面白い話が聞けて嬉しいわ
「聞いて良いのか
分からないけれど…」
「はい、何かありましたか?」
「貴女は、婚約者は、いらっしゃるの?」
「いえいえ、今のところは、いませんね!」
「あら、そうなの?独身の私が言うのはおかしいかもしれないけれど、珍しいわね?」
私は、今年の春に、20歳になりました。
しかし、その20歳になった今でも、いまだに婚約者は、決まっておりません。
今のように清掃担当侍女見習いとして働いて、のんびりと探そうかな、と思っております。
「はい、私は、跡取りの妻ではないので、結婚に関しては、自由にして良いみたいですよ?」
「つまり、妹さんには、いらっしゃるのね?」
「はい、いますよ。」
「どのようなお方なのかしら?」
「王立騎士団の騎士見習いで、カイルドス子爵の次男にあたります、カトロン様です。」
「あらあら、ミレインヌ夫人のご子息の…?」
「はい、そうなりますね。」
カトロン様のご生母であるミレインヌ夫人は、王妃様に仕えている侍女のひとり。
つまり、私達の大先輩のベテラン侍女様です。
ベテラン侍女様がお姑様となる妹は、大変そうなのですが、娘が欲しかったらしいミレインヌ夫人に、サーラシュカは、なんだかんだ可愛いがられているようなのです。
姉としては、それを知って、ホッとしました。
ミレインヌ夫人は、後輩侍女である私達には、非常に、厳しいお方なので…
ちなみに、厳しく接してきた私が、可愛いがる対象の義理の娘サーラシュカの姉だと知って、なんだか複雑そうでしたけれど。
「次男様が婿入りして下さるみたいで。」
「まあ!そうなのね!あのミレインヌ夫人が育てられたお方なら、大丈夫でしょう!」
「はい、次男様は、サーラシュカを大切に想って下さっているみたいで、安心しています。」
「ふふ、それはそれは、良うございました」
妹のサーラシュカの婚約者は、子爵家の次男坊として、誕生された方です。
カイルドス子爵次男カトロン様は、騎士見習いとして、王立騎士団の内部にて、寮生活中。
実家アステリノ男爵家の跡取り娘に婿入りしてから、彼が男爵位を受け継ぐ予定なのです。
若い頃は、騎士として働いて、定年を迎えたら商会長となる約束となっています。
後に、商人として働く妹が、彼を補佐しながら商会長夫人となるのでしょう。
「ふふふ、面白い話が聞けて嬉しいわ。
ありがとう、リュネシュカさん。」
「いえいえ! こちらこそ!
ありがとうございます、メアリー様!」