村が追いかけた
そこには小さな石舞台と社があった
「どうしたんですか?」
「見つけた」
すると、礼司が持っていた根付が光りだした
「ここから霊気が出ているぞ」
礼司がそういいながら赤い社の
小さな扉を開けると
そこから光が出て
三人の立っていたところが大きく割れ
魔美の悲鳴とともに何メートル、
何十メートルもの底に落ちていった
ドスンという軽いショックで体が止まり
「きゃー」魔美は声を上げると
そこは護摩壇に護摩の火が燃えている
洞窟のようなところだった
「ここは?」
魔美が周りを見渡すと
「誰かが住んでいいますね」
沢村が言った
「どうして?」
「護摩の火が燃えています」
「あら、夜野さんは?」
魔美と沢村が周りを見渡した
「夜野さーん」
魔美は不安になって夜野を呼んだ
「おお」
礼司は魔美たちのいる反対側の
護摩壇の後ろから歩いてきた
「よかった」
魔美がホッとして礼司を見ると
顔が泥だらけになって
笑っていた
「凄い距離を滑ったようですね」
沢村はまだ興奮を隠しきれないように言った
「ええ、長かったよ」
礼司は上を見上げた
「ここはどこなのかしら?」
「地下深くだな」
「でも火がついていますから、誰かがいるはずです」
「うん、魔美呪鬼はこの火の中に呪う人間の名前を書いて
燃やすんだろう」
「うん、そうよ」
「ここかも知れないな」
「ええ、でも祈祷師がいないわ」
「ああ」
礼司がまわりを見渡すと反対側に
小さなが穴が開いていて
そこに黒いスマフォ
置いてあった
「この電話?」
礼司が電話に手を伸ばすと
電流が走った
「痛て!」
「どうしたの?」
「だめだ触れない、結界が張ってある」
「結界?」
「そうだ」
魔美はスマフォの画面を覗き込むと
真っ黒になっていた
「何も見えない」
礼司はしばらく考えると
「もし、スマフォ殺したいやつらの
名前を書いてここに送って火に
入れたらその人は死ぬんじゃないか」
「えっ」
洞窟の中を歩いていた沢村声を出した
「そうかもしれない」
魔美がうなずいた
「魔美、ここから出る方法は無いのか?」
「ええと、ここは鬼の世界じゃないから落ちた場所
から這い上がるしかないんじゃないかしら」
「一度外に出ないと何も出来ないな」
礼司は天井を見上げながら苛立っていた
「ええ」
「浜田に連絡したいなあ」
「だめ、スマフォが通じない」
魔美がスマフォを持って言った
「夜野さん、この赤いスマフォは電話が通じるんですかね」
「そうか、やはりこの結界を破らないと話にならんな、魔美ノブを貸してくれ」
「はい」
魔美はバックからノブを取り出して礼司に渡した
「ありがとう」
礼司は右手にノブを握り左手で
スマフォの入っている穴に手を突っ込んだ
すると礼司の手は緑色に光
バチバチと青白い火花を散らした
「大丈夫夜野さん」
「ああ」
礼司はスマフォをつかんで穴から取り出した
それは普通のスマフォとまったく変わっていなかった
「どう?」
「なぜか電源も切れていない。画面が黒かったのは省エネモード
だったからだ」
「電源どうしたのかしら?」
「おい、このスマフォにメールが来ているぞ」
礼司はメールの履歴を見ると唖然とした
「どうしたの?」
「この写真を見ろ」
礼司はスマフォの画面を見せた
「これって花田大介じゃないですか?」
何も知らない沢村が言った
「ああ、他にも写真が写っている」
魔美が覗き込むと
「ガードマンみたい」
「うん」
車の前に立っている男性が二人
写っていた
「これって例の次官か?」
「そうかもしれない。そしたらこのメールで送られてきた
写真の人間が全部死んでいる」
他のメールを開くと
年寄りの顔が次々に映っていた
「じゃあこの老人も?」
「ああ」
「どうしたんですか?」
沢村は不思議そうに聞いた
「今説明する」
「はい」
「魔美メールの送り主は全部同じだ」
「誰かしら」
「調べなきゃ」
「ああ、戻るぞ」
「どうやって?」
礼司は鬼のノブを持つと
