十二章 武鬼②
―3時間30分前―
銀座のレストラン
佐々と女性が話をしていた
「どうしても帰るのか?」
「ええ、父が心配」
「僕も明日京都へ行く」
「分かっているわ。でも早く帰らなきゃ父が心配」
「僕だって現場が見たいんだ、ひょっとしたら遺跡かもしれないから」
「それは、文化遺産保護の立場でしょ。もし工事が遅れたら会社がつぶれてしまうわ」
「もしかしたら歴史的な発見かも知れない」
「そんな馬鹿な話しあるわけないわ」
「今日は大切な日だって知っているだろう」
「ええ分かっているわ、でも五人も死んでいるの」
「お父さんが恨みかなんかをかっているんだろう」
「そ、そんな父じゃない」
真由美は立ち上がった
「真由美!!」
真由美は外へ飛び出しタクシーへ飛び乗り東京駅へ向かい
21時発ののぞみに乗った
― 一週間前 ―
「人骨がでたぞ~」作業員が大声で怒鳴った
「やっぱり出たか」工事現場監督の北村が言った
「監督どうしますか?」
「とりあえず、警察に電話する」
北村が警察に電話をするとさんざん回されたあげく
「ああ、でましたか」
「はい」
「どれくらい前のか分かりますか?」
「かなり古いと思います。甲冑が一緒にありましたから」
「そうですか。三十年以上のものだと警察は関知しませんから処分はお任せします」
警察はそっけなく返事をした
「おい何体の骨が見つかった?」北村は作業員に聞いた
「全部で六体なんですが・・・・」
「ん?」
「首がないんです」
「ああ、首検めに持っていってしまったんだな、残酷な話しだ」
北村がそう言うと電話をかけ始めた
「社長ですか、北村です」
「お疲れ様、何かあったか?」
「ええ、人骨が出ました」
「まあしょうがない、警察へは?」
「連絡しました、こちらで処分してくれと言うことでした」
「うん、遺跡の様子は?」
「ありません、大きな石があってそれを取ったら六体の人骨が有ったんです」
「来週佐々君が来るから相談してみよう、骨は保管して後で弔ってあげよう」
「はい」
それから六日後の夜の工事現場
「おい、取り壊し中だから何もないぜ」
「ああ、コンクリートばかりだ」
三人の男が工事現場を歩いた
そこに徹の箱があるのを見つけ
「これは?」
「これは下にキャスターもついているし」
「中はなんだ」
「あああ」
「骨だぞ」
「外に出せ!!」
「痛て!」男の一人が指を切ってその血が骨に落ちた
男達が去った後その人骨が青白く光った
翌日の夜飯場に甲冑に首無の武者が刀を持って
入っていった
「あー」
「ぎゃー」
悲鳴が一瞬聞こえたがすぐに静かになり
出てきた首無の武者の刀にはたっぷりと血がついて
ポタポタと血が落ちていた
✳✳✳✳✳✳
23:08分
京都駅ホームに下り線が入って来た
佐々は礼司に言われたとおり2号車の前で待った
のぞみの前に立っていると
悲しそうな顔をした女性がステップを降りた
「あっ、佐々さんどうやって?ここに?」
真由美は呆然としていた
「ああ、飛んできた」
「ああ、飛行機ね」
「まあね。さっきは悪かった」
「いいの、私も興奮していたから、父の事が心配で・・・。」
「うん、実は今日は別な話があって」
「なんなの?」
「い、いや」
「とにかく、お父さんと話がしたい」
「分かったわ」
「うん」
新幹線ホームから二人は駆け下りると佐々は礼司のタクシーに乗った。
「お待たせしました、東山へ行ってください」
「はい、でもどこだ?」
「清水寺の方です」
真由美が言った
「夜野さん、国立博物館の近くですよ」
佐々が小声で言った
「ああ、納得。じゃあ行きます」
「夜野さん戸田真由美さんです」
「夜野です」
礼司は女性に向かって頭を下げた
「私は魔美です」
魔美が頭を下げた
「はい・・・・?」
真由美は佐々がなぜ自分を紹介されたか助手席に少女が乗っているのか
意味が分からなかった
「夜野さんは霊能力者で地獄タクシー呼ばれる有名な方です」
「そうなんですか?」
「ええ?佐々さんどうしてそれを」
「実は鑑定家の中丸先生の弟子だったんです、
時々先生についてテレビ局へ行きましたよ」
「はあ」
「夜野って珍しい苗字だから覚えていたんですよ」
「地獄タクシーの噂は?」
「キャバクラで」
佐々は礼司の耳元で囁いた
「あはは、分かりました」
真由美の家の玄関に着いた
「わあ、大きい家」
魔美が言った。
「真由美さんの家は大きな建設会社を経営しているんだ」
「わあ、お金持ち」
「ありがとうございます。夜野さん助かりました」
「いいえ」
「そうそう、奥は展示室じゃなくて地下の倉庫の中にあります」
佐々は閉まりかけのドアから顔を出していった
「えっ?」
「彼、聞いていたの?」
「まあ、いいとにかく急ごう」
「そうだね。もう23時20分よ」
礼司はアクセルを踏んだ
車は5分ほどで国立博物館に着くと
大きな塀が閉ざされ正面には噴水とその奥にはレンガ作りの建物
右側にはそれよりも近代的な白い建物があった
