どちらに寄りましたか?
「父上、アステリノ男爵令嬢」
「うん? どうした、アストゥロ?」
「はい、僕も、アステリノ男爵令嬢とお話したいのですが、今、宜しいでしょうか?」
「そうなのか? なら、こちらに来なさい。」
「はい!ありがとうございます…!」
アストゥロ様が、るんるんで、アイラード様と反対側のお隣に座って下さいました。
8歳の割に身長は高めで大人びて見えますが、ちょこんと座る姿は、可愛いらしいです。
「アステリノ男爵令嬢は、どうして、王都から、こちらに、来られたのですか?」
「私は、王城の清掃担当侍女見習いなのですが、先輩のメアリー様に、夏休暇の間、実家に帰省しないのならと、こちらの辺境伯領に、一緒に旅行しないか、と誘われまして。」
「ああ、なるほど!女性二人旅だと危ないから、冒険者に護衛依頼を頼んだんですね!」
「ええ、ええ、そうです。」
それにしても………
アストゥロ様は、本当に、8歳児ですか?
こちらの少年は、8歳にしては大人びていて、とても会話がしやすくて、賢い子ですね。
「私は、初めての旅行なので、いろいろなことが新鮮で、とても楽しかったですよ。」
「良いですね!
どちらに寄りましたか?
僕は、まだ旅行には出たことがありません!
いずれ経験してみたいので教えて下さい!」
「はい、そうですね。
エルドー伯爵領の温泉街、サイディー伯爵領の硝子細工専門の博物館、アタルダ村の酪農場、そして、ラベンダー畑に寄りましたよ。」
「うんうんうん!いろいろと気になりますね!
あ、サイディー伯爵領も寄ったんですか?」
「あっ! 申し訳ありませんっ!」
ああ、そういえば、次期伯爵様は、サイディー伯爵令嬢を御生母に持つ…!
父母が離縁されたとはいえ、実母の住まう所の名を気軽に出してはいけなかったかしら!?
「えっ!?ああー、もしかして、僕の実母の件の話を、誰かに聞きましたか?」
「は、はい! お聞きしております!」
「ああ、やっぱり?
僕は、実の母親の顔を、全く知りません。
産まれて、すぐに、離縁したそうですからね、育ての親は、この伯爵邸に住まう侍女達です。
気にしていませんから、大丈夫ですよ?」
「次期伯爵様が、気にしていなかったとしても、初対面なのに配慮が足らず、口に出すべきではありませんでした。申し訳ありません。」
「アステリノ男爵令嬢は、真面目なんですね!
大丈夫ですよ、ねえ、父上?」
「ああ、大丈夫だよ、リュネシュカ嬢」
「まあ! おふたりは、優しすぎますよ…!
ありがとうございます…!」
可愛い8歳児に気を遣わせてしまいました。
いろいろと未熟で、至らぬ私です。
アイラード様も次期伯爵様も、お優しい!




