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4、薬師の弟子と、ご対面

 扉が開く。

 マシアとサントスの名前が呼ばれ、二人は広間へと入っていく。その後シーナとリベルトの名前も呼ばれた。


 二人が入っていくと、参加者からの視線が刺さる。

 シーナは自分が見られている、と思った。

 周囲からの視線が刺さる……貴族でない自分が、侯爵家の養女になったからだろうとシーナは思っていた。実はリベルトがエスコートをするのは彼女が初めてだったからだとは気づかない。

 

 二人は先に席へとたどり着いていたマシアとサントスの元へと歩いていく。参加者の中には、シーナの事を平民だと馬鹿にしていた者もいたが、彼女の堂々とした姿を見て息を呑む者も多かった。

 シーナたちが席に着くと、国内の貴族たちは全員が集まったらしい。次は来賓が呼ばれるようだ。

 

「ヴェローロ王国、使節団の皆様のご入場です」


 その声で先頭に現れたのはイーディオとアコルドの二名。後ろから使節団に参加している人たちの顔色は少々悪いように見える。

 イーディオとアコルドの二人は胸を張って歩く。またキラキラしているな、と思ったシーナの耳に周囲の声が入ってきた。


「あら、とても素敵なお召し物ですわね、まるで太陽みたい」

「ええ、装飾品が光に当たって輝いておりますわね」


 確かに目の前にいるイーディオは目がチカチカする……と思って見ていると、横にいた師匠が苦笑いをしている。


「ああ、大変だねぇ。誰も抑えられなかったんだろうさ」


 どういう事だと首を傾げていると、マシアは小さな声で話す。


「……招待された他国の王子でしかない者が、陛下より目立ってどうするんだい。言葉をよく聞いてみな。褒めてるかい?」


 改めて声を聞いてみると、言葉は誉めているように聞こえても、声色が違って見える。以前マシアが言っていた。貴族の言葉は『言葉通りに取ってはならない』と。社交パーティのような場所では特にさ……と。まさか本当にこのような機会があるとは思わなかったけれど。


 イーディオたちがシーナの前を通っていく。するとアコルドがちらりとシーナを一瞥したような気がした。しかし、次の瞬間マシアの顔を見ていたため、シーナは気のせいだと結論づける。

 彼らが席に着くと同時に、パーティは始まった。



 ソラナ殿下の披露が終わると、しばしの間歓談に入る。その間に王族への挨拶が行われ、シーナもリベルトと共に王太子夫妻へと挨拶をした。

 今回シーナたちのお披露目は一旦落ち着いてから……との事で、挨拶が終わった者から食事やダンスなどを楽しんでいた。


 一方で、シーナは初っ端から疲れていた。慣れない着付けやパーティだったからだ。


 リベルトが気を利かせて、飲み物を持ってきてくれるという事だったので、シーナは気分転換にバルコニーに出て、風に当たっていた。

 

 火照った頬を冷たい風が癒してくれる。しばらく風に当たっていたシーナは、後ろから足音が聞こえる事に気がついた。リベルトだと思った彼女が、音の方へ顔を向けると……。


 ニヤニヤと笑みを湛えているイーディオがそこにいたのだった。


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