「例の作戦か?」
「うん」
礼司は鬼のノブを回し鬼の世界に移動し一度バックし扉にぶつかって
壊し白い建物の前に車を止めるとノブをはずし車から降りた
「地下だね」
「うん、信じよう」
階段を下りると保管室の前に立った
「さあ、行くぞ」
魔美は礼司の手を握った、そして礼司は保管室のドアにぶつかった
すると目の前のガラスケースの中に美しく輝く日本刀が見えた
「こ、これか国宝の刀」
「そうみたい」
「でも参ったな、これは柄も鍔も鞘もないぞ」
「でもしょうがないよ、ああ人が来たら大変よ」
「ああ、ではちょっとお借りします」
礼司そばに有ったシルク風の布に包んで手に持って
二人は再びドアにぶつかって鬼の世界に戻った。
建物の前に止めてあった車に乗って門から出ると
道路に車を止めた
「おい、あの門はどうなるんだ」
「直るんじゃない、このタクシーも無傷だし」
「なるほど」
礼司は布から刀を取り出し茎(刀の握りの部分)の部分を握った
すると目の前に鬼の姿が次々に浮かんできた
「なるほど過去にこの刀で誰かが鬼を退治していたようだ」
「そうなんだ、ひょっとしたら夜野さんじゃない」
「俺?馬鹿な。ところで刀の情報知らなかったのか?」
「うん」
「まったくどういう訳なんだ」
「えへへ、内緒!」
「ところで柄がないと握れないぞ」
「それは持っている」
魔美は背負っていたリュックから柄と鍔を取り出した
柄は黒地に鬼の模様が施されたもので鍔は鬼の細工がしてあるものだった。
「これってまたピッタリはまるんだろう」
「そうよ」
礼司は目釘をさして刀を固定させると
「おお、凄いパワーが来る気がする」
「ほんとう?」
「うん、じゃあ行こうか」
「はい」
礼司は鬼が出た四条大宮へ向かった
「おい、後何分だ」
礼司焦っていた
「大変25分しかない」
「仮面ライダーの何とかソードなら一撃なんだろうけど」
「ええ、強かったらどうしよう」
5分後に工事現場に着いた二人が見たのは
京都戸田建設という看板だった
「これって真由美さんのお父さんの会社かしら」
「たぶん」
そこの入り口は警察の黄色いテープが張ってあった
「いつもこんな場所ね」
「あはは、それが仕事だ」
礼司は車から陸奥守吉行を持って工事現場に入りこんだ
そこから10mくらいの所の飯場の前に二人は立った
「おい居ないぞ」
「うん、何も感じないね」
「骨は?」
礼司は刀をあちこちに向けていた
「あっちだ」
2階建ての飯場1階の奥に霊気を感じた礼司が前に進むと
「ん?骨は?」
「それはあっちの世界、こっちは鬼の世界よ。本当ならここに鬼がいるはずなんだけど」
「おい、じゃあまた戻るのか?」
「ん~、実はあまり行ったり来たりすると夜野さんの霊力がダウンするのよね」
「そ、そうなんだ?知らなかった。ずっとか?」
「ううん、その日だけ」
「なあ、魔美ひょっとしたら戸田さんの自宅に」
「まさか、人骨よ」
「もし、戸田さんの自宅だったら?」
「ええ。佐々さんたちが皆殺しになる」
「ああ、確認を取るぞ」
礼司たちは飯場の壁にぶつかり
鬼の世界から戻って霊気の出ていた場所を確認した
そこには鉄の箱があり、ふたを開けると首の無い人骨が五体分有った
その頃、戸田邸では
真由美の父肇と佐々と真由美が出土品を前にして話していた
「これは十字架ですね」
「うん、やはり織田信長と関係が有ったんじゃないか?」
「ええ、キリシタンですからね。ん?4つですか?」
「ああ、十字架は4つしかなかった」
「人骨はどういう状態で葬ってあったんですか?」
「重さ1tの石の下に有った」
「そ、それって封印の石では?」
「封印の石?」
「はい、処刑した者の霊が恨み持って復讐しないように封印したんですよ」
「なるほど、奴らを恐れていたわけだ」
「刀とか甲冑は?」
「ボロボロだったから骨と飯場に置いてある、あまりいい物ではなかったがな」
「解かりました、明日現場へ行きます」
「うん、明日は工事が再開できるはずだ」
「ところで、五人は誰に?」
「う~ん、警察が調査中だが、私には工事の妨害を受ける心当たりが無いんだ」
肇は肩を落としていた。
「しまった、夜野さんに現場を霊視してもらえばよかった」
「霊視?」
「ええ、封印の石を取ったために武者の霊が動き出した可能性がありますからね」
「では、うちの五人は霊に殺されたって言うのか?ま、まさか」
「いいえ、その可能性はあるかも知れませんよ」
そこへ佐々のスマフォへ礼司から電話があった
「はい、佐々です」
「夜野です」
「ああ、先ほどはありがとうございました」
「四条大宮の工事現場の京都戸田建設の社長は真由美さんのお父さんかな?」
「はいそうですよ」
「じゃあ、そこで見つかった骨は?」
「はい、飯場にあります」
「そうですか。ありがとうございます」
「ちょちょっと、待ってください。こっちへ来て貰えませんか。相談があります」
「はい、用が済んだら連絡します」
「何時ごろ?」