「沢村さん俺の手を握って」
「えっ、手を握っているんですか?」
沢村は照れくさそうに礼司の左手を握った
それを見ていた魔美は右手に抱きつき
礼司が念じると、一瞬で地上の社の前に出ると
そこはすでに明かり一つない暗闇だった
「何があったんですか?」
沢村が言うと
「それも後だ」
「この暗さじゃ山を降りるのは危険です」
「そうだな、じゃあもう一度同じ事をするか、沢村さんバイクにまたがって」
「は、はい」
礼司は自分のバイクに乗り魔美を呼んだ。
「魔美乗れ!」
「はい」
魔美が後ろに乗って
鬼のノブを握り片手で沢村のバイクに手をかけ
念じると一瞬で沢村の家に着いた
「ああ、ここは」
「沢村さんの家です」
「はあ、分かっていますけど・・・・」
「沢村さんこのまま東京に戻りますが、一緒に行っていただけますか?」
「は、はい」
「大丈夫ですすぐ戻りますから」
三人はタクシーに乗り込む
礼司は鬼のノブをつけて
エンジンをかけた
「ああ、弟さん見ているな」
礼司はしばらく走らせると
「ここだ」
礼司はアクセルと
思い切り踏み込むと
タクシーは金色の光を残して
消えていった
タクシーは青山霊園の前に着くと
沢村は周りを見渡した。
「ああ、ここは?」
「東京青山霊園前です」
「はあ」
沢村はおどろきっぱなしだった
礼司はすぐに浜田に電話をかけた
「夜野です」
「お疲れ様です」
「今沢村さんを連れて東京に着きました」
「本当ですか?」
「はい、それで富田さんの持ち物は保管してありますか」
「ええ、両親が来ていますがまだ渡していません」
「良かった、それを見たいんだ」
「はい、どこへお持ちしますか?」
「青山にいる、そっちへ向かうから」
「分かりました、お待ちしています」
礼司は続けて由美に電話をした
「沢村さんを連れて東京へ戻ってきた、今から警視庁へ向かう」
「はい、私も行きます」
礼司たちが警視庁に着くと
捜査一課の側の部屋に通された
「ここが警視庁か、懐かしいなあ」
「ん?懐かしい?」
「沢村さん、来たことあるの?」
魔美が聞くと沢村は周りを見渡した
「いいえ、初めてです」
そこへ、浜田がスマフォを持って
入ってきた
「ああ、沢村さん」
浜田はうれしそうな顔をすると
沢村は立ち上がっては浜田に頭を下げた
「そうか、浜田の方が階級が上か」
礼司は笑っていった
「夜野さんこれが、富田さんが持っていたスマフォです」
礼司がスマフォのデータホルダーをあけると
次々に写真が出てきた
「これって、こっちの赤いスマフォと同じ写真」
「おお、そうだ」
「そうです。花田大介と国土交通省の次官です」
「やはりそうか。この年寄りは?」
「国会議員です、汚職で話題になった。先日亡くなりました」
そこへ川島由美が入ってきた
「遅れてごめんなさい」
「いいえ」
「沢村さん」
由美は大声を上げると
その声で沢村は頭を下げた。
「川島先生だんだん分かってきたぞ」
「そうなの」
礼司はスマフォのモニターを見ながら
「この老人たちはなんだろう?」
「調べてみないと分かりませんが、富田さんが
勤めていた病院の入院患者じゃないかと」
「死んだ患者か」
「たぶん」
「ところでこの人相の悪い連中は?」
「さあ、わかりません。ヤクザかも」
「ヤクザ?」
「この連中も死んだのかな?」
「そうか、生活安全課に聞いて見ます」
浜田は急いで部屋を出て行った
「沢村さん、記憶は戻りません?」
「ええ、さっき夜野さん大体聞いたんですけど
記憶は無いですね。でもあなたの顔をどこかで見たような気がします」
「少しは記憶があるのかしら」
「浜田さんの時も由美さんの時も鬼を
退治した後に記憶が戻ったのよね」
魔美が礼司に念を押した
「そうだったな」
「じゃあ、沢村さんも鬼を退治した後じゃないと」
由美はそう言って自分の目の前で
鬼が礼司に倒された時を思い出した
そこへ浜田が戻ると
「夜野さん。分かりました」
「うん」
「六本木のヤクザでした」




