番外編 マグノリア
この度、注目度ランキング(完結編)で1位、全て部門でも4位を取ることができました。これは読者の皆様のおかげです。ありがとうございます\(^o^)/
この機会に、書こうと思っていた番外編、その後のマグノリアとメレーヌ編を投稿しました!
楽しんでいただけると幸いです♪
「リア、あいつが王太子をおろされたようだ」
シーナに謝罪をしたマグノリアとテレンスは、現在様々な街に滞在をしながら帝国へと歩みを進めていた。薬師の修行として様々な人の元で従事してきたこと、それが良い方向に働き、彼女の薬師としての意識がだんだん変わっていったのだ。
今までは家族に振り向いてもらうための薬作りが、今では他の人を助けるための薬作りと考えられるようになってきたのである。
その意識を変えた一人はもちろんテレンスで、彼は身体の大きさに似合わず非常に手先が器用だった。そして細かい作業もお手のもの。早いけれど丁寧な仕事は、彼の師匠であるボーナの教えだろう。
そんなことをぼーっと考えていたマグノリアだったが、テレンスの言葉を聞いて顔を向けた。
「あの方、やらかしてしまったのね……」
マグノリアとしても焚き付けた手前、申し訳ないことをしたと思っていた。家を追い出されたことが糧になっているので、自分は結果的に良かったのだが、彼は違うからだ。
マグノリアが渋い表情をしていることに気がついたテレンスは、話を続けた。
「リアが全ての責任を負う必要はない。確かにリアが焚き付けたのは事実。あれがきっかけになったのも事実ではあるが……きちんと調査したり、他の者の話を聞き入れたりすれば更生の道は残されていたんだ。それを突っ走ったのは、あいつだ。そもそも、俺としては今分かって良かったんじゃないかと思っている。上が無能だと、皺寄せが来るのは下だからな」
「テレンス……」
彼の言葉に少し心が軽くなる。
焚き付けたという事実は変わらない。この部分はきちんと心にしまうべきだけれど、それはそれ、これはこれだ。
「それと、ヴェローロの薬の質が落ちているらしいぞ? シーナさんの後に入った薬屋の店員の質が悪いのか……薬を高値で売る割には、効果が薄いと街の人があの薬屋での購入を控えているそうだ。その分、グエッラ商店の薬が売れ始めているらしい」
「侯爵家は王宮にしか薬を卸さないし……ヴェローロの薬学はこれ以上発展しないわね」
「そこをリアが頑張るんだろう?」
「……そうね」
色々な薬師の元で話を聞いて思った。
貴族も平民も関係ない。皆が健やかに生きるために、薬が必要なんだと。改めて薬学とは何か、を理解できたような気がする。
「数十年前までは薬師の国として有名だったファルティア王国も、ここ数年は新薬ができていないものね……これから薬学が発展していきそうなのは、やはりシーナさんのいるナッツィアと……グラスター帝国」
「そうだな」
テレンスもマグノリアの言葉に同意する。
「帝国で様々な方とお会いできるのを楽しみにしているわ」
「ああ。また一人で突っ走るなよ?」
「もうしないわよ!」
一度テレンスを置いて先走ったマグノリアが、街中で迷子になったのは最近のこと。どうやら彼女は方向音痴らしく、テレンスと追いかけっこをする羽目になったこともあった。
肩をすくめる彼に、マグノリアは口を尖らせる。そして――。
「……一人で走りそうになった時は、きっとテレンスが止めてくれるでしょう?」
上目遣いで恥ずかしそうに告げるマグノリア。そんな彼女を見て、テレンスは目を見張る。そしてマグノリアへと微笑んだ。
「……もちろんだ」
共に旅する二人は、いつの間にか固い信頼関係で結ばれていた。




