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幕間 イーディオ

「アコルド、手に入ったぞ」

「流石殿下でございます」

「ふん、俺の手にかかればこんなもの」


 イーディオ(ヴェローロ王太子)は手に持っていた封筒を机の上に投げ置いた。封筒の表に書かれていたのは、ナッツィア王国の王太子妃であるソラナの懐妊お披露目パーティである。それ以外にも色々とお披露目があるらしい。


「今回入手した情報によりますと、平民の薬師が表彰されるそうです」

「ああ、なんだったか。新薬を開発した、とか言っていたな」

「ええ、仰る通りでございます」

「ちっ……俺もあの悪女に惑わされなければ、ナッツィアではなくヴェローロで新薬が発明できていたものを……」


 悔しそうに告げるイーディオであるが、彼は知らない。

 魔力滞留症を改善するのに必要な薬草が、ナッツィアの山頂近くでしか発見されていない事に。それが発見されない限り、新薬は発明できないという事に。まあ、アコルドもその事を知らないのだが。


「そう言えば、あの悪女は家を追い出されたんだったか?」


 マグノリアが追放された後、エリュアール侯爵はイーディオの元に訪れていた。そして「すべては娘のしでかした事」と謝罪していたのである。彼はその言葉に全力で乗っかり、マグノリアに騙された、と主張していた。

 

 周囲は何も言わなかったため、イーディオは許されたと思っているが……マグノリアの言葉の裏付けをとっていない時点で、彼は為政者として上に立つべきではないと判断されている事に気がついていない。

 勿論、アコルドもその事に気づいていない時点で同類だが。


「はい。殿下を誑かしたとの事で、あの後すぐに家から追い出されたそうです」

「ふん、今回はあの女に乗ってやったが……俺を騙すなど言語道断だ」

「仰せの通りです」


 そう言ってアコルドも頭を下げる。そんな彼を見て、イーディオはふん、と鼻を鳴らした。


「まあ、あの女もいなくなった。追い出した悪女がいないとなれば、あの平民薬師も戻ってくる気にはなるだろう。そして平民女にはアコルドと婚約させる。そうすれば平民女は貴族となるのだから、その事に涙を流して喜ぶだろうな。アコルドには負担を掛けるが、俺が国王になった暁には、取り立ててやろう。まずはあの平民女との離縁を許してやる」

「ありがたきお言葉……!」


 アコルドは両手を組んで、イーディオに頭を下げた。

 最近家にいても家族との会話が少なくなっているアコルド。口煩い家族を見返してやるために、イーディオと共にいる事が多くなっていた。

 

「平民女は搾り取れるだけ、搾り取ってやろうではないか。貴族に尽くすのが平民の役割なのだからな!」


 高笑いするイーディオだったが、彼らは気がついていない。

 もう既にナッツィア王国でシーナが侯爵家の養子に入っている事。そして王太子妃であるソラナに気に入られている事。そして第二王子であるロス一行にも気に入られている事を……。


「では、このパーティで平民女に近づき、アコルドとの婚約をチラつかせる事としよう。これで俺は王太子の地位が復活し、アコルドも重鎮として立場を強固にさせてやろう。そして平民女は貴族として華々しくお披露目してやろうではないか! 良い事づくめだな!」


 アコルドも頭を上下に振る。各々が自分の輝かしい将来を夢見ているが……彼らの監視役は小さくため息をついていた。

 

 

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