十四章 写鬼③
「この先は調べないと分からないな」
「うん」
「行ってみるか?」
「そうだね」
その時、庭師の親方が話し始めた
「そう言えば他に行方不明になった連中が何人かいたな」
「ええ誰だった?」
上杉が聞いた
「ほら、駅の近くのビルにいた藤堂組の連中です」
「ああ、そうだそうだ」
そんな会話が聞こえてきた
「えっ、どんな事件だったんですか?」
礼司は上杉に聞いた
「ああ、駅前のやくざが全員消えてなくなったんですよ」
「いつの事件ですか?」
礼司が身を乗り出した
「15年くらい前だったかな」
「そんな昔ですか?」
「はい、最初組員が五人いなくなって」
「ええ」
「その時は組を逃げ出したという噂でしたけど、その後
残りの組員も姿を消したんだ」
「じゃあ、組長も困ったでしょ」
「結局、その組長も消えてしまった」
「それって。どっかの大きい暴力団につぶされたんじゃないですか?」
礼司が決めつけたように言うと
「それが、その後敵対する暴力団も町から消えたんだ」
庭師の親方が言うと
「そりゃ平和になりましたね」
礼司は笑っていった
「夜野さん、やくざは鬼に食われたんじゃ」
魔美が礼司の耳元で囁くと
「ああ、そうだな。魔美」
礼司は真剣な顔をしていった。
「こんにちは」
玄関で声が聞こえると
上杉の嫁が出て
「いらっしゃい」
と言う声が聞こえた
礼司たちがいる部屋に
男が通されると
「こんにちは」
礼司と魔美は男の顔を見て
驚いた
「沢村」
「はい?」
「夜野さんご存知なんですか?」
上杉が聞いた
「私は初対面ですよね」
沢村が不思議そうな顔をして言った
「ああ、初めまして」
礼司が言うと
魔美が笑った
「おじさんどうしたんですか?」
「庭石の下から人骨が出たんだよ、だから調べてもらおうとおもってな」
「ええ、古い人骨はゴミといっしょですから、警察を呼んでも」
上杉は人骨が出たときに
親戚の沢村を呼んでいた
沢村と礼司たちは
庭に出て人骨を調べた
「この骨は古いですね」
「そうだな、私が子供の頃からここに、この石があった」
「わかりました、僕のほうから警察に電話して処理を聞いてみます」
「頼むな」
「はい」
「上杉さん」
礼司が上杉に声をかけると
「はい」
「沢村さんは白バイ隊ですか?」
「そうです、さすが夜野さんですね。そんな事も分かりますか?」
「ええ、まあ」
礼司はこぶしを握り締め
「魔美、いたな」
「うん」
礼司は浜田に電話をした
「沢村がいたぞ」
「どこですか?」
「山形県の鶴岡だ」
「どうしますか?」
「一応山形県警の沢村忠志を調べてくれ」
「分かりました」
「上杉さん、そろそろ」
「夜野さん、もうお帰りですか?」
「はい」
「もっとゆっくりしていけばいいのに、5分で帰れるんだから」
「しっ、内緒ですよ」
「すみません」
「富田さんのお寺に行ってきます」
「ああ、そうですか」
「あ、僕が案内します」
沢村が声をかけた
「そうですか、助かります」
礼司が沢村に礼を言った
上杉と勝子は
タクシーまで見送ってくると
深々と頭を下げ何度も礼を言った
沢村は助手席に乗り
魔美は後ろの席にゆっくりと座った
「さあ行きましょうか」
沢村が声をかけた
「はい」
「あの、さっき私にいきなり沢村と声をかけましたが
似た人を知っているんですか?」
「ああ、知っています。沢村忠志さんを」
「ええ、同姓同名なんですか?」
「そうです」
「へえ、偶然ですね」
「ええ、沢村さん私の事記憶にありませんか?」
「ええ、実は何か気になって付いて来たんですよ」
「やっぱりね」魔美がにっこり笑っていった
「何がですか?」沢村は後ろを振り返って魔美に聞いた
「夜野さん説明しようよ」
「ああ」
「なんの説明ですか?」
「実は我々は沢村さんを探していたんです」
「私をですか?」
「はい」
「どんな理由で?」
「厳密に言うと私じゃなくて浜田裕也、川島由美が探している」
「ど、どんな人ですか?」
「二人とも沢村さんのお友達かな?」
「えっ、私はそんな人知りませんよ」
「そうですね」
タクシーはいかにも歴史がありそうな
小さなお寺の豊光寺の前に着くと
「ここです。降りましょうか」
沢村は礼司に向かって言った
境内に入ると右側に住居があり
富田という名の表札を確認した。
「ここですね」
礼司は玄関を開けて礼司は大きな声で言った
「こんにちは」
「はい」
老女が奥の部屋から出てきた
「住職はいらっしゃいますか?」
「いいえ、まだ東京さ戻ってねんだっけ」
老女の訛りはひどく意味が分かりにくかった
「まだ、東京から戻っていないそうです」
沢田が親切に説明してくれた
老婆は富田夫妻の留守番で
まだ連絡は入っていなかった
「夜野さん近くを散策しませんか」
三人はお寺の前の坂を上ると切り株に腰を下ろした。
「沢村さん、信じられないでしょうが聞いてください」
「はい」
礼司は自分の霊能力、向こうの世界のテロ、
そして、五人のSSATのメンバーがこっちへ
飛ばされた事、そして浜田と川島が沢村を探していること
を説明した
「はい、大体分かりました、何かSFかファンタジー映画の
話みたいでピンと来ませんけど」
「そうですよね」
「でも、夜野さんの能力は信じます。あの石の下に
お骨があった事や勝子さんの認知性が治った事で」
そこへ浜田から電話があった
「夜野さんいました沢村。顔も年齢もみんな同じです」
「そうか」
「今から会いに行きます」
「いや、沢村さんとは一応話をした、信じてはくれていないけどな」
「そうですね」
「由美さんにその旨連絡をしておいてくれ」
「はい」
礼司は周りを見渡しながら異様な雰囲気に気づいた。
「魔美何か感じないか?」
「うん、あっちの方」
「そうだ、あの山の頂上だ」
礼司が指差す山の間に川が流れていた
「夜野さんあの山は人が渡れるくらいの
つり橋しかないんですよ。
その先も登山道しかありません」
「分かった、歩こう」
「ええ?着くのに日が暮れちゃうよ」
魔美が嫌な顔をした。
「夜野さん本当に日が暮れてしまいます」
「でも、行かなくちゃならんだろう」
「はい、それならなおさらです。一度戻って俺のオフロードバイクに乗り換えましょう」
「分かった」
礼司たちはタクシーに戻り上杉の自宅から南の方へ向かった
「沢村さんバイクを2台用意できないかな?」
「大丈夫です、弟のバイクがありますから」
「ありがとう助かるよ」
タクシーに乗って20分ほどで沢村の家に着くと
弟が2台のオフロードバイクを用意していた
礼司はヘルメットをかぶり
「魔美後ろに乗れ」
「大丈夫なの?」
「夜野さん大丈夫ですか?」
「あはは、大丈夫だ」
「では後を付いて来てください」
そう言って沢村は走り出した
しばらく走ると沢村は山に入り
バイク1台がやっとの上り坂を
登るとそれに追てくる礼司のテクニックに驚いた
そしてつり橋の前で沢村はバイクを止めた
「夜野さん、凄いですね」
「まあな」
「俺は一人なのに魔美さんを乗せて走るなんて」
「なんだ、俺を試したのか?」
「ええ、まあ」
「あはは」




